「愛知県内情報公開度ランキング」調査結果

1998.03.28 名古屋市民オンブズマン

豊橋の情報公開をすすめる会

愛知県消費者団体連絡会




1.はじめに

 97年10月27日,全国市民オンブズマン連絡会議は47都道府県と政令市及びいくつかの中核都市で,第二回の情報公開度ランキングの調査のための情報公開請求を実施しました。私達はこれとあわせ,愛知県内で情報公開条例を施行している自治体の情報公開度も調査し,身近な市町村の情報公開の実情を知ることが愛知県全体の情報公開度を高めることにつながると考え,調査をしました。
 公開請求は昨年11月から12月にかけて,名古屋市民オンブズマン,豊橋の情報公開をすすめる会,愛知県消費者団体連合会が協力してそれぞれの市町村に居住するメンバーや友人に呼びかけて実施し,開示された資料にもとづいて名古屋市民オンブズマンが全国ランキングと同様の基準で採点しました。

2.調査対象,調査項目,採点基準

 愛知県内には,調査時点で情報公開条例を制定している市町村が19,施行している市町村が18ありますが,今回の調査は公開請求人を見いだすことのできた14自治体についてのみ実施しました。
 公開請求対象は全国市民オンブズマン連絡会議の調査と同様,97年6月から8月までに実施された懇談会,県外出張,首長交際費の支出についての文書としましたが,いくつかの自治体からは懇談会を実施していないので文書がない,或いは県外出張がない,という回答があったため,14自治体すべてに資料をそろえることができませんでした。そこで今回は交際費文書についてのみ,開示度を全国オンブズマンによる調査と同一の基準で調査したほか,議会が情報公開条例の実施期間となっているか,条例の施行日時はいつかについても調査しました。後に述べるように,結果的にそれぞれの首長さんの情報公開や税の使途についての考え方やキャラクターが良くわかるものとなりました。採点基準は下記のとおりで,基本的には全国ランキングと同一です。

採点基準

[交際費関係](38点)

1.支出年月日(2点)
○  公開・・・・・・・・・・・・・・・・2点
× 非公開・・・・・・・・・・・・・・・・0点
2.支出金額(3点)
○  公開・・・・・・・・・・・・・・・・3点
× 非公開・・・・・・・・・・・・・・・・0点
3.支出の性格(3点)
○  公開・・・・・・・・・・・・・・・・3点
× 非公開・・・・・・・・・・・・・・・・0点
4.交際相手の情報(30点)
☆ 相手方の個人名まで全面公開・・・・・・・・30点
◎ 非個人の公開+個人名のほとんどが公開・・・20点
○ 非個人の公開+個人名の一部の公開・・・・・15点
△ 非個人の公開+個人名の非公開・・・・・・・10点
▲ 非個人の一部の公開・・・・・・・・・・・・5点
× 全面非公開・・・・・・・・・・・・・・・・0点

[制度運用=コピー代+請求から開示までの日数(50点/3)]

 得点比率を全国オンブズマンのランキングと合わせるために,コピー代ポイント=(40点ーコピー代金(円))と,請求から開示までの日数までのポイント(30日以内=10,31日〜49日=5,50日以上=0)の合算ポイントを3で割った数字とした。

