リニモ・あおなみ線問題特集

大赤字を垂れ流す、リニモ(東部丘陵線)とあおなみ線。今後どうすればよいのでしょうか。
2003年度当時のあおなみ線中部空港延伸の事業費・需要予測入手

名古屋市民オンブズマンは、2003年度に発表した、あおなみ線を中部国際空港に延伸した際の事業費と需要予測を情報公開請求して開示されました。
http://www.nagoya.ombudsman.jp/linear/181010.pdf

・平成15年度中部国際空港に関する地域整備等調査におけるあおなみ線延伸の事業費
・国や東海3県、名古屋市などによる検討組織が1990年代に試算した、あおなみ線延伸の事業費の詳細がわかるもの(不存在)
・平成15年度中部国際空港に関する地域整備等調査における需要予測
 
上記によれば、金城ふ頭-国際空港までの概算建設費は以下です。
1)名鉄常滑線乗入れ案 約 700億円
2)陸上ルート     約1300億円
3)海上ルート     約1900億円

また、名古屋駅-中部国際空港までの需要予測は以下となっています。

   アクセス整備方策需要値 西名古屋港線鉄道事業申請の需要値
2005年  58,000 44,000
2015年  81,600 62,000
2018年  88,680 67,400
2025年 105,200 80,000
   
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なお、あおなみ線の1日当たりの輸送人員実績は以下となっています。
2004年度 18,226
2005年度 24,164
2015年度 34,911  
http://www.aonamiline.co.jp/pc/pdf/keiei2017.pdf
 
1997年3月に中部新国際空港推進調整会議が基本的考え方として「アクセス整備方策案」を示しています。

・愛知県図書館 地域資料(中部国際空港関係)
https://websv.aichi-pref-library.jp/list/banpaku/chiki_kuko.pdf

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まとめ
・河村市長は18/9/21名古屋市議会本会議で「あおなみ線を中部空港まで延ばせるか検討する組織を来年度立ち上げたい」と主張
・延伸には少なくとも約700億円かかる
・名鉄会長は「現在の名鉄アクセスには余裕があり、中部空港滑走路2本になっても対応可能」と主張
・名鉄会長「名古屋市から名鉄に何の問合せもない」と不快感
・中部空港の旅客数は2005年の1235万人がピーク。現在回復傾向

以前から検討され、何回も頓挫した案をいまごろ河村市長が再度提案するのは全く理解できません。
約700億円あれば他に何が出来るのか。

今後の議論の参考になれば幸いです。


河村市長「あおなみ線を中部空港まで延ばせるか調査する組織を立ち上げたい」

18/9/21名古屋市議会本会議で、渡辺義郎市議(自民)の質問に対し、河村たかし名古屋市長は「あおなみ線を中部空港まで延ばせるか調査する組織を来年度立ち上げたい」と答弁しました。

・平成30年9月定例会 9月21日 本会議 議案外質問
 自由民主党名古屋市会議員団 渡辺 義郎 議員(動画)
 
http://www.nagoya-city.stream.jfit.co.jp/?tpl=play_vod&inquiry_id=1324
・名古屋市民オンブズマン 文字起こしアプリによる文字起こし
 http://www.nagoya.ombudsman.jp/aonami/180921.pdf


名古屋市が当初56.5%出資して設立した第三セクターであるあおなみ線(名古屋臨海高速鉄道株式会社)は2004年度に開業しましたが、開業時の需要予測1日当たり66,000人に対して実際の乗車人員が約18,000人と、予測の約27%にしかすぎず、その後徐々に乗客は増えているとはいえ、2015年度で34,911人と当初の計画にははるかに及びません。

・平成22年5月 名古屋市住宅都市局
 名古屋市外郭団体改革プラン 【名古屋臨海高速鉄道株式会社】
 http://www.city.nagoya.jp/somu/cmsfiles/contents/0000030/30624/aonami.pdf
・平成 29 年 3 月 名古屋臨海高速鉄道株式会社
 あおなみ線経営戦略計画 (平成 29 年度〜31 年度)
 http://www.aonamiline.co.jp/pc/pdf/keiei2017.pdf
 
