＊謹賀新年＊ ２００４年元旦

名古屋市民ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝ 代表 弁護士 佐久間信司

　新年明けましておめでとうございます｡新しい年が皆様方にますます幸多く､また市民オンブズマン活動にとっても実りのある年になることを祈念します｡
　さて､「税金の無駄遣いイベント」になることが間違いない愛知万博や中部空港の開港がとうとう来年に迫ってきました｡
　いまさら万博開催や空港開港を阻止することは現実的ではないですが､万博を中止した場合の損害に関するＢＩＥとの会議記録の情報公開を求める訴訟や､中部空港の地元負担金の問題などには引き続き関心を払って行きたいと思います｡
　万博や空港の巨大プロジェクトにより今後ますます愛知県や名古屋市の財政状態が逼迫してゆく危険性が大ですし､土地開発公社の塩漬け土地の隠れ負債問題や､議員の高額な政務調査費や費用弁償問題なども未解決のままです｡今後も税金の無駄使いの是正や情報公開の活動を強めてゆきましょう｡
　また､昨年末に岐阜地裁で徳山ダムの事業認定取消訴訟などを求めた３件の訴訟の判決言渡がありましたが､裁判所は事業認定当時の水需要予測は不合理でないとか､治水の有益性を認めたりして原告・住民側を負かせました｡しかし新規利水の必要性はなく９６０億円もの事業費が膨らむ徳山ダムの建設は巨大な無駄の上塗りでしょう｡
　愛知県名古屋市の道路公社に対する､随意契約による高額な業務発注も是正しなければなりません｡
　そして､今年も広く問題意識のアンテナを張り､新しいテーマや課題も調査研究して取り上げてゆきましょう｡

政務調査費廃止を改革の発端に
−自治体議員政務調査費の市民監査で見えてくるもの−

　地方自治体議会の会派には､議員数に応じて政務調査費（政調費）が支給される｡その金額は､愛知県議会は一議員当たり年額600万円名古屋市議会では６60万円､もちろん免税である｡
　これが地方都市ではぐっと少額になり､豊橋市議の年額８４万円は県下では高額といえ､１５万から３０万円というのが一般的｡
　この政調費は政務調査以外には使えない決まりで､年度末には各会派から収支報告が提出され､情報公開の対象となり市民の監視を受ける｡
　われわれは､昨年度県下自治体議会各会派の政調費を調査し､独自の監査結果を公表した｡その結果､政務調査とは言い難い多くの不審な使途､例えば視察名目の海外旅行など､が公表されたため､昨春の地方選には少なからぬ影響を与えたようである｡
　現在､今年度(2003年度)分について集計中であるが､相変わらず内容的には疑問点がありはするものの､前年度に比し相当の改善が見られるのも事実｡
　報告書によれば､各地で多くの会派が政調費を使い残して返却している｡この集計は近く公表の予定である｡
　このような傾向は全国的に見られ､高知県南国市や青森県三沢市では､政調費そのものを廃止した｡
　さて､問題は群を抜いて高額な政務調査費を受けている愛知県と名古屋市である｡
　前記自治体の政調費収支報告は､すべて使途を証明する領収書等の添付が義務づけられているため､市民監査出来るが､特に大口と言うべき愛知県議と名古屋市議の報告書にはなぜか添付義務が課されていない｡
　そのため､ほとんどの会派の使い切っているという収支報告を､検証する手段がないのである｡
　名古屋市民ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝでは､ﾆｭｰｽ133号(11月7日)で既報のように､昨年４月の選挙月における愛知県議の政調費使途収支報告書の公開を求めて､自主監査を行った｡結果は一部の会派を除きほとんどの会派はきれいに使い切ったという報告である｡
　使途は会議費､調査旅費など様々であるが､あの選挙運動で超多忙の１ヶ月､候補者達はどのようにして政務調査活動を行ったのであろうか｡
　本件は例によって監査委員による却下を経て､現在政調費返還訴訟中｡各会派には内容を明確にした帳簿と共に証票類が保管されている(県規程第8条)ので､これらが法廷で明らかにされるハズである｡

改革は地方から始まっている！ 各地ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝﾎｰﾑﾍﾟｰｼﾞから
都道府県･政令市の政務調査費は？

　大阪府知事選や栃木知事選で明らかなように､地方選挙では総与党態勢の崩壊が始まっている｡政権交代を叫ぶ党がなぜ相乗り出来るのかどうしても理解出来ない｡いまや､党派のﾈｼﾞﾚ現象は各地で疲労破壊を起こし､選挙の形態は大きく変わってきた｡
　さて､地方議員の政務調査費使途ﾁｪｯｸは全国的な運動となって､地方政治の改革を呼び起こそうとしている｡都道府県政令市でも政務調査費の証票開示を義務づけることが出来れば､流れは地方議会に決定的な変革をもたらすだろう｡

品川区発 　品川区民ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝのﾎｰﾑﾍﾟｰｼﾞより　2004年1月11日
東京都品川区で政務調査費に領収書添付義務づけ

