「愛知県情報公開制度改正に対する声明」

1999.05.24 名古屋市民オンブズマン




 5月24日,愛知県は情報公開条例の改正を発表しました。これを受け,名古屋市民オンブズマンは,下記の声明を発表しました。声明に詳しく述べたように,コピー代を従来の1枚30円から10円に値下げすることや,懇親会などの相手方を公表することにしたなど,一定の評価ができる部分を持ちながらも,過去には遡らないという弱点を持っていて,我々としては手放しで喜ぶわけにはいきません。
 さらに問題なのは,改正のための審議の過程が一切明らかにされなかったことです。愛知県の県民課情報グループが発表した「愛知県公文書条例の一部改正について」という文章には,このほど制定された国の情報公開法との対比のみが,改正点に注記されています。情報公開条例を改正するときに,県民の方を向かないで,国の意向だけを考えていたと思いたくはありませんが,もしそうだとすれば,県職員の意識自体が問題なのではないでしょうか。
 一方,名古屋市でも現在条例改正を検討中ですが,その 審議会の要旨が名古屋市のホームページに掲載されています。審議の過程を公開するものとして,大いに評価できるものです。私たちもホームページ上で意見を述べていこうと思います。また,一般市民の方々も,ぜひ,意見を寄せていただきたいと思います。




声   明


 全国市民オンブズマン連絡会議の情報公開度ランキングで過去二回にわたり全国最下位だった愛知県が,今回,情報公開制度の見直しとして,情報公開請求のコピー代を10円に値下げすること,請求者を限定しないこと,首長交際費の相手方を原則公開すること,懇談会の出席者名や出張者名を原則公開すると発表したことについては,率直に歓迎したい。
 しかし,せっかく全面公開の方針を発表しながら,過去にさかのぼった運用をしないことには大いに疑問がある。懇談会や出張者名の公開はすでに完全に判例として定着している。少なくとも懇談会や出張者の氏名の公開については,過去にさかのぼった公開を実施して貰いたい。
 また,今回の発表に至るまで,愛知県が条例見直しの争点や経過を公表してこなかった,という姿勢も問題である。情報公開は市民,県民のためのものである。その見直しについては,広く市民の意見を求めていくことこそが重要ではないか。現に名古屋市は今年5月17日から公文書公開審査会の見直し審議の概要をインターネットで公開し始めている。愛知県も今後条例見直しの議論を継続すると思われるが,その過程の情報を今後は公開していただきたい。
 今回の見直しで,愛知県の情報公開度は,昨年のランキング基準をもとにする限り,相当程度の上昇が期待できる。しかし今や,懇談会情報であれば出席者名簿が作成されているか,出張情報であれば,復命書には出張の内容や結果が要領よく記載されているか,ということなど,情報公開制度の充実度は情報の質,すなわち,公開された情報に何が含まれているか,という点が問題とされる段階にある。ところが残念ながら,現状の愛知県が公開する公文書に記載されている情報の内容は貧弱で,愛知県の情報公開度は宮城県などの情報公開先進県とは未だに隔たりがある。今後早急に,愛知県庁を挙げて公開される情報の質の議論を求めたい。
 さらに,請求者の範囲を広げるという先進的な改善を発表されたのであれば,ぜひ開示対象機関も広げることを検討することを求めたい。第三回ランキング調査の結びで私たちは「愛知県が奮起して開示度を上げれば,わが国の状況も大きく変わることでしょう。」と述べた。愛知県がどの程度情報公開に前向きか,全国が注目している。だからこそ私たちは愛知県に,今度は議会と公安委員会や外郭団体,第三セクターを情報公開対象機関とする改正を求めたい。
 最後に,この場を借りて,「愛知県がコピー代を10円にする日まで,コピー代のカンパを」という私たちのお願いに対して,カンパをして下さった多くの皆様方にお礼を申し上げます。

1999年5月24日

名古屋市民オンブズマン

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