中部国際空港は2005年度の開業時が旅客数ピーク(1235万人)で、現在持ち直しているもののピーク時には及びません。
・2018年6月15日 中部国際空港株式会社
 2018年3月期決算説明会
 https://www.centrair.jp/corporate/ir/pdf/kessan_setsumei2018_3.pdf


現在、「中部国際空港二本目滑走路建設促進期成同盟会」(幹事団体:岐阜県、愛知県、三重県、名古屋市、名古屋商工会議所、(一社)中部経済連合会、中部国際空港(株))が国や与党に働きかけを行っています。
https://www.pref.aichi.jp/soshiki/kouku/h28-8nihonmedoumeikaiyoubou.html

河村市長は「名古屋からセントレアへのアクセスをちゃんとするのは重要で、まず検討する組織を立ち上げたい」としました。

ただ、あおなみ線終着駅の金城ふ頭から、名鉄新舞子駅まで橋かトンネルでつなぐとなると数百億円の費用が見込まれます。
過去、1990年代、2004年に名古屋市が延伸試算をするも、とても採算が合わないと結論づけたと言います。
しかも、新舞子駅からは名鉄を利用することになりますが、名鉄としては18/9/22中日新聞の取材に対し「本件は、当社としては関知しておりません」とコメントしました。
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2018092102000278.html

18/9/27読売新聞によれば、山本亜土・名鉄会長は「すごいカネを使ってあそこまで海底トンネルを掘ってやる必要があるのか。名鉄常滑線の輸送力は、(空港の)滑走路が2本になって発着が増えても十分に運べる。中部空港駅にはホームが4本あるが、今3本しか使っていない。」と否定的な見方をした上で、「名鉄には(市から)何の問い合わせもない」と不快感を示しました。
https://www.yomiuri.co.jp/local/aichi/news/20180927-OYTNT50131.html

また河村市長のいつもの思いつきをぶち上げたのではないか、また関係各所と調整がつかず頓挫するのではないか、職員が疲弊するだけなのではないかということを危惧します。
名古屋市民オンブズマンとしては、過去の需要予測や延伸試算を情報公開請求するとともに、今後何が出来るか考えます。


あおなみ線 今後の「施設・設備投資計画」ほぼ不開示

河村たかし名古屋市長は、名古屋市が最大出資者である
3セク鉄道「あおなみ線」でSLを走らせようと市議会に
提案しており、議会でも議論されています。

しかしそもそも初年度当初予測の22.0%しか乗客が乗っておらず、
大赤字の補てんに巨額の税金をつぎ込んだあおなみ線について、
今後の車両更新・設備投資などの具体的計画はどうなっているか
など全体を見据えた議論をすべきではないかと考え、
名古屋市民オンブズマンは、名古屋臨海高速鉄道(株)に
問い合わせたところ、平成25年度取締役会(平成26年3月31日)に
資料が掲載されていると聞いたため、情報開示申し出をしたところ、
平成27年2月26日づけで文書等の一部公開のお知らせが出ました。
http://nagoya.ombudsman.jp/data/150226.pdf

文書等の一部を公開しない理由 
・公にすることにより、意思決定の中立性が不当に損なわれると認められるため。 
・公にすることにより、会社の財産上の利益を不当に害するおそれがあると認められるため。 
・公にすることにより、会社の経営上の正当な利益を害するおそれがあると認められるため。

これでは具体的なことが何も分かりません。あおなみ線の今後を
市民が議論できるよう、資料を公開することを望みます。
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平成26年3月31日名古屋臨海高速鉄道株式会社
あおなみ線第三次5カ年計画(経営戦略計画(26〜28 年度))
http://www.aonamiline.co.jp/pc/pdf/kaizen2014.pdf

平成23年1月18日 愛知県包括外部監査人 伊藤倫文弁護士
地域振興部交通対策課及び同課が所管する出資法人にかかる
財務に関する事務の執行について 〜リニモ事業を中心として〜(概要)
http://www.pref.aichi.jp/0000037171.html
あおなみ線支援 市民への予算編成過程公開時には「検討中」

あおなみ線を運営する名古屋臨海高速鉄道(株)が10/7/6に 事業再生ADRを申請しましたが、10/1/12に市民に対して 予算編成過程の公開した時点では具体的な支援額は「検討中」と なっていたことが、名古屋市民オンブズマンの調べで 分かりました。
http://www.city.nagoya.jp/_res/usr/c/075/933/010.pdf

