名古屋市民オンブズマン・タイアップグループの活躍で,愛知県や名古屋市の行政運営が大きく変わってきました。十分とは言えないでしょうが,これまでの成果に大いに自信を持って良いと思います。
全国オンブズマンで行った情報公開ランキング調査で「情報暗黒県」「公開度ワースト1」という指摘を受けたればこそ,県や市の情報公開の開示度が急速に高まり,運用の改善が図られたことは間違いない事実です。
ところが,今年は,知事・市長の交際費で非公開部分の公開を求めた訴訟の最高裁弁論が1月28日に行われます。来たるべき最高裁の新判断は良くない内容が予想されます。この間の全国各地の住民パワーで拡大してきた,お役所の税金の使途に関する情報の公開度の高まりが,最高裁の司法判断で後退させられる危険があります。
歴史は直線的にでなく螺旋状でしか発展しないのかもしれません。
ここ数年来,全国的に盛り上がった情報公開の高まりに不安を持つ向きがこの国に存在し,それが阿吽の呼吸で最高裁に歯止めをかけさす判断を出させるのでしょう。
しかし最高裁も今年は山口長官をはじめ6名の判事が定年退官します。国民の意見を気にする小泉内閣は,昨年,女性を初めて最高裁判事に任用したり,マスコミや市民の反応をとても気にしている趣きがあります。
最高裁の頭の固いご仁たちが,首長交際費の使途の公開についておかしな判断をしたら,タイアップグループで議論をして,市民の共感を呼ぶ頭を使った批判や,裁判内容改善の取組みをしてゆきましょう。
そして,また一歩,従来より高いレベルの情報公開を実現してゆきましょう。
今年もまた,広くアンテナを張って,気楽な気持ちで,この地域の税金の使い方の監視をしてゆきましょう。
名古屋市民オンブズマン代表 弁護士 佐久間信司
名古屋市政調査会訴訟の弁護士費用を請求提訴
返金は受け取るが費用は払いたくない?市長さん踏み倒す気?
名古屋市政調査会訴訟の判決 この訴訟は名古屋市長が市議を市の諮問機関市政調査会(通称部会)の委員に委嘱し、違法な支出をしていたとして、市に返還するよう求める訴訟を名古屋市民オンブズマン・タイアップグループが起こしたもので、平成10年10月、名古屋地裁で市長以下8名に対し、約5千380万円の返還を命じる判決が下った。
市側が控訴するとともに上記金額を市に返還したため、平成11年7月の名古屋高裁で、市の損害が回復されたことを理由に請求棄却(形式上は原告敗訴)の判決があったが、「訴訟費用は、勝訴敗訴の形式にかかわらず損害が返却された経過に鑑み、第1、2審とも市側の負担」とされた。
訴訟費用の支払 第2審確定後、オンブズマン側は訴訟費用の請求手続きを行い、平成12年2月市長らから15万余円の支払いを受けた。
弁護士費用の請求と拒否 地方自治法では、住民訴訟で原告が勝訴した場合、自治体に弁護士費用を請求できると規定している。
今回の訴訟は第1審勝訴ののち、第2審の進行中に損害金の返済が行われたための形式敗訴で、第2審判決でも訴訟費用全額を市側が負担するよう命じているように、当然自治法にいう「勝訴」に該当する。
したがって平成12年2月、市側に対して弁護士費用(約920万円)の支払いを求めたが、市側は、「原告が勝訴した場合」に当たらないと支払いを拒否した。
仮に、名古屋市が原告となってこの返還訴訟を起こした場合でも、市は同様の弁護士費用を要して勝訴判決を得、5千万円余の返済を得ているハズである。
しかし、市はこの訴訟で被告人側に参加して控訴人となって敗訴し、訴訟費用や弁護士費用も公金から支出しているのである。
これで正義と言えるのか 本来、市の違法支出を市に返還させる訴訟なのに、市は違法支出側に立って公金を支出しておきながら、市に不正支出金を返還させたオンブズマン側の功績を無視して費用を自己負担させるようなことが正義・公平と言えるだろうか。
地方自治法の死文化 このような市側の言い分が認められれば、市民による住民訴訟など起こせるはずが無くなり、住民勝訴の場合には自治体に弁護士費用の負担をさせるという自治法の規定が死文化してしまう。
支払いを求めて提訴 上記のように市側が弁護士費用の支払いに応じないので、市民オンブズマンは12月25日、地方自治法に基づき同費用を支払うよう名古屋地裁に訴えを起こした。
