'99愛知県知事候補者へのお問い合わせ


愛知県知事選候補者 各位 殿

名古屋市民オンブズマン

代表 佐久間信司

名古屋市民オンブズマンタイアップグループ

 私たち名古屋市民オンブズマンとタイアップグループは情報公開請求活動を中心に,さまざまな活動をして参りました。
 その中でも特に,これまでの愛知県政の重大な問題として意識しておりますのは,愛知県の情報公開の低さです。私たち市民オンブズマングループの連合組織の全国市民オンブズマン連絡会議が,私たちをはじめとする全国の市民オンブズマングループと共同で行った都道府県の情報公開度ランキング調査で,昨年,愛知県は全国最下位になってしまいました。また,情報公開の裁判で他県が下級審判断に従い,情報公開制度の運用を次々と改善する中で,愛知県は敗訴した情報公開訴訟すべてに上訴していることも,愛知県の情報公開に対する消極的な姿勢を示すものと思います。今度の知事さんには,ぜひとも情報公開を積極的に推進していただきたいと思っています。
 また,住民監査請求に対して却下または棄却された公費支出が,地方裁判所で次々と違法続きと判断されることなどからみても,愛知県の監査制度も重大な問題があるのではないかと思います。さらに,「愛知方式」とまで言われた,住民訴訟第一審で敗訴すると金を返して控訴し,形だけの勝訴判決を得る,など,愛知県の姿勢は私たちからみて,公費支出の適切化という課題に極めて消極的だ,と思わざるを得ません。
 このような関心のもと,本アンケートを作成致しました。ぜひご意見をお聞かせいただきたく,お願い致します。
 ご多忙中恐縮ですが,ご回答は2月2日までに,質問書本文に直接ご記入の上,下記連絡先にFAXにてご回答いただきたく,お願い致します。
 また,本アンケートの実施ならびに結果については,マスコミに発表させていただくほか,私たちのインターネットのホームページでも公開させていただきますので,その旨ご了解下さい。

【質問1】全国市民オンブズマン連絡会議の昨年の調査(食糧費,旅費,交際費を対象としたもの)で愛知県が情報公開度が全国最下位であることの原因はどこにあると思いますか。あてはまると思うものすべてに○を付してお答え下さい。
・ 知事が情報公開に消極的だったから。
・ 職員に情報公開に対する意識が欠けていたから。
・ 万博を実施するためには,情報を公開するとやりにくくなるから。
・ 空港を建設するためには,情報を公開するとやりにくくなるから。
・ 条例の規定そのものが不十分だから。
・ 市民オンブズマンの調査項目に偏りがあったから。
・ その他お考えになっている理由があれば,下記にお書き下さい。

【質問2】今年も情報公開度ランキングの調査をしますが,最下位脱出のために必要とお考えのものすべてに○を付してお答え下さい。
・ 懇談会出席者については,懇談の相手方も含めすべて公開する。
・ 出張に関する情報については,公務員の名前はすべて公開する。
・ 交際費については,交際の相手方の個人名も含め,原則すべて公開する。
・ コピー代については,現行の30円を(      )円に値下げする。
・ 入札結果調書については,過去の入札も含め,すべて予定価格を公開する。
・ その他,お考えの事項がありましたら,下記にお書き下さい。

【質問3】愛知県では住民訴訟の下級審で敗訴すると,金を返して上訴する,という手法をとってきました。この対応についてのお考えを,あてはまるものすべてに○を付してお答え下さい。
・ 格別改める必要はないし,自分が知事になってもこの方法に従いたい。
・ 格別改める必要はないと思うが,自分が知事になったらこの方法はとらない。
・ 上訴するのであれば,金は返さず,上級審の判断を仰ぐべきだ。
・ 住民訴訟の下級審で敗訴した場合には,上訴せず,返還などの方策をとるべきだ。
・ 現在,金を返して上訴しているものがあれば,上訴の取り下げを検討したい。
・ その他,お考えがありましたら,下記にお書き下さい。