河村たかし市長のマニフェストに基づき、予算編成過程の 情報を名古屋市としては初めて公開して市民の意見を 募集しました。
http://takashi-kawamura.com/pdf/nagoya/20090404.pdf
しかしながら、あおなみ線支援に関しては「検討中」と なっていたため、市民からの意見は1件もありませんでした。
http://www.city.nagoya.jp/shisei/zei/yosan/yosang/h22/tosho/nagoya00077245.html

市議会で議決されたH22年度予算によれば、経営改善等を 図るため第三セクター等改革推進債を146億5200万円 発行することになっています。
http://www.city.nagoya.jp/_res/usr/c/081/515/019.pdf
うち、名古屋臨海高速鉄道(株)の経営改善のため、損失補償の履行 124億6100万円を用いるとのこと(その余は城西病院救済へ)。
http://www.city.nagoya.jp/_res/usr/c/081/515/020.pdf
また、名古屋市が貸していた266億5800万円、 愛知県が貸していた39億8200万円を株式化するとのことです。
(名古屋市 平成22年2月議案 59号議案で議決済み
さらに現金出資として16億6400万円(愛知県は3億3600万円]を 見込んでおり、合計407億8300万円を支援するとのことです。 (それとは別途、支払利息等補助2億7654.8万円を予算計上]

これまで、名古屋市から出資金として88億7100万円、補助金として 76億7200万円を出しています。 出資金は100%減資するとのことです。

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 名古屋臨海高速鉄道(株)への名古屋市の関与(これまで)
 (平成22年3月12日名古屋市議会都市消防委員会説明資料 より)
  @ 出資金  88.71億円
  A 補助金  76.72億円
  B 貸付金 278.46億円
     合計  443.89億円

 今後の名古屋市の支援内容
  C 損失補償     124.61億円
  D 現金出資      16.64億円
  E 貸付金の株式化 266.58億円
     合計       407.83億円

 これまでと今後の合計 585.14億円(重複分を除く)

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名古屋市財政局資金課長に問い合わせたところ、第三セクター等改革推進債を 発行するには総務省の許可が必要であり、7月末を目途に申請予定で、 9月末に許可が下りる予定とのこと。
改革推進債は許可が下りてから年度後半に発行予定だが、返済年限は 基本10年でまだ調整中とのことです。
なお、損失補償の期限が2010年10月、11月であり、名古屋市にお金がなければ 改革推進債を充てたいとのこと。(現時点ではまだ支払っていない)

今後莫大な支援をしますが、これで経営が健全化されるのか不明です。 2次破綻の心配もあります。

H22年度、名古屋市は市民税減税により、161億円の減収が 見込まれています。
http://www.city.nagoya.jp/_res/usr/c/081/483/22yosannoaramashi.pdf
それに加えてあおなみ線を支援するのに124億6100万円の 借金を新たに発行するのがふさわしいのかどうか、 市民に広く意見を募集することが、本来の「予算編成過程の 公開」の主旨だったのではないでしょうか。

なお、第三セクターに対する損失補償契約は 財政援助制限法3条に違反し違法無効である、という 判決があります(平成18年11月15日横浜地方裁判所)。
http://www.ombudsman.jp/3rd-sector/index.html
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070719103746.pdf
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=01&hanreiNo=33814&hanreiKbn=04

現在、名古屋市民オンブズマンとして、損失補償契約の 内容や、第三セクター等改革推進債の内容について 情報公開請求し、今後の対応を検討したいと思います。
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名古屋市 平成22年度予算(平成22年1月12日現在)
http://www.city.nagoya.jp/_res/usr/c/075/933/010.pdf
 名古屋臨海高速鉄道株式会社の経営改善 検討中   市からの継続的な経営支援なしで会社が自立的な   経営を行えるような改善策の実施

・あおなみ線(名古屋臨海高速鉄道(株))
http://www.aonamiline.co.jp/cgi/index.asp

・名古屋市 平成22年2月議案 第59号議案
 財産の出資について
http://nagoya.ombudsman.jp/data/aonami266.pdf
・平成22年3月12日 名古屋市住宅都市局
 名古屋市議会都市消防委員会説明資料 
http://nagoya.ombudsman.jp/data/100312.pdf

