主権者教育

2016年6月から18歳選挙権が始まります。主権者としての権利を活用してきた名古屋市民オンブズマンが、主権者教育について語ります。
2016/6/26
国政選挙が「AKB方式」になったらどうなる?

  http://www.nagoya.ombudsman.jp/data/160621.pdf
一応完成しました。ご意見をいただければ幸いです。


2016/3/1
愛知県教委 高校での主権者教育研究資料 入手

  愛知県教育委員会高等学校研究課が事務局の、高等学校教育課程課題研究(公民研究班)が16/1/26に発行した「平成27年度高等学校教育課程課題研究 研究報告(公民科)」を入手しました。
http://nagoya.ombudsman.jp/data/160126.pdf

18歳選挙権が2016年6月から始まるとして、「現代社会」「倫理」「政治・経済」それぞれから主権者教育について検討しています。
なお、愛知県教育委員会の担当者は「倫理で主権者教育を考えるのは難しかった」と正直に述べています。

また、「資料を読んで、忌憚なきご意見をいただきたい」とも述べました。ぜひ読んで意見を言いましょう。

また、検討しているのは愛知県教育委員会だけではないはずです。
地元の教育委員会にも、検討資料を入手できないか問い合わせてみてはどうでしょうか。


2016/2/27
「市民オンブズマンが考える主権者教育」(大阪)に35人

  市民グループ「見張り番」は16/2/27に、中学生相手に主権者教育を行った名古屋市民オンブズマンの内田隆氏を迎えて学習会を行い、35名の参加があり大盛況でした。

・主権者講演レジュメ
 http://nagoya.ombudsman.jp/data/160227-3.pdf
・主権者配布資料
 http://nagoya.ombudsman.jp/data/160227-4.pdf
・動画
https://youtu.be/4YVOgnd33q4

2016年6月から始まる18歳選挙権を受けて、各地で主権者教育が模索されています。
たまたま名古屋市民オンブズマンに私立中学から声がかかり、16/1/30に9名相手に話をしました。

そもそもなぜ税金を納めるのか、自分が支払った消費税を調べてきてもらったが、「中学生は携帯電話代をはじめ、欲しいものはすべて親が払っており、自分でお金を払うことがない」現状にショックを受けた。
しかし、朝起きてからオンブズマン事務所に来るまで、税金と関係することがあるか聞いたところ、「顔を洗うための水道は上下水道局」「道路は国道県道市道」「信号は県警」など話がでて、税金で社会が成り立っていることに気付いてくれた。
石川県租税教育推進協議会が作った「税金がない社会」イラストを見せると一様に衝撃を受けた。
しかし、税金の使途をきちんとチェックしないと、このような社会になるかもしれないため、市民オンブズマンが情報公開請求などでチェックしていると述べた。
「号泣県議」は中学生も知っていたが、それを追及するのは約2万枚ある領収書を1枚1枚紙で見る必要があり簡単ではないと述べるとびっくりしていた。
その他、市民オンブズマン活動を紹介したアニメを見せて、よくわかったようだ。
大変残念ながら、現在の18歳選挙権は、文部科学省と総務省(選挙管理委員会)が中心となっており、教育委員会の閉鎖性もあって「選挙とデモ」くらいしか念頭にないようです。
しかし、現場の先生からは「選挙のみ教える『有権者教育』か、真の意味での『主権者教育』か」という声も上がっており、これまで主権者として行政をチェックしてきた市民オンブズマンの経験が役に立つのではないか、文部科学省もNGO・NPOとの連携をうたっているので学校現場に積極的に働きかけてはどうか、と提案しました。

参加型で興味を持ってもらうよう、「朝食のおかず」ワークショップで議会の仕組みを学ぶことも提案されました。
また、「『1票を投じてもどうせ変わらない』ならなぜAKBに投票するのか」と問うことで、選挙を身近に感じられないか、という提案もしました。