【質問4】私たちは,愛知県知事を相手取って万博誘致対策室の懇談会の相手方を含む出席者等の公開を求める一部非公開処分取消の裁判を起こしています。もし,この裁判の第一審判決が懇談の相手方を公開するよう命じた場合には,どのように対処しますか。あてはまるものすべてに○を付してお答え下さい。
・ 最高裁の判決が出るまでは裁判所の判断が確定した,ということにはならないから,当然控訴する。
・ 懇談の相手方を公開することが判例や実務の流れだから,一審判決に従う。
・ 公開しなければならない文書をみて,控訴するかどうかを決める。
・ 知事になった時点で懇談の相手方を公開し,訴訟を終わらせることを検討する。
・ 控訴した上で,控訴審判決に従う。
・ 懇談の相手方の公開に関しては,原則として最高裁まで争いたい。
・ わからない。
・ その他,お考えの事項がありましたら,下記にお書き下さい。

【質問5】議会や警察を公文書公開条例の実施機関とする,あるいは条例に知る権利を盛り込む,などの条例改正作業が宮城県など複数の都道府県で行われています。これらのような条例の改正についてどのようにお考えですか。あてはまるものすべてに○を付してお答え下さい。
・ 議会を条例の実施機関とする条例改正作業を推進し,(    )年を目処に改正を実現したい。
・ 県警を条例の実施機関とする条例改正作業を推進し,(    )年を目処に改正を実現したい。
・ 公文書公開条例に知る権利を盛り込む条例改正作業を推進し,(    )年を目処に改正を実現したい。
・ 公文書公開条例の対象に電子情報を加える条例改正作業を推進し,(    )年を目処に改正を実現したい。
・ 公文書公開条例の対象に外郭団体や第三セクターを加える条例改正作業を推進し,(    )年を目処に改正を実現したい。
・ 非公開事由を個人情報保護型からプライバシー保護型にする条例改正作業を推進し,(    )年を目処に改正を実現したい。
・ 公文書公開審査会の組織等の改善をすすめ,(      )年を目処に迅速な決定を実現できる体制つくりをしたい。
                    ・ 閲覧手数料を徴収する運用や条例改正は絶対に行わない。
・ 現在検討中であるが,具体的に答えられない。
・ その他お考えの政策等ございましたら,下記にお書き下さい。
  (         )年までに次の政策を実現したい。

【質問6】監査制度についておたずねします。監査委員の選任や監査の方法について,監査制度が本来の機能を発揮し得るような改革案をお考えでしょうか。お考えがあれば下記にお書き下さい。

【質問7】最後におたずねします。あなたが愛知県知事に当選した場合,何期までおつづけになるお考えをお持ちですか。
・ 原則として二期までと考えている。
・ 当選する限り,いつまでも続けたい。
・ 多選について格別考えていることはない。
・ その他お考えがあれば,下記にお書き下さい。

お名前をお書き下さい。
(                 )