09/6/22 リニモ会社 愛知県出資50%超なのに情報公開請求できず

愛知県などが出資し、リニモ(東部丘陵線)を運行する愛知高速交通(株)の 経営改善のため、愛知高速交通は平成21年3月24日づけで減資後増資しました。
http://ameblo.jp/atackey/entry-10279702761.html

増資後、愛知県の出資割合が55.69%と50%を超えたので、情報公開要綱に基づく 情報公開請求ができるかと思い、愛知県県民生活部県民総務課に問い合わせてみました。
答えは"No"でした。

理由:愛知県情報公開条例27条では、確かに出資法人等について情報公開が  推進されるよう指導する等義務づけられている
 (出資法人等の情報公開)
  第27 条 実施機関は、県が出資する法人その他県が財政的援助等を与える法人等の うち実施機関の規則で定めるもの(以下「出資法人等」という。)について、 その性格及び業務内容に応じ、出資法人等の保有する情報の公開が 推進されるよう、出資法人等に対し指導する等必要な措置を講じなければ ならない。
http://www.pref.aichi.jp/cmsfiles/contents/0000000/699/jouhoukoukaijourei.pdf


 しかしながら、規則では、出資50%以上でかつ「知事が行う事務又は事業に関する  業務を行うもの」となっており、リニモは知事の行う事務ではない(軌道法)ので、  たとえ現在一時的に出資が50%を超えたとしても、対象とならず、指定していない。

 (条例第27条の実施機関の規則で定める法人等)
  第15条 条例第27条の県が出資する法人その他県が財政的援助等を与える法人等のうち実施機関の規則で定めるものは、次に掲げるもので知事が指定するものとする。      (1) 地方自治法(昭和22年法律第67号)第221条第3項の法人のうち、知事が行う事務又は事業に関する業務を行うもの
     (2) 前号に掲げるもののほか、県が財政的援助等を与える法人等のうち、知事が行う事務又は事業に関する業務を行うもので、当該法人等の保有する情報の公開を推進することが必要であると認められるもの
http://www.pref.aichi.jp/cmsfiles/contents/0000000/699/jouhoukoukaikisoku.pdf

私は、「愛知高速交通の社長は、愛知県知事ですよね。知事が行う事務ではない、というのは おかしくないですか。」と聞いたところ、「リニモ運行は知事が行う事務ではない」と繰り返すばかり。 また、「出資50%以上で、要綱を作っていないところはありますか」と聞いたところ、 「愛知高速交通のみです」との回答。
「愛知高速交通に関し、愛知県が保有している情報は、愛知県に情報公開請求可能です」と 説明がありましたが、私は「愛知高速交通が持っている元資料が見たいのです」と 答えました。

参考までに名古屋市にも聞いてみましたが、規則第20条では、出資比率50%以上すべてが 対象でした。
http://www.city.nagoya.jp/shisei/jyoho/jyoho/kitei/nagoya00003240.html 

莫大な赤字を垂れ流しているリニモの失敗の一つに、市民の監視の目が届かない 体制があるのではないかと思います。
全てを情報公開し、今後リニモの運行を続けるのがよいのか、廃止するのがよいのか、 その他の方法があるのかなど市民の議論が必要だと思います。
−−− ・愛知高速交通(株)
http://www.linimo.jp/


09/1/27 リニモ 愛知県による長期収支見通し(試算) 入手

2005年に開かれた愛知万博の際のアクセスとして活躍した リニモ(東部丘陵線)の経営大不振を受け、愛知県は100億円程度の 増資が必要と訴えているとの報道がありました。

元資料を情報公開請求しようとしたところ、任意提供していただきました。
http://nagoya.ombudsman.jp/data/linimo0901.pdf

平成20年度上半期の乗客は1日当たり17,700人と、需要予測の 約60%にすぎません。

本来であれば約278億円の長期借入金相当の「増資」が必要であるが、 当面(5年間)の債務超過を回避するため、100億円程度の増資が必要、と 県はしています。

しかしながら、「リニモの存続が不可欠との共通認識はある」という点が、 納得いきません。 また、今後も毎年5%ずつ乗客が増えていくという甘い需要予測をしています。

愛知県は、リニモの経営が悪化していることを知っておきながら、今回 はじめて情報を出して、各地に支援の依頼をしています。 「100年に1度の経済不況」の中、今後増資を重ねてリニモを存続 させるのか、それともリニモを廃線にして代替手段を検討するのか、 そこから議論すべきではないでしょうか。


