22/4/20公開「個人情報保護法ガイドライン(行政機関等編)」に「法に基づく規律を越えるルールを設けることはできない」記載
22/4/22に名古屋市個人情報保護審議会が開催され、傍聴してきました。
・配付資料
・メモ(名古屋市民オンブズマン 作成)
個人情報保護法改正(23/4/1施行)に伴う、名古屋市個人情報保護条例の改正について、5月、6月の名古屋市個人情報保護審議会で答申案を検討し、7月に答申をするというスケジュールです。
今回の審議会は、前回までの審議の概要を確認しただけで、実質的な議論はほとんどありませんでした。
なお、審議資料に記載された「懸案事項」は答申に入れるか否かは未定で、5月の審議会であらためて意見を伺いたいとしました。
審議資料によれば、「新法により、当市の個人情報保護行政に対する当審議会の関与の度合いは一定程度低下することとなるが、市民の情報の保護水準を低下させてはならない」「先述の事後報告事項等のほか、法の許容範囲内において、実施機関が必要に応じて当審議会に報告をし、又は意見を求めることができるような包括規定を設けるなどの仕組みを担保する方法を検討すべき」とありました。
最後に名古屋市の担当者から、「国から個人情報の保護に関する法律についてのガイドラインが示され、名古屋市は昨日の夜入手した。まだ内容が精査できていない。本日の審議資料に反映したかったが、まだ読み込みが足りない。大きく変わったところがあり、なかなか私たちが求めているところや同じ方向を向いているようなものでもない。
今後政令やガイドライン以外も、他都市も参考にしたい。
5月6月で検討し、7月答申に間に合わせるには大方決めないといけないが、一部確定できないものもある」と発言がありました。
---------
調べたところ、22/4/20に国のガイドラインが示されていました。
令和4年4月20日更新
個人情報保護委員会 (令和4年4月一部改正)
個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(行政機関等編)
そこには以下記載がありました。
・ただし、本ガイドラインの中で、「しなければならない」、「してはならない」及び「許容されない」と記述している事項については、地方公共団体の機関及び地方独立行政法人についても、これらに従わなかった場合、法違反と判断される可能性がある。(1ページ)
・地方公共団体の個人情報保護制度についても、従来は個別の条例で規律されていたものを、統合後の法に基づく全国共通ルールとして、行政機関及び独立行政法人等に対して新たに適用されるものと同様の規律を適用し、地方公共団体に対する規律についても、解釈運用・監視監督を委員会が一元的に担う仕組みを整備。(5ページ)
・また、条例要配慮個人情報について、法に基づく規律を越えて地方公共団体による取得や提供等に関する固有のルールを付加したり、個人情報取扱事業者等における取扱いに固有のルールを設けることは、法の趣旨に照らしできない。(16ページ)
・令和3年改正法では、社会全体のデジタル化に対応した個人情報の保護とデータ流通の両立の要請を踏まえて、地方公共団体の個人情報保護制度についても、法の規律を適用して解釈を委員会が一元的に担う仕組みが確立されたところ、地方公共団体の機関において、個別の事案の法に照らした適否の判断について審議会等への諮問を行うことは、法の規律と解釈の一元化という令和3年改正法の趣旨に反するものである。」(70ページ)
・一方、個人情報保護やデータ流通について直接影響を与えるような事項であって、法に委任規定が置かれていないもの(例:オンライン結合に特別の制限を設ける規定、個人情報の取得を本人からの直接取得に限定する規定)について、条例で独自の規定を定めることは許容されない。(74ページ)
2000年に施行された地方分権一括法で、地方への権限移譲が明確化され、国と地方の関係を「上下・主従関係」から「対等・協力関係」に転換することになりました。
また、「上乗せ」「横出し」条例は最高裁判決で、一般論として合法的なものがあると承認したことなどから、各地で上乗せ横出し条例が制定されています。(徳島市公安条例事件 最高裁昭和50年9月10日判決)
国のガイドラインが、これまでの地方自治体の個人情報保護審議会より個人情報保護レベルが低いのも問題ですが、「法に基づく規律を越えるルールを設けることはできない」と記載されているのも問題です。
今後も注目していきたいです。
22/3/25(金)名古屋市個人情報保護審議会 傍聴メモ
22/3/25(金)に名古屋市第282回個人情報保護審議会が開催されました。