大人も主権者教育を受けたことがなく、しかも税金は源泉徴収されており、いくら税金を納めているか、税金の使途にもあまり関心が向きにくいです。
市民オンブズマン活動に参加する人の年齢層も上がっています。
18歳選挙権を考えることは、主権者全体へのアピールにつながっていくと述べました。

会場からも活発に意見が出て、大変盛り上がりました。

↑AKB総選挙と選挙の比較

2016/2/10
文部科学省「高校生の政治的活動についてQ&A」 入手

  平成28年1月29日に文部科学省が開いた「平成27年度 第3回都道府県・政令市等生徒指導担当者連絡会議」で配布された、「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について」(初等中等教育局長通知)Q&A(生徒指導関係者向け)を愛知県教育委員会から情報提供を受けました。
http://nagoya.ombudsman.jp/data/160129.pdf

これは、文部科学省 児童生徒課課長補佐 中安史明氏が行った「行政説明4 高校生の政治的活動」で配布された資料とのこと。
上記連絡会議の議事次第も情報提供いただきました。
今後、Q&Aは文部科学省のホームページでも公開する方針と愛知県教委から聞きました。

通常、文部科学省から各県の教育委員会に通知文が来る際は、いわゆる「かがみ文」がついてくるのですが、今回は単にQ&Aしか届かなかったとのこと。

平成27年10月29日に文部科学省初等中等教育局長が出した「高等学校等における政治的教養の教育と高等学校等の生徒による政治的活動等について(通知)」では、政治的教養の教育とはなにかと具体的に書いてはあります。
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1363082.htm

しかし、上記Q&Aを読む限り、政治的活動は選挙とデモしかとらえていないのではないかというようにもみえます。

内容も、教育の名の下、生徒の「政治的活動」を把握・指導しようとするものが多いです。高校生を「主権者」として見ていないことは明らかです。

上記Q&Aが「通知」ではないということであれば、この法的根拠があいまいとなり、今後Q&Aに基づいて生徒に指導や処分が行われた際、有効性が争われるおそれがあります。

ただ、幸いなことに、愛知県教委の担当者は、「生徒が有権者として自らの判断で権利を行使することができるようにすることが重要だ」と述べていました。

なにをどのように高校生に主権者教育を行うのか、文部科学省の役人のみが決めるのではなく、主権者である私たち自らが考えて提案していくことが重要ではないでしょうか。


2016/1/30
中学生向け学習会「税金の使途を監視する理由」

  2016/1/30、私立名古屋女子大学中学校1・2年生9人が土曜講座 NGO・NPO訪問の一環として名古屋市民オンブズマン事務所に来訪し、学習会「名古屋市民オンブズマンに聞く『税金の使途を監視する理由』」を実施しました。
名古屋市民オンブズマンは代表の滝田誠一弁護士、事務局の内田隆氏が対応しました。


↑中学生の前で話す、滝田誠一代表(右)と内田隆氏(左)

事前学習
 1)過去1カ月程度の自分の購入品・携帯代から消費税額がどの程度か調べてくる
 2)生徒会の仕組みと予算・決算、その決め方についてまとめてくる
 3)「号泣議員」はなぜ泣いたか、調べてまとめてくる
 4)その他質問があれば事前に送る
 5)税金に関係する、気になったニュースがあれば持ってくる

タイムテーブル
 9:00- 9:10 自己紹介
 9:10-10:00 1)税金って納めてる? 携帯代・購入品から見た消費税額
        2)税金がない社会を考えてみよう
          起きてから事務所に来るまでに税金に関係するものは?
  税金がある町とない町イラスト
     石川県租税教育推進協議会http://www.sosuikyou.jp/study/data/
3)年貢と税金の違い
        4)生徒会と国家・自治体の相似性
          代表を選んで予算の使途を決める「財政民主主義」
10:00-10:10 【講義】有権者として監視する必要性 民主主義の基本
10:10-10:20 【講義】過去の無駄遣い追及
10:20-10:30 【視聴】包括外部監査の通信簿アニメ https://youtu.be/TSEHRWVLrWk
10:30-10:40 【グループワーク】政務活動費領収書を実際にチェックしてみよう
10:40-10:50  質問
10:50-11:00  市民オンブズマンの思い
11:00    退出

