名古屋市民オンブズマン HP=www.ombnagoya.gr.jp 第122号 2002年12月3日
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名古屋市議費用弁償訴訟棄却判決
支給は一義的明らかに違法と
訴訟費用の被告側負担を命じる
名古屋市民ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝとﾀｲｱｯﾌﾟｸﾞﾙｰﾌﾟは、名古屋市議が登庁の度に費用弁償として日額15千円の支給を受けていることに対し、市は地方自治法の要件を満たす条例を持たずに支給していたとして、平成13年6月から同11月までに支給された4556万円の返還を求めて提訴していた。
この訴えに、名古屋地裁は11月18日請求棄却の判決を下したが、訴訟費用等は被告らの負担とした。
判決要旨以下の通り、
主 文
1.原告らの請求をいずれも棄却する。
2.訟費用及び参加に要した費用は、いずれも被告ら 及び参加人の負担とする。
争点についての判断
1.費用弁償の違法性
(1)条例の「支給額は予算の範囲内で市長が定める」は明らかに法203条5項の趣旨に反し無効。
（2）10月改正で違法性が無くなるか
10月改正は、やや異例ともいうべき経過を経ているが、行政法規の遡及適用については、それが国民に不利益ないし義務を課し、かつ公益性を欠くものでない限り、許容されると解されるから、適法。
（3）二重払いなどで「職務を行うため要する費用」を越えるか、あらかじめ費用弁償の支給事由を定め、それに該当するときは、実費額の多寡にかかわらず、標準的な実費である一定の額を支給する方法を定めることも許される。支給金額については、政令指定都市の中では最高金額であって、議会から自宅までの距離にかかわらず一律支給であるなど、改善の余地が認められないわけではないが、不当に高額とまでは言えず、市議会に与えられた裁量の範囲である。
（4）以上のとおり、本件費用弁償は、その支給時においては条例の根拠を欠き、一義的明確に違法であったというべきであるが、10月改正後条例によって、遡及的に適法となったと解するのが相当である。
2.訴訟費用等の負担について
10月改正後条例は､原告らが本件監査請求手続きを経て本訴を提起し､第２回口頭弁論期日が経過した後に､名古屋市長が市議会に改正案を提出し、可決成立したものであることなどの事情に照らすと、訴訟費用及び参加に要した費用については、被告ら及び参加人の負担とするのが相当である。
費用弁償違法支給分の返還を求めて市長・市議へ公開質問状
名古屋市議費用弁償訴訟の判決で、条例改正以前は「一義的明らかに違法」とされたことを受け、名古屋市民ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝとﾀｲｱｯﾌﾟｸﾞﾙｰﾌﾟは11月22日、条例で合法化される以前の、即ち「明らかに違法である」平成13年3月以前に支給された費用弁償の返還を市議に対して求めるよう、市長に公開質問状を提出した。
費用弁償違法支給分の返還を求めて市長・市議へ公開質問状
名古屋市議費用弁償訴訟の判決で、条例改正以前は「一義的明らかに違法」とされたことを受け、名古屋市民ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝとﾀｲｱｯﾌﾟｸﾞﾙｰﾌﾟは11月22日、条例で合法化される以前の、即ち「明らかに違法である」平成13年3月以前に支給された費用弁償の返還を市議に対して求めるよう、市長に公開質問状を提出した。
また、同時に全市議に対して、違法に支給された費用弁償を返還する意志の有無などを問うた以下のような公開質問状を提出した。いずれも、11月29日迄の回答を求めた。
市長宛「公開質問書」（要旨）
2002年11月21日
名古屋市長 松原武久様
名古屋市民オンブズマン
名古屋市民ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝﾀｲｱｯﾌﾟｸﾞﾙｰﾌﾟ
私たちは、改正前の名古屋市議会の「報酬および費用弁償等に関する条例」が地方自治法に反することを理由とし、平成13年6月から同年11月の間に市議に支給された費用弁償の支出が違法であるとして住民訴訟を提起し、去る11月18日に名古屋地裁判決言渡しで「本件費用弁償は、その支給時においては条例の根拠を欠き、一義的明確に違法であったというべきであるが、10月条例改正によって、遡及的に適法となった」と判断されました。 即ち、改正後条例が遡及しない平成13年3月以前の費用弁償はすべて違法な支給となる訳です。これら違法支出については、市としては支給を受けた議員に返還請求権行使できるはずですし、地方自治法240条2項で貴職は地方自治体の長として督促、強制執行、取立をする義務を負っておられる筈です。私たちは去る10月3日､貴職に対し公開質問書をお渡しし、未だに回答を頂いてません。10月改正後条例の遡及効が及ばない平成13年3月以前の費用弁償支給は違法であるとの裁判所の判断も出た訳ですので、前回の質問書に対し、11月29日までにご回答下さるようお願いします。
なお、貴職が返還請求をする意思がない、或いはご回答がない場合には、貴職が返還請求権の行使を違法に怠っていることを理由として、住民監査請求を検討せざるを得ませんので、その旨ご了解下さい。
市議宛「公開質問状」（要旨）
2002年11月21日
名古屋市会議員 殿
名古屋市民オンブズマン
名古屋市民ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝﾀｲｱｯﾌﾟｸﾞﾙｰﾌﾟ
（市長への同様な趣旨を述べた上で）
（前略）改正後条例が遡及しない平成13年3月以前の費用弁償は違法な公金支出だったことになります。