3.公開度調査結果についてのコメント

(1)交際の相手方の情報については,都道府県と比べてはるかに公開度が高いことがわかりました。交際の相手方が個人であっても開示する自治体が半数近くありますし,交際の相手方が非個人であれば,7割以上の自治体が全てを開示しています。特に高浜市では,見舞い・餞別についても相手方を公開するなど,都道府県レベルでは例の無かった満点を出したことを誇ってよいでしょう(ただし,公開請求の対象とされた期間外の支出に関する部分をわざわざ黒塗りにするのは,無意味ですし,労力の無駄ですので,直ちに改めるようお願いします)。
 しかも高浜市の公文書公開条例の内容は,全国ランキングで最下位とされた愛知県の条例とほとんど同じで,特に非公開とすることのできる情報についての規定は,「県」を「市」と変えただけで全く同一です。同じ条例でも自治体の運用如何で公開度に著しい差があらわれるのです。このことは,宮城県と愛知県の条例の文言が同一であるにもかかわらず,片や実質的な情報の開示度は全国1,片や最下位であることでも明らかになりましたが,愛知県内の市町村で比較しても同一の結果となったのです。同一の条例を持ちながら公開される情報に雲泥の差がある,という状況は,法の下の平等にも反するように思えます。
 交際費の支出についても,公費を使った交際である以上,高浜市のように相手方も全て開示すべきことは当然だと考えます。
 さらに,県内では最も規模の大きな自治体であるにもかかわらず,名古屋市と豊橋市が交際の相手方を一切公開しないということも不可思議です。これに愛知県を加えると,同一の情報であるにもかかわらず,自治体の規模が大きくなるほど情報を非公開としたがる傾向が愛知県ではあるようです。しかし,本来,行政の仕事が多くなればなるほど市民に情報を公開しなければならない筈です。大都市の奢りでしょうか。官僚制の悪しき見本というべきでしょうか。
(2)閲覧手数料を徴収する自治体はありませんでしたが,コピー代の異常に高い自治体(1枚50円:半田市)がありました。まさかコピー代で儲けようというのでもないでしょう。自治体の有する情報は市民の共有物であるはずです。情報公開の必要性が共通の認識となっているこの時勢に,このような高額なコピー代を徴収する半田市長の姿勢には,民主主義に対する認識の鈍さを感じます。公益目的については無料とするか,少なくとも,早急に実費程度としてもらいたいものです。
(3)愛知県や名古屋市では議会は情報公開条例の実施機関とされていません。しかし,住民の代表が送られている議会こそ情報公開の対象とすべきです。そこで今回は,議会が情報公開の実施機関とされているか否かも調査しました。その結果,情報公開条例が制定された県内の19自治体のうち,16の自治体で議会が実施機関とされていました。
 名古屋市長は選挙の際,議会を実施機関とすることを検討する,と名古屋市民オンブズマンのアンケートにこたえました。しかし,未だ議会を実施機関としていません。同様に実施機関としていない西尾市,美浜町及び愛知県の条例も,もはや時代遅れと言わざるを得ません。議会を実施機関とする条例の改正をしようとしないそれぞれの自治体の議員さんは,よっぽど市民に見られて困ることがあるのでしょうか。

4.交際費の使途についてのコメント

 次に,今回の調査の結果明らかになった交際費の使途について気づいた点を報告します。公開度が高いのは良いのですが,交際費の使途については大きな疑問があります。
 本来交際費とは,「対外的に活動する長その他の執行機関が,その執行のために必要な外部との交際上要する経費」(宮元義雄「官官接待と監査」学陽書房30頁)と言われています。あくまでも執行機関が業務を執行するために必要な外部に対する経費なのです。しかも自治体の交際費の財源は税金です。ですから,原則としてその使途は公開されるとともに,納税者のために公平に使われなければなりません。
 ところが,今回情報を開示した自治体には,次のように,納税者の感覚から見て明らかに首を傾げたくなるような支出が多く見られました。

(1)対内的?交際費
 職員の親族の死去に際し,交際費から慶弔金を支出している例がありました。
東海市(5000円),半田市(10000円),岩倉市(5000円),知立市(5000円)
西尾市(5000円〜),小牧市(5000円),師勝町(金額不明),稲沢市(3000円)
 半田市などは内規を設けて,職員の親族の死去に際しては必ず市長が香典を支出するようです。しかし,交際費は本来,対外的な業務執行のための経費のはずです。首長のポケットマネーではないのです。職員の慶弔費的なものは福利厚生費などで予算化したものによって支払うべきであり,交際費から支出することは,交際費の目的からはずれるのではないか,という疑問があります。

(2)政党への祝儀,パーティー券購入など
 豊明市,西尾市,小牧市では自民党セミナー会費や議員公演会費,選挙区の政治セミナーに交際費を支出していました。しかし,市民から集めた税金である交際費を,特定の政党や政治団体に支出して良いのでしょうか。特定の政党に税金で肩入れすることになり,民主主義を歪曲してしまうのではないか,憲法89条に違反した支出ではないか,という疑いが濃厚です。

(3)「おごる中央おもねる地方」〜税務署,法務局幹部職員への異動餞別
 高浜市では,刈谷税務署や名古屋法務局岡崎支所の幹部職員の異動に際し,餞別を交際費で支出していました。刈谷税務署は刈谷にあり,法務局の岡崎支所は岡崎にあります。高浜市は管轄の一つにすぎません。それにもかかわらず,餞別を支払っているのです。高浜市だけが交際費を支出しているとも思えません。一体国の役所の幹部は異動の度にどのくらいの市町村から交際費による餞別を受け取っているのでしょうか。官官接待が問題となって以降,3年も経過するのに,こういう草の根の「おごる中央おもねる地方」の意識が中央官僚の腐敗を次々と生み出しているのではないでしょうか。地方でどこから幾ら餞別をもらったか。国の役人自身が率先して受領した餞別の額を明らかにすることが唯一の信頼回復の手段ではないでしょうか。