ご協力ありがとうございました。




愛知県知事候補者アンケートについてのコメント

名古屋市民オンブズマン

名古屋市民オンブズマンタイアップグループ

 名古屋市民オンブズマンとタイアップグループが,愛知県知事候補者の影山氏,神田氏両名に対して行ったアンケートの結果について,下記の通り報告します。
1,概要
 アンケートは1月27日,両陣営が選挙管理委員会に届け出ている事務所宛に架電し,アンケートの趣旨を説明した上,指定されたファックスナンバーにファクス送信する,という方法で実施した。
 影山陣営からは2月1日,ファクスによる回答があり,回答期限の2月2日には郵送による回答が到達した。一方,神田陣営からは回答期限の2月2日に至っても何らの連絡がなく,同日,二度に渡って回答の督促をしたところ,2月3日まで回答を待って欲しい,という要請があり,2月3日夕方,ファクスによる回答があった。回答者の氏名欄の記載は影山陣営は「影山健」と候補者の個人名が書かれていた一方,神田陣営は「新世紀を創造する愛知県民の会」名の記載であった。まずはご多忙中,誠実に回答していただいた両候補にお礼を申し上げるたい。ただ,両陣営の回答日,回答までの経過等を見る限り,市民運動に対しては相当の体温差があるように思える。
2,アンケートに対する回答
(1) アンケート内容は,私たち名古屋市民オンブズマンとタイアップグループが特に関心をもっている情報公開,監査,訴訟への対応,多選についてのものに限定した。
 これらについて,両者の回答結果は対照的であった。
 影山氏の回答は,いずれの項目についても具体的と言える。その一方,神田氏(陣営)の回答は,監査制度について,新監査委員の選任と外部監査制度の導入を回答した外は,いずれの項目について抽象的で,具体的政策をなんら回答していただけなかったと言わざるを得ない。
(2) アンケート結果についてのコメント
a.情報公開条例の運用・改正に関する回答
(質問1)情報公開度が全国オンブズマン調査で全国最下位であることの原因
     影 山 氏  :知事・万博・空港・条例
     神田氏(陣営):詳しく知らないので具体的に答えられない。
 影山氏の回答は,市民オンブズマンの見解に近いと言って良い。神田氏(陣営)の回答は,新聞報道やこれまで自治体の首長であった経緯に鑑みると,首をひねらざるを得ない。本当に調査の内容や結果を知らないのであろうか。
(質問2)最下位脱出への方策
     影 山 氏  :方策すべてについて○を回答。コピー代は10円,非営利的なものは無料とすることなどを検討したい。
     神田氏(陣営):開かれた県政を進めていくため一層の情報公開が(ママ)進めていきたいとおもっています。
影山氏は模範解答と評価できる。一方,神田氏(陣営)の回答は抽象的で無内容,実質的に無回答,とすら評価できる。現愛知県知事宛の質問でももう少し具体的な回答を期待できる,のではないだろうか。
(質問5)条例改正の考え
     影 山 氏  :(1)〜(7)すべてについてできるだけ早く目処をたてたい,閲覧手数料は絶対徴収しない。
     神田氏(陣営):制定から13年が経過しており,社会情勢の変化に対応するため,条例の見直しを行いたいと思っておりますが,具体的な内容については,今後検討していきたい。
影山氏は模範解答と評価できるが,神田氏(陣営)は具体的政策なし,との意外なほど無内容な回答であった。
b.訴訟に対する対応
(質問3)金を返して控訴,という姿勢について
     影 山 氏  :上訴せずに返還,現在金を返して上訴しているものについては取り下げを検討したい。
     神田氏(陣営):住民訴訟の被告個人の問題なので,各訴訟の中で対応。
影山氏はここでも模範解答と評価できるが,神田氏(陣営)は具体的に回答していない。まるで現在の愛知県知事の回答のようである。
(質問4)万博の懇談会の情報公開請求訴訟への対応
     影 山 氏  :一審判決に従う,知事になった段階で情報を公開し,訴訟を終わらせることを検討する。
     神田氏(陣営):判決理由を検討して対応を考えたい。
影山氏の回答は氏の政策から当然であろう。注目される神田氏(陣営)の回答は知事の敗訴コメントのようなものであった。
c.監査制度について
     影 山 氏  :当選後1〜2年以内に,市民がチェックできる体制を強める。人選,選出方法など,今後具体的にします。
     神田氏(陣営):今年中に委員の人選をする,監査結果に的確に対応する,外部監査制度を導入。
これについては神田氏(陣営)が外部監査制度の導入を公約としている。それ以外については,影山氏が市民の視点を強調することに対して,神田氏(陣営)一般論に終始した回答態度とも評価できる。
d.多選について
     影 山 氏  :二期まで。
     神田氏(陣営):現時点では考えていない。
3全体を通してのコメント
 影山氏の課題は,政策の実現につきる。
 一方,神田氏(陣営)の回答は,まるで愛知県知事宛の質問書の回答のようで,無難かつ無内容ある。特に問題は,情報公開条例の改正について具体的政策をもたない,という点である。原因は,回答者欄に署名をした「新世紀を創造する愛知県民の会」の皆さんが情報公開に関心がまったくないか,あるいは相乗り候補であることに気を遣って具体的な政策を言うに言えないか,または情報公開について神田氏自身が消極的な姿勢をもっているか,様々であろうが,情報公開の重要性がこれほど意識されている1999年2月の段階で,これから知事になろうとする人がこの程度の回答しかできない,ということに,驚きを隠せない。
 もちろん,このアンケートは情報公開や監査制度など,市民オンブズマンが関心をもって取り組んできた県政のごく一部に関するものであり,候補者の資質の判断をすることを目的としたものではない。また,市民オンブズマンはどちらの候補者の支援もしない,という立場の者である。しかしその立場からみても,このアンケート結果を見る限り,神田氏(陣営)の回答は全くの落第と言わざるを得ない。知事に当選しようとしまいと,一県民として,今後情報公開について猛勉強をお願いしたい。

以上




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