名古屋市議会・愛知県議会 政務調査費アンケート結果

2007.1 名古屋市民オンブズマン

1,政務調査費アンケートの実施

名古屋市民オンブズマンでは、政務調査費の領収証の公開を未だにしていない名古屋市議会と愛知県議会の現役の議員を対象として、政務調査費の透明性に関するアンケートを2006年10月に実施しました。 第一次回答の期限である11月末日までに寄せられた回答を掲載します。

2,なぜ今、政務調査費の公開なのか

そもそも政務調査費の制度は会派の政務調査活動に対する自治体の補助金からスタートしたもので、2000年の地方自治法の改正で法令上の根拠を持つに至ったものです。ですから、性質上、他の補助金同様、補助された目的以外に支出した場合には違法支出になりますし、きちんと補助目的事業に支出したことを報告する義務もあるはずです。名古屋市 愛知県も、政務調査費の条例や関係規則をみると、会派に対して市長や知事に収支報告することを義務づけていますから、他の補助金の使途の報告と同じ形をとってはいます。しかし、問題は、その報告内容です。名古屋市や愛知県の条例では、その報告書には領収証をつけなくても良いし、何に使ったかをはっきり書かなくても良い、という、極めて貧弱な内容の報告書で良いことになっています。そのためか、ほとんどの会派は領収書をつけていません。このような貧弱な報告書では、私たち納税者に対して、本当に政務調査費を政務調査活動に使ったのだ、と説明したことにはなりません。 このような政務調査活動の運用に対しては、政務調査費が議員の第二給与化している、という批判が寄せられ、さらには名古屋市議会のある会派も含めて、全国の複数の自治体で政務調査費の不当支出が明らかになったり、訴訟が提起されたり、会派に返還を命ずる判決が続出したりしています。 今や政務調査費の問題は談合とならぶ、全国の地方自治体経営の大きなテーマとなっています。

3,透明性を求める意味

政務調査費を巡る様々な疑惑や不祥事を見ると、諸悪の根元が政務調査費の透明性が維持されていないことにあるのは明白です。にもかかわらず、2006年7月現在で何らかの形で政務調査費の領収証の公開をしている都道府県議会はわずかに10(完全公開は4)、15政令市では7(完全公開は1)しかありません。そして名古屋市議会、愛知県議会とも政務調査費の領収証すら公開しない情報暗黒議会群に含まれています。 全国的には、多くの都道府県、政令指定都市議会の議員の多数は政務調査費の透明化に消極的と言えます。なぜ透明化に前向きでないか、については様々な推察が可能です。一つには、領収証を公開した場合に、政務調査活動以外に支出してしまったことが容易にばれてしまうから、という説が指摘されています。私たちの社会生活上の経験でも、名古屋市議会議員や愛知県議会議員のように、一人当たり一ヶ月に50万円を超えるようなお金を研究活動に使え、と言われても、使い方に困るというのが実際ではないでしょうか。こういった私たち自身の経験から見て、領収証の非公開は目的外支出隠しだ、という見解はあながち的はずれとも言えないように思います。少なくとも政務調査活動をしっかりしている議員であれば、政務調査費の透明化には前向きになるはずです。 このような観点から、私たちは政務調査費の透明化に対する議員の姿勢は議員がどれだけ熱心に政務調査活動をしているかを示す指標になると考えています。

4,アンケート結果について

(1)政務調査費の透明化に反対する、という積極反対の意見は皆無

透明化に積極的な複数の議員の回答は評価できます。 また、全体として政務調査費の使途透明化に対して反対する、という回答もありませんでした。

(2)回答拒否が多数派

その一方で、私たちが訴訟を提起したことを理由としてアンケートに答えない、という回答を民主党名古屋市会議員団、公明党名古屋市会議員団、自由民主党名古屋市会議員団、自由民主党愛知県議員団、民主党愛知県議員団、公明党愛知県議員団、愛知県議会県政長東クラブ、愛知県議会県政高輝会が寄せてきました。しかし、私たちの訴訟は過去の政務調査費の支出が不当である、という内容のものですから、今後の政務調査費の透明性に関する私たちのアンケートに答えたからといって、訴訟に影響を及ぼすものではありません。にもかかわらず、このような回答を寄せる、ということは、第一に、議員の見解に反対する者に対しては一切協力しない、という姿勢の表明において、第二に、そのような姿勢は当該会派所属議員に例外なく見られる、という点において、重大な意味を持つと考えます。このことは、反対の意見を表明する市民や市民団体に対してこれほどまでに大人げない対応をするということ、そのことに対して会派所属の議員として誰も疑問を持たないか、または個人的意見を述べる勇気を持つ議員がいない、ということを示すと考えざるを得ないからです。

(3)5万円以上の領収証の公開との答えについて

透明性について一定の姿勢を示したことについては評価できますが、私たちの日常生活で、5万円以上の領収証を貰うことは年間何回あるでしょうか。せいぜい海外に行った場合の航空券くらいではないでしょうか。 5万円という枠を設けることの合理性は見いだせません。

5,統一地方選に向けて

アンケート結果から、名古屋市議会、愛知県議会の政務調査費の透明化への途はまだまだ遠い、という気がします。各議員には、ぜひ政務調査費をどのように透明化していきたいかを来たるべき選挙戦でも示してもらいたいと思います。 また、今回回答をお寄せ下さった議員も、お寄せ下さらなかった議員も、回答の変更を引き続き受け付けておりますし、この回答だけでなく、様々な機会に政務調査費の透明性に関して有権者に積極的に政策を公表して有権者に真の姿勢を訴えていただきたいと思います。 私達はこのアンケート結果と選挙戦での政務調査費の透明性に関する議員一人一人の公約を参考にして、政務調査費の透明化を積極的に推し進める候補者にのみ投票したいとの考えで、2007年の統一地方選の一票を決定しようと思います。