・配布資料(必要に応じて順次渡す)
 http://nagoya.ombudsman.jp/data/160130.pdf
・名古屋市民オンブズマン タイアップグループパンフ
 http://nagoya.ombudsman.jp/data/2016-1.pdf
・タイアップニュース187号
 http://nagoya.ombudsman.jp/news/187.pdf 
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まず、自己紹介として、「数多くのNGO・NPOのうち、どうしてオンブズマンを選んだのか」「好きな食べ物」を話してもらいました。
(中学生のみんなは、NGO・NPOの事務所訪問も初めてだし、弁護士に会うのも初めてで最初は緊張していました。「好きな食べ物」を聞いたのはリラックスさせるためだったのですが、真面目に答えてくれました)
「野々村元議員が泣いた理由に興味を持った」「身近な税金のことを知りたかった」
「親戚が税理士で税金に関心があった」などあげました。

1)税金って納めてる? 携帯代・購入品から見た消費税額
 次に、税金をどの程度納めているか、1カ月間の購入金額を聞いたところ、「1000円しか買わなかったので、消費税は80円」と回答がありました。
滝田代表が「携帯電話を持っている人」と聞くとほぼ全員が手を上げ、「月に携帯代5000円なら消費税は400円。電気代にも消費税がかかっている。水道にも消費税。地下鉄も消費税が上がって値上げした」と説明しました。
その他、大人になって収入があれば所得税や市民税、固定資産税などがかかると説明しました。

2)税金がない社会を考えてみよう
 起きてから事務所に来るまでに税金に関係するものは?
続いて、中学生でも納めている税金は一体何に使われているか、今日朝起きてからこの事務所に来るまで税金に関係していることをあげてみよう、と呼びかけました。
最初はなかなか思いつきませんでしたが、「朝起きて顔を洗った?」と聞くと、「水道」と返事がありましたが、だれが水道を管理しているかはなかなか声が出ませんでいた(名古屋市上下水道局)。その後、トイレに行って水を流せば名古屋市上下水道局、テレビを見たら電波の管理は国、コンビニでおにぎりを買ってごみを捨てたら名古屋市環境局。
信号や道路標識は愛知県警、救急車は名古屋市消防局、救急車が向かう病院は個人病院・市立・県立・国立病院。道路は市道・県道・国道があり、地下鉄は名古屋市交通局が運営しているとそれぞれ説明したところ、中学生は税金が社会のいろんなところで使われていることを実感しました。

2)税金がない社会を考えてみよう 税金がある町とない町イラスト
それを踏まえ、石川県租税教育推進協議会が作成した「税金がある町」の絵を見せました。



上記に加え、「公園がある」「公立学校がある」「川を整備している」「火事のときは消防車が来る」などがでました。

「税金のない町」の絵を見せて、気付いた点を挙げてもらいました。



「信号がないため渋滞して車がぶつかっている」「火事が隣の家まで延焼している」
「ごみを回収しないため、公園や道などにほおっている」
「警察がないため、強盗がいて、店の人も銃で反撃している」
「公園の噴水の水が止まっている」「空気が悪い」「救急車が来ず、けが人がほおっておかれている。」「川が整備されておらず、川の水があふれている」「道路がぼこぼこ」
「けんかや暴力がおおい」「税金のない町は全体的に汚い」

滝田弁護士は「けんかや紛争が起こった際、警察や裁判所があり、きちんと処罰されている。また刑務所もある。これまで意識していなかったかもしれないが、いい社会を作るためには税金は必要不可欠。みんなでお金を出し合って使い道を決めている」と述べました。
内田氏は「発展途上国では、税金は納めているけれども必要なところに配分されておらず、絵に描いてあるような状況が発生している」と説明しました。