貴職らが受領したこの違法期間中の費用弁償金は、少なくとも司法の判断が変更するまでの間は、名古屋市に返上するのが筋ではないでしょうか。それとも貴職は、平成13年3月以前の費用弁償について、新たに住民監査請求や住民訴訟が出され、市民から返還を求める運動が生じなければ、今回の裁判所の判断に、ほおかむりをして返還されないつもりでしょうか。
そこで､私たちは貴職に対し以下のご質問をします。
① 平成１３年３月以前に支給された過去の費用弁償について、市に返還する意思及びその理由について
・ある ・ない
（理由）
② 返還される場合、何年度の支給分まで返還か
③ 返還される場合、いつまでに返還されますか。
ご回答は、１１月２９日までにお願いします。
質問状へ市長･市議の回答､地裁判示を無視返還せず
回答期限11月29日までの回答状況
市 長 費用弁償は、適法に支出してきましたので、 返還請求する予定はありません。
民主党・自民党・公明党（いずれも団長回答）
正当な支給と考える、返還の意志なし
共産党（幹事長回答）
費用弁償は、認めるとしても｢実費｣で、額は交通費が適当と思う、この点から見直しを求めている。
返還を議論する前に、費用弁償について議論することが必要。
この点について意見交換したいので、検討されたい （違法とされた既往分返還については回答なし）
斎藤亮人市議
① 1999年度分まで返還の意志あり
②現行では政務調査費と実質重複しているから
③返還時期は公選法の寄付との関係で検討中
市民ｸﾗﾌﾞ(3名連記)
現在までのところ市から返還請求はなく、正当な支 給と考えておりますので、返還予定はありません。
オンブズマンのコメント
市長と市議会各会派の責任者名による回答は、斉藤議員を除き、概ね（共産党は除く）「正当な支出なので返還請求ないし返還の必要なし」というものでした。
これは、平成14年10月改正後条例が遡及しない平成13年3月以前の支給分は違法であるとの地裁判断判断を無視し、市長や議会が費用弁償額の妥当性を再考する姿勢がないことを明らかにしたものです。
現状の日額1万5千円は高すぎ、全く市民感覚からはずれたもので、市民ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝとしては引き続き、法廷であるいは裁判所外の取組で非常識な費用弁償の是正に努めたい。
愛知県上水道談合住民訴訟和解へ
11月18日1時30分から、名古屋地裁民事9部で和解期日協議が開催され、裁判所から前回提示した和解案に沿い、次回に和解を成立させる方向となった。
受注契約金額に対し、新規工事である安城浄水場については8%、継続工事である幸田浄水場については5%、新規工事ではあるが他社は受注できない事情があったと主張されている尾張東部浄水場については7%を被告受注企業が支払うが、そのうち90％は愛知県に、10％は原告に弁護士報酬として支払う。
次回和解期日は12月13日4時30分。裁判所3階で。
和解が成立すれば全国の上下水道談合住民訴訟で初めてとなる。
弁護士費用敗訴者負担制度反対市民集会
成立すれば、ほとんどの住民訴訟は提起困難に
11月26日名古屋市女性会館ﾎｰﾙで開催、東京から駆けつけた全国市民ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝ連絡会議元代表の高橋利明弁護士、成田清名古屋弁護士会長の講演に続き、消費者、労働者、環境、医療過誤、業者等の立場から弁護士費用敗訴負担に反対するﾘﾚｰﾄｰｸが行われた。
成立すれば、ほとんどの住民訴訟は提起困難に
11月26日名古屋市女性会館ﾎｰﾙで開催、東京から駆けつけた全国市民ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝ連絡会議元代表の高橋利明弁護士、成田清名古屋弁護士会長の講演に続き、消費者、労働者、環境、医療過誤、業者等の立場から弁護士費用敗訴負担に反対するﾘﾚｰﾄｰｸが行われた。
高橋弁護士は、この制度が成立すれば、行政や大企業に対する提訴はほとんど出来なくなること。
これまで市民の常識では不可能と思われていた多くの公害、環境、医療過誤などの訴訟で、市民の正当な権利が守られてきたことが、今後はいっさい不可能になることを実例を挙げて訴えた。
名古屋市民ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝの新海弁護士は、棄却判決があったばかりの名古屋市議費用弁償訴訟を取り上げ、勝訴確実の訴訟でさえ、条例の後追い改訂で敗訴に追い込まれ、弁護士費用を払わされる可能性（今回は裁判所がわざわざ被告に訴訟費用の負担を命じたが）があると訴えた。
弁護士費用敗訴者負担では住民訴訟は起こせない！！提訴前から絶対勝訴することが見通せる事件は少なく、負ける不安のある事件は、相手側の弁護士報酬の負担を恐れて裁判に踏み切れなくなからである。
さらに、最初から勝利を見通せる事件など皆無に等しい公害防止や環境の保全を求める住民訴訟、大企業を相手の責任追及裁判や、人権裁判、労働者の権利裁判、消費者訴訟、医療過誤訴訟などにとっては、さらに重大な問題になる。
司法制度改革の理念に反する
司法改革で、訴訟を利用しやすくするために、本当に必要なことは何か？弁護士費用敗訴者負担は、司法改革の理念と目的に反する。
市民が裁判を起こしやすくするために、必要なことは、①法律扶助制度を拡充させ、多くの市民が費用の心配なく裁判を利用できるようにすること、②証拠や情報が国や行政機関、大企業などに偏在してる実体に即して、立証責任を被害者から証拠を持つ側に転換したり、証拠を裁判に提出させる手続きを充実させること、③裁判の増加に対応して、裁判所の人的・物的設備を拡充させることである。
さらに、例えばアメリカでは、国や地方自治体を相手にする公益に関する裁判では、市民が国などに勝ったときだけ、市民の弁護士報酬を相手側に負担させる制度が取られている。我が国でもこのような制度を取り入れるべきである。（日弁連資料より）
豊田市包括外部監査問題和解 10月31日