(4)公選法の脱法行為では?
 どこの自治体でも目立つのは,香典,供花料への支出です。中には交際費の半分近くを職員への香典,供花料に遣っている自治体もあります。しかし一方,首長は選挙によって選ばれる公職者ですから,祝金や香典等を選挙民に送ることは公職選挙法で禁止されているはずです。そうすると,市政や町政,県政に特に貢献した人に対する支出はおくとしても,少なくとも単に自分の後援者や支持を依頼したい選挙民に対して香典を支出する場合には,ポケットマネーで支払うことが違法とされるのに,税金で支払うと違法とされない,という奇妙なことになります。
 かかる脱法行為紛いの支出には釈然としません。誰に対する香典の支出が正当か,についてはやはり納税者に相手方の氏名を公開することが必要ではないでしょうか。

5.まとめ

 そもそも,交際費の使途についての疑問が出てくるのは,交際の内容が公開されたからこそです。これらの疑問,批判に真面目に答え,正すべき点を正してゆくというのが民主主義本来のあり方です。情報公開のないところに真の民主主義はありません。
 交際費の使途の公開すらしていない自治体については,さらに不明確な支出が行われている疑いがあります。私達が本文で指摘した自治体以上に問題なのは,愛知県,名古屋市をはじめとする,公開度の低い自治体の姿勢です。
 情報を隠して批判をかわそうなどという手段は,市民に対する姑息な裏切り行為であって,市民の信頼を失うだけであるということを肝に銘じ,情報公開制度の改善に奮起することを強く望むものです。特に情報公開度が全国最下位の愛知県に対しては一刻も早く,懇談会の出席者の氏名の開示に踏み切るよう,求めます。

以 上


本件についてのお問い合わせ先:

名古屋市中区丸の内三丁目六番41号 リブビル6階
リブレ法律事務所 弁護士新海聡 電話052-953-7800,FAX052-953-7884 







愛知県内各都市首長交際費の公開状況(1997年6・7・8月支出分に関して)1998.3.28

順位 愛知県都市名 交際費 開示度 コピー代 開示日数 制度運用 ポイント 得点 備考
交際費・支出年月日 (2点) 交際費・支出金額 (3点) 交際費・支出の性格 (3点) 交際費・交際相手の情報 (30点) 合計満点=38P コピー代1枚あたり コピー代ポイント(40p) 公開までの日時 公開日数ポイント 制度運用ポイント(コピー代・日数の3分の1) 合計ポイント(満点54.7) 100点換算 実施機関に議会を含む 条例施行年月日
1 高浜市 2 3 3 30 38 20 20 11 10 10.0 48.0 87.8 * 1992年4月1日
2 東海市 2 3 3  ◎ 20 28 20 20 15 10 10.0 38.0 69.5 * 1995年4月1日
2 西尾市 2 3 3  ◎ 20 28 20 20 7 10 10.0 38.0 69.5 含まず 1988年10月1日
4 小牧市 2 3 3  ○ 15 23 10 30 15 10 13.3 36.3 66.4 * 1991年4月1日
5 知立市 2 3 3  ◎ 20 28 30 10 13 10 6.7 34.7 63.4 * 1989年4月1日
6 豊川市 2 3 3  ○ 15 23 20 20 14 10 10.0 33.0 60.3 * 1993年4月1日
7 岩倉市 2 3 3 10 18 10 30 10 10 13.3 31.3 57.3 * 1989年4月1日
8 師勝町 2 3 3 10 18 20 20 12 10 10.0 28.0 51.2 * 1990年4月1日
9 東浦町 2 3 3 10 18 30 10 10 10 6.7 24.7 45.1 * 1987年10月1日
9 稲沢市 2 3 3 10 18 30 10 4 10 6.7 24.7 45.1 * 1984年4月1日
11 豊橋市 2 3 3 × 0 8 20 20 23 10 10.0 18.0 32.9 * 1996年8月1日
12 豊明市 2 3 3 5 13 40 0 23 10 3.3 16.3 29.9 * 1988年10月1日
13 半田市 2 3 3 5 13 50 -10 15 10 0.0 13.0 23.8 * 1986年4月1日
13 名古屋市 2 3 3 × 0 8 30 10 49 5 5.0 13.0 23.8 含まず 1986年10月1日
平均点 20 28.4 51.8 愛知県内14市町平均
沖縄 2 3 3 20 28 20 20 17 10 10.0 38.0 69.5
熊本 2 3 3 5 13 30 10 22 10 6.7 19.7 36.0
愛知県 × 0 × 0 × 0 × 0 0 30 10 46 5 5.0 5.0 9.1

*公開内容に関しては,全国ランキングの採点に従った。
*制度運用(コピー代・開示日数)に関しては,全国ランキング採点の3分の1に配点した。
*合計ポイントは開示度+制度運用ポイント(コピー代ポイント+公開日数ポイント)/3)の計算によった。
*合計ポイントを,100点満点に換算((開示度+制度運用)/54.7×100)し,交際費に関する全国の最高県(沖縄),平均値に近い県(熊本),最低県(愛知)と比較した。



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