3)年貢と税金の違い
続いて、生徒からの事前質問にあった「税はいつからあるのか」について答えました。
江戸時代は「年貢」と呼ばれており、農民のみ米を支配階級である武士に支払い、武士の給料や警察機構などに充てていました。
しかしながら、使い方は将軍様次第であり、大奥に国家予算の1/4も使われていたという記録もあり、農民の要望が反映されるシステムにはなっていませんでした。
その後1868年ごろ明治維新が起こり、武士の世の中ではなくなり、税も金で納めるようになりましたが、納税した金を国民が決めるシステムにはなっていませんでした。1890年に施行された大日本帝国憲法でようやく議会が開かれましたが、直接国税を15円以上納める25歳以上の男子に限られていました。また、主権は天皇にあり、国民は「臣民」として兵役と納税の義務を負っていました。
第二次世界大戦後、日本国憲法のもと「国民が主権者」となり、20歳以上の女性も参政権を得ました。2016年6月以降、18歳以上の男女が選挙権を得ます。

4)生徒会と国家・自治体の相似性
歴史の勉強が続いたので、生徒に事前学習を発表してもらいました。
生徒会の役員を行っていた生徒がいたので、生徒会の仕組みについて説明してもらいました。生徒会では文化祭などに関する生徒会費の配分を決めるのですが、そもそもどうやって生徒会役員を選ぶのか。スピーチをして選ぶ基準は何か。
生徒会と自治体はよく似ていて、議員や市長の選挙を通じて納めた税金の使い方を決めるとしました。(国会だけは議員を選ぶのみ。総理大臣は議員が選ぶ)

【講義】有権者として監視する必要性 民主主義の基本
その後、どうやって議員や市長を選ぶのか、その重要な視点の一つが税金の使い方をチェックすることと説明しました。
情報公開請求書を役所に出せば、だれでも役所が持つ公文書を見ることができます。
実際に開示された、名古屋市民オンブズマンが結成される1989年の名古屋市長の交際費の一覧を配布して、気付いた点を挙げてもらいました。
「お見舞いや賛助、せん別相手が真っ黒で誰に払っているか分からない」
「市長交際費の予算が月に150万円」
これでは税金の使い方がふさわしいかどうか分からないため、名古屋市民オンブズマンは情報公開を求める裁判を行いました。今では市長交際費はホームページで相手先まですべて見ることができますし、額も月3万円にもなりません。
http://www.city.nagoya.jp/mayor/category/317-0-0-0-0-0-0-0-0-0.html
これまで必要のないところに支出してきたということになります。

【講義】過去の無駄遣い追及
市民オンブズマンは、まず情報公開請求して資料を集め、おかしい支出(違法・不当)に対してはそこに住んでいる住民であれば住民監査請求をすると説明しました。住民監査請求をすれば、監査委員が監査をしますが、まず返還勧告がでることがなく、住民訴訟を起こすとしました。
過去、政務活動費や談合などで勝訴して自治体に公金を返還させています。
近年も名古屋城天守閣木造化に関し、市内16区で行われたタウンミーティングで15区出て意見をまとめたり、ニュースに書くとしました。

【視聴】包括外部監査の通信簿アニメ
続いて、市民オンブズマンで「包括外部監査の通信簿」という冊子を作るための寄付募集のためのアニメをみんなで見ました。政務活動費についても一部出てきました。
https://youtu.be/TSEHRWVLrWk