・22/3/25(金)282回個人情報保護審議会配付資料
愛知県弁護士会の加藤光宏弁護士が、傍聴してメモを取りました。
許可を得て掲載します。
----------
2022年3月25日
弁護士 加藤 光宏
2022年3月25日 第282回個人情報保護審議会(名古屋市)を傍聴したので、概要を報告する。
名古屋市個人情報保護制度の改正についての主なテーマは、
1)匿名加工情報について
2)審議会の審議事項について
の2点であった。
1 匿名加工情報について
審議資料に沿って議論が交わされた。
匿名加工情報については、業者からの提案を市が受け付ける→その内容の適否を審査する→業者と契約を締結し、市が加工した情報を提供する、という運用を想定している。契約期間が終了したら、事業者は加工情報を廃棄する必要がある。審査は、市の職員が行うことになるが、この点については、国と調整中とのこと。
事業者の情報をどの程度公表するかが議論になったが、原則公表し、利用方法も具体的に開示する方向で進めるべきとの意見があった。
今回の法改正で、国は利活用を進める方向に舵を切ったが、考え方としては保護を優先すべきであろう。特に、利活用が前面に出てくると、現場職員は、保護よりも利活用を優先してしまう可能性もあるので、現場、職員に対して保護を優先すべきであることを市として宣言しておくことは重要である。
2 審議会の役割について
審議資料に沿って議論が交わされた。
従前、審議会で議論してきた事項は、今後は減る方向にならざるを得ないが、審議会が事後報告を受け、運用状況を確認していくという形で関与したい。そのための方法として、審議会の意見を求めることができる旨の包括的規定を条例におくなどして、何とか関与の道筋を残すのが好ましいのではないか。審議会の関与の程度については、個人情報保護委員会がどの程度関与してくるのかも踏まえて検討していくべき。「地域特性」をキーワードに審議会が関与できる場面を考えていきたいが、助言を求める先が国なのか審議会なのかを現場が運営上迷わないようにしていくことも必要である。
以上
-------
なお、22/2/25に開催された第281回名古屋市個人情報保護審査会の議事録を、名古屋市から情報提供してもらいました。
22/3/1(火) 神奈川県内自治体 「個人情報保護法改正対応を審議会に諮問」は2つのみ
かながわ市民オンブズマンが、神奈川県内34自治体に対し、「個人情報保護法改正への対応についての質問状」を22/1/23に発送し、回答集計表を22/3/1に発表しました。
・「個人情報保護法改正への対応についての質問状」
--------
集計結果
1 改正個人情報保護法への対応について、どのような取り組みをしていますか。
@内部での検討と合わせて審議会に諮問している
2/34 神奈川県・川崎市(予定)、なお茅ヶ崎市は令和4年1月末に諮問予定
A内部で検討を進めている
20/34
B今後検討したいと考えている
12/34
C目下のところ取り組む予定はない
0/34
Dその他
0/34
2 改正個人情報保護法に対応する上で住民の意見を反映させることを予定されていますか。
@予定している
14/34 パブリック・コメント
A予定していない
3/34 神奈川県(ただし規則制定時はパブコメ実施予定)・海老名市・大磯町
Bその他
17/34 未定orパブコメ実施を検討中
3 改正個人情報保護法に対応する上での基本的な姿勢についてうかがいます。
@これまでの個人情報保護条例による施策を後退させないという観点で取り組む。
11/34 横浜市(所管課の姿勢)・鎌倉市・小田原市・秦野市・厚木市・中井町・松田町
・山北町・開成町・真鶴町・湯河原町
A国の解釈が示されればそれに従う。その結果、これまでの個人情報保護条例による施策が後退する
こととなってもやむを得ないと考える。
2/34 藤沢市・三浦市
Bその他
20/34
------------
デジタル社会形成整備法が2023年4月1日から各自治体に対して施行される予定です。
各自治体は、個人情報保護条例を整備法に何らかの形で対応させる必要があります。
しかしながら、弁護士や学者らは、各自治体のこれまでのレベルの高い個人情報保護条例が、低いレベルの法律にあわせられてしまうのかと心配しています。
アンケートが各地の参考になれば幸いです。
参考リンク
・神奈川県情報公開・個人情報保護審議会
・茅ヶ崎市情報公開・個人情報保護審議会
--------
22/2/25(金) 名古屋市個人情報保護審議会委員「国の個人情報保護委員会で各地からの助言を求める声にまかないきれるのか?