　品川区では政務調査費を一議員当たり19万円が所属議員数に乗じて支給される｡
　品川区民ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝの会では､各会派の使途実体を調査､HPで公表した｡詳しくはhttp://www1.odn.ne.jp/~ccn86040/jimin.htmをご覧下さい｡
　ｷｬﾊﾞﾚｰ､ｸﾗﾌﾞ､ﾊﾟﾌﾞ､ｶﾗｵｹﾊﾞｰ､ｽﾅｯｸ､しゃぶしゃぶ､鮨屋､うなぎや､などなどの飲食費｡これが政務調査費の「研究費」？これは？と自民党の１年間の政務調査費（2001年4月から翌年3月）について監査請求した｡
　区の監査委員は「違法､不当というのは請求人の主観を述べたものにすぎないといわざるおえない」と請求を却下｡何を監査したのか｡どこの監査委員もおなじ？
　議員は政務調査費とは別に議員歳費（一人月額62万6千円）を支給され日常的な飲食費はこれでまかなえる｡ｽﾅｯｸ､ﾊﾞｰ､ｷｬﾊﾞﾚｰなどに政務調査費を使うのは言語道断､使った飲食費返せと提訴｡

品川区民ｵﾝ　ﾌﾞｽﾞﾏﾝﾎｰﾑ　ﾍﾟｰｼﾞ
http://www1. odn.ne.jp/~cc n86040/?0111 1229
　より集計し　　たもの

品川区議員　平成１３年度政務調査費支出総額と飲食費
品川区民ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝﾎｰﾑﾍﾟｰｼﾞ　http://www1.odn.a.jp/~ccn86040/?01111229 より

区長の選挙運動ではないか？　-これも品川区-
　特定政党議員に区長交際費を支出

　特定政党､議員に支出される区長交際費は地方自治法に違反するとして2003年4月､地裁に提訴し裁判進行中｡議員の報告会や､後援会の政治活動になぜ区長が交際費を出すのか｡
　西東京市では監査委員会が「政党への交際費は不当」として市長に損害補てんの勧告が出されている｡

仙台発　高検の情報公開地裁判決
不正流用を認定・原告実質勝
http://homepage3.nifty.com/s-ombuds/al.html
12月1日､仙台高検検事長の平成10年度調査活動費文書不開示処分取消訴訟の判決が言い渡された｡調活費の不正流用は証拠不十分として棄却されたが､田村幸一裁判長は､仙台高検で調活費の不正流用があったことを認める画期的な判断を示した｡判決は､元高検事務官��橋徳広証人の証言を全面採用し､��橋証人が領収書の偽造にかかわっていた昭和58から平成5年まで､仙台高検で調活費が不正流用されていたと認めた｡法務省･検察庁の幹部が全面否定していた不正流用を､裁判所が認めた意義は大きく､原告の「実質的勝訴」といえる内容｡ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝは､会計検査院への検査要求や国会での追及の働きかけを通して､不正流用の実態解明を続けていく｡裁判所は､平成10年度分についても､原告の主張をほぼ認め､「不正流用の疑いは濃厚」としたが､証拠不十分で､高検の不開示処分は裁量権の逸脱･濫用にあたらず､適法とした｡ｵﾝﾌﾞｽﾞﾏﾝは､裁量権の逸脱･濫用の立証責任を原告に求めていることや｢情報の一本化｣論によって部分開示を認めない判決を容認できないので､控訴審で争っていく（12月10日控訴）

どうなって行く？ 半田市公文書改竄行使

　オンブズ知多半島が告発､提訴までしている半田市の公文書改竄行使問題で､同市は改竄文書を公開した環境センター所長を文書訓告､監督責任者の市民経済部長を口頭注意の処分にした｡
　半田市は紛糾するこの問題を、担当者の処分というトカゲのしっぽ切りで切り抜けようと､地方公務員法による分限懲戒処分にするため､懲戒審査委員会に諮問した｡ところが､委員会からは懲戒処分にあたらないとの回答が出てしまったため､形だけの処分でお茶を濁したもの｡
　処分理由は「私的な個人ファイルを公文書として公開した」というが､その文書は半田市が公文書であると認めて公開したものである｡
　また､文書の実体も個人メモ程度のものではない､十数頁にわたる会議録であるし､公開請求書には､決裁に際し担当者・主査・課長の押印に加えて､市民経済部長・環境センター所長の合議印まで押してある｡
　改竄行使のすり替えるために、これを私文書というのも無理な話で､いずれ法廷で「公文書」と結論が出された場合､市はどう対処するつもりなのか｡

まだまだまだの公開公文書の認識　三重県芸濃町での話ではあるが

　報道によれば､同町では公開請求にあたり原本の一部を削除､新たに作り直して公開したという｡
　議会での追求に､町は「メモ書きで汚れていたので作り直した」といっているという｡
｢原本を見せる｣からこそ情報公開の意味　どうにも見せたくない文書でもそのまま見せなさいというのが本来｡隠したいところは理由を説明して部分公開にし､異議申し立てを認めるのが原則である｡
　勝手な理由で作り直されるのでは､しかも､当事者が「親切で､或いは好意やった」程度の認識で無邪気に別の文書を出してくるようでは・・・情報公開道遠し｡
　これは半田市でもおなじ認識なのです｡