↑アニメを見る中学生

☆「号泣議員」はなぜ泣いたか
 事前学習で「号泣議員」はなぜ泣いたか、調べてまとめてくるとしたところ、「どうしてすぐばれるのに不正をしたのか」という意見が出ました。
 そもそも政務活動費とは、議員報酬(兵庫県議の場合年約1400万円)以外に、調査研究にしか使えない補助金として年540万円が支給されています。現在は原則すべての領収書を議長に提出することになっていますが、出張の場合「支払い証明」でも可となっていたため、領収書を付けずに支払い証明だけで年間195往復したことにした疑惑があります。出張した際の報告も議会に提出する必要もありません。また、大量の切手を購入した領収書はありますが、どこに発送したかは議会に提出する必要がなく、切手を金券ショップで売却した疑いもあります。
 「政務調査費」という名称だった2011年度、12年度も同様のことをしていましたが、議会に提出される領収書が年間2-3万枚にも及び、しかも紙で公開されるため、写しを取るにも20-30万円かかり、だれもきちんとチェックせず、見過ごされました。
  「調査研究その他の活動」にも使途が広がった政務活動費制度が始まった2013年度、神戸新聞が「要請陳情等活動費」をチェックしたところ多額の疑惑に気付いて発覚したという経緯があります。
  しかし、政務調査費・政務活動費をめぐる疑惑は号泣議員に限らず、愛知県議でも人件費を払ったことにして金をプールしていたとして議員辞職した事例があるなど、全国的に問題となっているとしました。

【グループワーク】政務活動費領収書を実際にチェックしてみよう
 実際に、愛知県議に支給された政務活動費の領収書の束を生徒の前に出しておかしいものをチェックしてもらいました。


↑政務活動費の領収書をチェックする中学生

「人件費の宛先が黒塗りでわからない」などの意見がありました。そもそも愛知県議の領収書は年間2-3万枚ほどあり、普通にコピーを取ると20-30万円かかりますが、愛知県議はCDで公開されており、140円で済みます。
 都道府県では大阪府と高知県がネットで公開され、いつでもだれでもチェックできるため、ほかの自治体でもぜひネット公開してもらいたいとしました。

  ☆各種質問と回答 
 名古屋市民オンブズマンの資金はどうしているのか、という質問に対しては、「会費とカンパだけで税金は1円も入っていない」としました。ただ、住民訴訟で勝訴した場合、弁護士報酬が自治体から支払われ、その一部を活動にカンパしていますが、住民訴訟の勝率は1割程度でそう儲かるものではないとしました。

 どのように不正を発見するかというものは、新聞報道をチェックしたり、内部告発を受けるとしました。
 
 なぜ1990年に名古屋市民オンブズマンを始めたかというと、大阪で「市役所見張り番」という団体が活動しており、名古屋で講演してもらって面白い活動だとして始めました。
 他人任せにせず、「私が主権者だ」として活動した結果、実際に役所が改善されて大変面白かったことが原動力です。

   18歳選挙権については、大学生有志が「愛知県議選では選挙公報がないため作ってほしい」と提言をしたように、今後若い世代が政治にかかわっていくのではないかとしました。
 
 最後に、滝田弁護士が「号泣県議や大臣辞職を受け、議員が金を受け取ること自体悪いことのように思われるかもしれないが、保育園が足りないなど具体的な要望があれば、議員になってほしい人を政治資金として支援することが民主主義の基本ではないか。
 選挙権だけでなく被選挙権もある。しっかりした議員もいるはず。それを見分ける力を獲得してほしい」としました。

 
↑説明したホワイトボード
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中学生がどのような感想を持ったかわかりませんが、名古屋市民オンブズマンとして中学生を対象とした話は初めてだったため、ちょっと硬かったかもしれません。(大学生でも難しかったのではないかと、後の内部反省会で出ました)

また、当日はシティズンシップ教育を行っている市民団体関係者も傍聴しており、「参加型ワークショップなど、選挙や議会の仕組みを身をもってわかるものができれば、中学生に受けるのではないか」という提案もありました。
 
今後、18歳選挙権で主権者教育がさらに進むと思います。講演などの要望があればできる限りこたえていきたいと思います。
参考文献
『シチズン・リテラシー』 鈴木崇弘ほか編著 教育出版 2005/4
『シティズンシップ教育のすすめ』 杉浦真理 法律文化社 2013/4 


2016/1/29
現在の「主権者教育」に足りないもの

  2016/1/30に開催する名古屋市内の私立中学生向けの市民オンブズマンの講座のため、主権者教育をいろいろ調べている。いろんな人が手探りで主権者教育を模索している。