22/2/25(金)に、第281回名古屋市個人情報保護審議会が開催されました。
傍聴可能だったので傍聴してきました。
名古屋市のホームページでは、第277回(2021年10月22日)までしか記載が無く、しかも議題のみ載っていました。
・名古屋市 個人情報保護審議会の審議状況
審議会終了後、担当の名古屋市スポーツ市民局市民生活部市政情報室市政情報係に問い合わせたところ、議事録ならびに配付資料を情報提供してもらいました。(会議の概要は、市民情報センターに開示されていました)
・2021年10月22日(金) 第277回名古屋市個人情報保護審議会 概要+議事録+配付資料
・2021年11月26日(金) 第278回名古屋市個人情報保護審議会 概要+議事録+配付資料
・2021年12月24日(金) 第279回名古屋市個人情報保護審議会 概要+議事録+配付資料
・2022年1月28日(金) 第280回名古屋市個人情報保護審議会 概要+議事録+配付資料
・2022年2月25日(金) 第281回名古屋市個人情報保護審議会 配付資料
資料によれば、名古屋市個人情報保護審議会は、21/10/22から「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(整備法)成立に合わせて、名古屋市個人情報保護条例の改正を検討していたことがわかりました。
過去傍聴者は0人でした。
整備法では、個人情報保護法が改正され、23/4/1から自治体に直接適用されることになります。
これまでの名古屋市個人情報保護条例を見直す必要があります。
特に、「手数料」は定めなければいけませんが、「非開示事由の追加」「要配慮個人情報」「個人情報取扱事務目録の存置」「審議会の審議事項」は定めることができるとあり、どこまで定めるかは自治体ごとに決める必要があります。
これまでレベルの高かった、自治体の個人情報保護条例が、レベルの低い国の個人情報保護法に一律にあわせられるのではないかと学者や有識者が懸念を表明しています。
事務局が21/11/26に論点整理をし、それぞれの論点に対して審議会委員が意見を言っていきました。
また、2022年7月に個人情報保護審議会が答申を出す予定、2022年11月議会で議案上程→承認の予定 だとも資料にありました。
21/12/24には、委員の小野木昌弘・中日新聞社論説委員が(国の)個人情報保護委員会に関して「きめ細やかに、事情に即した審議ではなく、全体が中央集権になるという話のようなので、全体的に、審議会の存在価値を問われる印象を受けた」と発言しています。
22/1/28には、荒見玲子・名古屋大学大学院法学研究科教授(行政学)が「個人情報保護委員会にお伺いを立てて、判断する動きは時間がかかる気がするがどうか」と発言しています。
川上明彦弁護士は、「国に判断を求めることにそもそもリスクがある。行政の所掌事務に必要な場合として、個人が自己情報をコントロールできるという点が個人情報保護の趣旨であるのにもかかわらず、コントロールを事実上国が行う可能性がある。国がこのような規程をするということであれば、条例で最大限自由が利かないようにしておかなくてはいけないのではないか。」と述べています。
今回、22/2/25には、開示決定の期限、費用の負担、訂正請求権、消去・利用停止請求権、利用及び提供の制限、電子計算機処理の制限、電子計算機の結合の禁止、個人情報の取扱状況等に係る公表について、事務局案を示した上で、各委員が発言しました。
利用及び提供の制限に関し、川上弁護士は「個人情報保護委員会で目的外提供判断の慎重さ・的確さは引き続き担保されるのか。実施機関が民間事業者等へ目的外提供するかどうかの判断は、個人情報保護委員会から示されるガイドラインを参照して行うとあるほか、必要に応じて個人情報保護委員会に助言を求めることも可能とある。仮に個人情報保護委員会に任せたとして、各地からの助言を求める声に個人情報保護委員会はまかなえきれるのか。
何を議論するか、空中戦をしていてもでてこない」としました。
会長の庄村勇人・名城大学法学部教授(行政法学)は「基本はガイドラインを徹底するが、迷ったとき、(国の)個人情報保護委員会に聞くのでは無く、(市の)個人情報保護審議会に相談できる体制を整えれば、慎重さを担保できるのではないか」としました。