リニモ「パークアンドライド」より先にすべきこと

05/11/3、愛知工業大学で「リニモを活かした地域づくり・地域交通のためのフォーラム 講演と懇談のつどい」が開催され、参加してきた。
会場には100名を超える参加者にあふれ、一見活気があるように見えた。
 県の担当者、リニモを運営する第3セクター「愛知高速交通株式会社」の担当者、そして大学の先生が順番に話していった。日本初常電動吸引型磁気浮上式リニアモーターカーである、東部丘陵線(リニモ)は、延長8.9Kmに998億円をかけ、愛知万博に間に合わせるように2005年3月に開業した。需要見込みは1日31、500人で、万博期間中は約106、000人(実績)と万博輸送には威力を発揮した。しかし、万博終了後の現在、9月26日から10月31日まで1日当たりの平均は11、000〜12、000人と、見込みの1/3程度でしかない。
 今後のリニモの活用を、特に「パークアンドライド」を用いてNPOとともに検討していこう、という企画のはじめの集まりであった。「パークアンドライド」とは、「交通の混雑する地区の周辺で、駐車場に車を停め、公共交通機関に乗り換えるシステム」のことであり、今回は「万博会場駅」北側に設置する駐車場(約40−50台分程度)に周辺地域からくる自家用車を止め、リニモを使って名古屋方面に通勤・通学してもらおうという計画である。
 しかし、ちょっと考えれば分かるが、当初見込みと現在の実数の差は約2万人である。50台程度のパークアンドライドが仮にうまくいったとしても微々たるものであり、やらないよりはまし、という程度である。
 講師の大学の先生は、予測と実数の乖離を、そもそも地域の人のニーズからリニモが出来たわけではないため、と発言した。リニモをけなすことはいくらでも出来るが、「1、000億円の贈り物」と表現し、せっかくできたのだから活用する方法を地域の人とみんなで考えよう、と締めくくった。
会場に来た多くの参加者は、万博のボランティア経験者か、「万博の環境配慮の理念をいかにリニモに活かすか」などの発言が多かった。唯一、私が「将来の料金値上げの見通しは?」と質問し、「計画では5年で10%となっていますが、その通りになるかははっきりしません」と回答を受けた程度である。
 奇しくも、11/3の中日新聞朝刊に、愛知県は小牧市にある新交通システム「桃花台線」が存続困難と判断し、年度内に結論を出す、との記事が載った。桃花台線は見込みが1日12、400人に対して約2、500人しか乗っておらず、累積赤字は64億円に上る。しかも、高架の撤去費用が100億円程度かかる見込みとか。学者や担当者を交えた「桃花台線のあり方研究会」が開かれ、磁気誘導式無人バスの導入が提言されたにもかかわらず、検討委の予測より数億円ふくらんだため、運賃が現在の倍程度にふくらむ見通しで、事実上存続は困難と判断したという。
 リニモも桃花台線と同様の運命をたどるのではないか。元は海上の森に団地を造る計画で、その需要を見込んだリニモ計画であった。団地造成計画を断念した時点で、リニモ自体も抜本的見直しをすべきであった。今は、まず今後の需要の見通し、資金計画を積極的に情報公開し、学者、地域住民、行政、NPOらが「リニモのあり方研究会」を開き、今本当に住民がリニモを必要としているか、運行する場合の追加税負担はどの程度になるのか、廃止も含めた議論を今更ながらするべきではないか。桃花台線の二の舞は避けなければならない。
          (内田隆)
・東部丘陵線
 http://www.linimo.jp/
・愛知県企画振興部交通対策課
 http://www.pref.aichi.jp/kotsu/index.html
・リニモを活かした地域づくり地域交通のためのフォーラム
 http://www.vns.npo-jp.net/linimo/
・桃花台線のあり方検討会
 http://www.pref.aichi.jp/kotsu/peach/top.html