重ねて言う 市は、市に代わって市の損害を回復しようとしたこの訴訟のおかげで、上記5千数百万円の返却金を得ておきながら、その回復をもたらした訴訟の弁護士費用を踏み倒そうとしている。
市側は「費用を支払うと不当支出になるおそれがある」という。不当支出で敗訴したものの言い分として見苦しい限りではないか。
中部経産局、万博情報公開で控訴
行政の限界に政治の決断を望む ハンセン病の轍を踏むな
110号で既報のように万博情報非公開取り消し訴訟で完膚無きまでの敗訴をした経産局が昨12月26日名古屋高裁に控訴した。「行政側敗訴は即控訴」という定石(特に当地方で得意)を、国も踏むことにしたようである。
この判決では、経産局が非公開とした万博協会の借入先金融機関名の公開については、借入金利は常識の範囲であり、また非公開を決定した時期の前後に公開された資料には、それらの金融機関名が記されていることをもって非公開には当たらないとした。
さらに、年度別運営費の収支見通しが非公開とされた点は、経産局側がこの収支見通しは今後大きく変更される可能性が高く、この段階で公開されると誤解や曲解にもとずいて違法不当な行動を取るものがマスメディア含めて出る恐れがあると主張した。
これに対して判決では、このようなマスメディアへの不信や誤報の可能性を理由に情報を不開示にすることは、結局あらゆる情報の開示を拒み、情報公開制度を否定することになりかねないと厳しく批判、十分な情報が与えられないことが誤報の原因になると指摘して、被告の主張には杞憂以上のおそれを認めがたいとしている。
特に注目すべきは判決後半で「愛知万博の開催自体やその手法,内容等を巡って賛否いろいろな考えを有する県民が存在する事実が認められ,抽象的には収支見通しに関する情報が協会に対する非難材料として用いられる可能性も否定できないが,それが当初の見通しとしての甘さを非難するものである限り,民主主義社会においては甘受されるべきであって,これに対しては協会による広報をもって対応すべきであり,かつ対応できる事柄と考えられる。」と述べていることであろう。
ここで、記憶に新しいハンセン病控訴断念問題での行政と政治の対応について考えてみたい。
違憲状態の政策の誤りを、控訴断念の決断で解決した小泉首相、在宅患者との和解を指示した坂口厚労相のリーダーシップは、行政の誤りを正すには政治家の見識と決断が要ることを示ている。
今回の情報公開訴訟は、情報公開法による国の機関を対象とした最初のケースである。そして、行政の言い分は判決でことごとく退けられた。
われわれから見れば、国は情報公開に関する限り、運用に於いても、法的判断に於いても、十年遅れている。 ここで行政の面子にとらわれることは、情報公開政策を誤まり、民主主事の根幹を揺るがすことになる。
細かな法律論に終始しがちな法廷での論争を超越して、将来に禍根を残さぬような決断を経産省のトップに望みたい。
なお、選挙裁判とともに拙速が望まれる住民訴訟での一審高速判決を受けて、高裁の訴訟指揮にも注目したい。
浅野市長の遅すぎたケジメ
浅野岐阜市長がようやく辞意を表明した。昨年1月の市長選の選挙違反で助役収入役が辞職、多くの市職員からの選挙違反の逮捕者を出しながら、見通しが立つまでと市長の椅子に止まり続けたが、これは止めたくないトップの決まり文句。市長の代わりはいくらでもいる。
2月から可能になるリコール運動の動きに耐えられなくなったのか、1月早々に辞職願いを提出したという。 リコール運動の準備をすすめている日下部市議(名古屋市民オンブズマン・タイアップグループメンバー)によれば、リコールの声を聞いてからでは格好が付かないと、急いで辞意表明をしたとか
同氏は、本当に止めるまで信用できないと、自身の事務所に「リコール運動本部」の看板を掲げ、とどめを刺すまで気を緩めないと語っている。
名古屋市、11月分タクシーチケットも破棄
名古屋市が使用済みタクシーチケットを破棄している問題で、同市は市長が「早急に調査検討するように指示した」と回答してきて以来3ヶ月経たにもかかわらず、9・10月分に続いて11月分のチケットも破棄して文書不存在のため公開できないと12月27日に回答してきた。