他の論点も、何らかの形で(市の)個人情報保護審議会の関与を残せないかという議論が多かったです。
今後も名古屋市個人情報保護審議会の議論に注目していきたいです。
22/2/19(土) 愛知県弁護士会シンポ「どこへ行く!? 個人情報保護条例」
愛知県弁護士会は、22/2/19にオンラインシンポジウム「どこへ行く!? 個人情報保護条例」を開催しました。
講師は、元内閣府情報公開個人情報保護審査会常勤委員の森田明弁護士です。
・配付資料1 シンポジウム「地方自治と個人情報保護」基調講演 弁護士 森田明
・配付資料2 愛知県内市 自治体アンケート
菅義偉元首相は、地方自治体が独自に個人情報保護条例を設置していることは「2000個問題」であるとして、地方自治体のデータの利活用を推進するため、デジタル社会形成整備法を2021年5月に成立させました。
2023年4月1日から各自治体に対して法律が施行される予定です。
地方自治体の個人情報保護条例の方が、国の行政機関個人情報保護法より先にでき、しかも内容も条例の方がよいです。
デジタル社会形成整備法では、地方自治体の個人情報保護制度について、全国的な共通ルールを規定し、全体の所管を個人情報保護委員会に一元化することになっています。
弁護士らは、各自治体のこれまでのレベルの高い個人情報保護条例が、低いレベルの法律にあわせられてしまうのかと心配しています。
森田弁護士は以下述べました。
今回の法改正は、有識者の検討会ではなく内閣官房のタスクフォース(役所レベルでの協議の場)から始まった。
各自治体の個人情報保護制度の統一化について、自治体の反発は強かった。
要配慮個人情報や、本人外収集の制限や、オンライン結合の制限などは自治体は原則規制し例外的に解除してきたが、法律ではこのような視点は設けられていない。
それぞれの自治体が自分たちで考えて地域の特色を踏まえた形で制度化してきた。バラバラにはそれなりの意味があった。
条例を一本化するのであれば、摺り合わせを慎重にすべきだった。
自治体の審議会が果たした役割はこれまで大きかったが、『専門的な知見に基づく意見を聴くことが特に必要なとき』のみ審議会に諮問できると限定的な条件を付している。
国の情報保護委員会が関与するから、自治体の審議会に諮る必要はないとしている。
国の個人情報保護委員会が去年11月に自治体からの質問に答えてのQ&Aを公表しているが、審議会に住民代表は入れていけないわけではないが、『聞き手』だとしている。そこまで口出しできるのか。自治体が自主的に決めてもよいのではないか。
個人情報保護の水準が下がる可能性がある。
自治体は学校検診や乳幼児検診等、地域住民の網羅的な医療情報を持っている。ビッグデータ化のために狙われている。
22/2/15に新潟県弁護士会で本件についてシンポジウムを行い、個人情報保護委員会の人も参加したが、ペーパーに書いてあることは説明してくれるが、個別の問題については答えてくれなかった。
また、個人情報ファイル簿を作ることが義務化されているが、従来の登録簿に載っていた情報が落ちる可能性がある。
国はあまり考えていない。
さらに、議会を何らかの形で実施機関にすべきだが、国は議会で決めてと言っている。
その他、開示請求前置なのか、請求期間の問題など問題が多い。
法律の学者は、法律より進んだ条例がいっぱい有るのに、法律で一律規制をしてしまうのは非常に異例で、しかも個人情報保護という人権に関わるような問題で行うのは問題だとしている。
条例制定権の侵害で、憲法違反の問題を生じてくるのではないか。
本来監督機関であった個人情報保護委員会がむしろ上級庁みたいな役割になり、監督機関としての立場を外れるのではないか。
国の法律解釈は疑問が多く、自治体は現場の声を伝えて質問し、運用するのは難しいと伝えるべき。
議員や住民、弁護士なども声を上げる必要がある。
続いてシンポジウムになりました。
当初予定していた実務関係者の方の登壇は、適任者が見つからずなくなりました。
コーディネーターの新海聡弁護士は「来年4月から改正法が施行されるが、現状では無理ではないかと思わざるを得ない。
愛知県自治体にアンケートしたが、検討中という回答ばかり。長久手市は『特別な検討は必要ない』と考えている。」としました。