16/1/27中日新聞に、「18歳選挙権 課題学ぶ 県教委 教員向け初フォーラム」という記事が掲載されたため、さっそく愛知県教育委員会に当日資料をもらいに行った。(残念ながら、高校の先生有志が主催なので県教委主催ではないので資料web掲載は控えた。資料を希望する方は直接連絡していただきたい)

その資料を見ても、去年総務省が発表した下記資料に引きずられているように思える。
・平成27年9月29日 総務省
 「私たちが拓く日本の未来」(生徒用副教材、教師用指導資料)の公表
 http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei15_02000112.html

これまで「主権者教育」というのはなかったわけではない。
私が見る「主権者教育」の分類は以下である。
1)総務省系(選挙管理委員会) 主な主張「選挙に行きましょう」
2)国税庁系 主な主張「きちんと納税しましょう」
3)NGO系 シティズンシップ教育など

今回、総務省と文部科学省の連携で上記資料ができたため、どうしても「選挙に行きましょう」色が前面に出ている。

しかし、選挙に行くかどうかの前に、「主権者とはなにか」がもっと問われるべきではないか。「主権者教育」の主体が主に教育関係者ということもあり、「主権者とはなにか」を深く掘り下げることなく、単に選挙についてのみ検討しているきらいがある。

また、2015年に全国各地で行われた安全保障法案デモを引き合いにして、「選挙かデモか」の二元論に陥っている人も見受けられるようだ。

市民オンブズマンは、主権者として選挙時以外も持てる権利を活かして活動している。
・情報公開請求
・住民監査請求・住民訴訟
・情報公開度ランキング
・議員・候補者アンケート
・各種調査・研究
・学習会
・議会傍聴
・各種申し入れ
・ニュース発行
・ホームページ・ブログ・twitter・facebook発信
・カンパ募集

その他、街頭でのデモ・抗議行動、住民投票、公開討論会、刑事告発、差止訴訟、請願や署名など行っている団体もある。

選挙での投票は有権者が持つ1つの権利にしか過ぎない(投票が重要なことは言うまでもない)。「選挙権がなければ社会に対して発言してはいけない」という決まりはない。逆に、選挙以外の日常の行動こそ重要ではないだろうか。それにはまず、これまで国税庁系も行ってきた「納税者意識」を高め、「納めた税金の使い道をしっかり監視すること」こそ第一歩だと考える。
「主権者教育」は18歳だけが対象ではないのだ。

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参考
・公益財団法人 明るい選挙推進協会
 http://www.akaruisenkyo.or.jp/
・石川県租税教育推進協議会 
 http://www.sosuikyou.jp/study/data/
・シティズンシップ教育推進ネット
 http://www.citizenship.jp/

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参考文献
・「『政治参加』する7つの方法」 筑紫 哲也 (編集)(講談社現代新書) 2001/4
・「日本を洗濯する 自治体を市民の手にとりもどす方法」
 全国市民オンブズマン連絡会議編 教育史料出版会 1998/8
・「新版 ドキュメント官官接待 公費接待からカラ出張まで」朝日新聞名古屋社会部
 風媒社 1998/1
・「官壁を衝く」仙台市民オンブズマン 毎日新聞社 1999/5
・「号泣議員と議会改革 市民のための議会改革処方箋」 森池豊武・折口晴夫・丸尾牧
  エピック 2015/9
・「警察内部告発者」原田宏二 講談社 2005/3
・「これでわかる!『秘密保全法』ほんとうのヒミツ」中谷雄二・近藤ゆり子 風媒社 2012/8
・「国家と秘密 隠される公文書」 久保享・瀬畑源 集英社新書 2014/10
・「高校生からわかる 政治のしくみと議員のしごと」山田健太・三木由紀子 トランスビュー 2013/6
・「市民の政治学 討議デモクラシーとは何か」篠原一 岩波新書 2004/1
     


 

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