森田弁護士は「個人情報審議会の委員をしている神奈川県は去年5月か6月に審議会の諮問があって、5-6回は審議している。
他の市はまだ諮問まで行っていない。ぜひ主体性を持って取り組んで欲しい。」
新海弁護士は「今まで作っていたインデックス以外に、国に準拠した個人情報ファイル簿を作らないといけない。
どういう関係になるのか。1年でできるのか。『上乗せ横出し条例』類似の話し。現場の事務作業が大変。1年2ヶ月でやらないといけないのは、まず無理」としました。
新海弁護士は「条例改正が行われずに来年4月を迎えたらどうなるのか」と質問し、森田弁護士は「理屈の上では法律は施行されるので、法律に基づきやらなきゃダメになる。条例に手を加えなければ条例が生きるわけではなく、法律が生きることになる。ただ現場でどうするのか。
国の個人情報保護委員会には自治体から2000件ほど質問が殺到していて、それを踏まえてガイドライン案を作ったと言っている。
しかし自治体が納得するような内容でガイドラインはできているとは思えない。未解決の問題は多いと思う。」としました。
福島正人弁護士は「全国のルールが共通化して、具体的にどういう場面で情報が利活用されるかイメージが付かない」としました。
森田弁護士は「学校の情報をクラウドで管理するというものがある。しかし小さい自治体はコスト面、現場の負荷から導入が遅れた。
ビッグデータとして提供して活用させる需要に応える面があるが、自治体の中でややこしい手続きがあると支障になるというのが今回の法律改正の考え方。
しかし大きな支障なのか。審議会は月1か2ヶ月に1回開いている。
現場の間隔から離れたところで流通の阻害みたいな議論がなされている。」としました。
新海弁護士は「自治体の持ってる個人情報を匿名加工してビッグデータ化して資源にし、民間企業に利活用させる、というイメージ」としましたが、森田弁護士は「企業が欲しいのは匿名加工情報なのかという疑問が、以前検討会で出た。
また、全国基地騒音訴訟の原告団のリストを提案募集にかけた。匿名加工して意味があるものが残るとは到底思えない。
今まで国では匿名加工をやったのが1件だけ。『お品書き』を出す準備をするだけで自治体の負担は大変。」としました。
また、森田弁護士は「警察から自治体に捜査関係事項照会が来る。私が審議会に入っているところは個別に審議する。
もうちょっと書き方をちゃんと書いて欲しいなどいうと、取り下げることもある。丁寧な対応をすることはそれなりに意味がある。
さらに、医療広域連合にも結構捜査関係事項照会が来る。事後的な報告でも、慎重に対応することになる。
法律を改正したら、今の国の考え方からすれば全然審議会に権限が残らないだろう」としました。
会場から、「自治体の情報を国で活用するのなら、情報公開者リストなど、リストを作ることが問題となっていたことも国が容易に入手可能になるのでは」と質問が来ました。
森田弁護士は「国は匿名加工ルートではなく、生の情報を直接自治体から入手しようとするのでは。それに対するブレーキがきくのか。
重要土地調査規制法を個人情報保護の観点からどうかという意見を聴かれたことがある。7条で自治体に明確に情報を出せと義務づけをしてある。法令に基づいて提供を義務づけられるので、出さざるを得ない。
22条で自治体は協力せよと書いてある。範囲も広い。現状であれば任意の話しなので審議会にかかる。
しかし改正後は審議会に諮ることではないということになる。
国の個人情報保護委員会に聴いたとして、『出さない方がいいよ』とアドバイスするのか。国家機関同士でアドバイスはなかなか考えられない。自治体として国に出す場合は嫌と言えなくなるのではないか」としました。
福島弁護士は「市民サイドからすると、個人情報を従前のレベルで守って下さいというのはどのような方法があり得るのか。」と質問しました。
森田弁護士は「審議会委員は自治体が動かないと審議会も動けない。一市民として自治体に対して何らかの働きかけをすることはあり得る。
市民団体や弁護士会として、自治体に質問を出したり、議員もきちんと言ってほしいし、議会自体もどうするか考えて欲しい。
国は案として『個人情報保護法施行条例』という、最小限のサンプルを出してきた。これを自治体が作るのは非常に屈辱的な話し。
ちゃんと議論してもらわないと困る。黙っていては形だけの条例を自治体は作らされる」としました。