リニモを包括外部監査のテーマに

以下の文書は2002年頃に名古屋市民オンブズマン名で、包括外部監査人に送付した資料です。2005年の万博開催にあわせてリニモができてしまいましたが、今こそ当時の指摘が生きてくるのではないでしょうか。

包括外部監査の対象に東部丘陵線を取り上げることを望む

名古屋市民オンブズマン

東部丘陵線は
1.機種選定がずさん
2.需要予測がずさん
3.収支予測がずさん
なので包括外部監査のテーマとすることを望む。

はじめに
 東部丘陵線は平成4年1月の「運輸政策審議会答申」において、「中量軌道系の交通システムとして2008年までに整備することが適当である路線」として位置づけられた。平成12年2月には「愛知高速交通株式会社」が設立され、資本金81億円のうち愛知県が30.9%、名古屋市が9.3%出資している。現在開業予定時期を平成16年度末に定めて建設中である。しかしながら、1.機種選定 2.需要予測 3.収支予測の点から疑義があり、採算性にきわめて不安が残る。包括外部監査のテーマとすることを望む。
1.機種選定がずさん
本東部丘陵線は、世界初の実用化HSST(磁気浮上システム)である。平成10年3月に開かれた「東部丘陵線都市モノレール等調査委員会」によって、磁気浮上システム、跨座式モノレール、新交通システムのどの3機種によっても、事業化の見込みがあるとされた。平成11年7月に開かれた「東部丘陵線導入機種選定委員会」で、当地域には磁気浮上式システムが投入機種として最適であるとの提言が出て、HSSTに決定された。しかしながら、3機種の比較をした表
【別紙1】(H12.10.15 愛知万博検討会議資料より)をみても、どうしてHSSTが総合評価で1番であるかはっきりしない。経費で見ると跨座式モノレールの方が安いし、環境に配慮するのなら動力費が一番高いHSSTを選定するのは不自然である。平成元年から4年にかけて大江実験線でHSSTの技術的調査があり、当初からHSSTに決まっていたと考えるのも不自然ではない。

2.需要予測がずさん
平成3年度−5年度に行われた「第3回中京都市圏パーソントリップ調査」から東部丘陵線の予想需要をはじき出している【別紙2】。同様な事業との比較として、他府県のモノレール事業の比較表がある【別紙3】(平成12年度の沖縄県包括外部監査のデータより)。それによれば、各社ともパーソントリップ調査を用いて需要予測をしていたにもかかわらず、東京モノレールを除き、各社とも計画利用客数と達成率との間に大幅な乖離(34.9%-67.1%)が生じている。地元では、小牧のピーチライナー(平成3年開業)は平成10年度に需要予測の23.5%、11年度は20.6% 、12年度が18.3%である【別紙4】(H13.10.2愛知県議会企画環境委員会答弁)。また、それによると東部丘陵線の利用見込みの5割弱が学生・生徒と推計されているが、「東部丘陵線沿線公共交通体系検討協議会」には実際の利用者の代表である学生が入っていないどころか、アンケートもとられていなかった。現在、第4回中京都市圏パーソントリップ調査が実施されている(平成13年度−15年度)がどのくらい正確なのかわからない。過去のパーソントリップ予測と実際とのずれをもっと認識すべきだし、直近の予測データを素早く事業に反映すべきである。なお、平成14年4月17日に開かれた愛知県議会企画環境委員会と大学関係者との意見交換会の席上で、学生・生徒、教職員アンケート調査結果概要<速報>【別紙5】が配布されている。前提条件が現行路線バス並み運賃とあり、特許申請時とは異なっており、詳しい情報を開示した上での全数アンケートが望まれる。

3.収支予測について
愛知県高速交通株式会社は平成12年12月20日に国土交通省(旧運輸省)鉄道部都市計画課に特許申請を行った際の「東部丘陵線(藤ヶ丘〜八草)の損益収支計算書」が情報公開法により公開された【別紙6】。同時に公開された収支算定要領【別紙7】によれば、初乗り運賃は平成10年価格で200円(2区以降2キロ増すごとに60円加算)、運賃上昇率は5年ごとに12%の運賃改定を行う、とある。各駅間の距離から全運賃表を独自に試算してみた【別紙8】。開業30年目には初乗り440円、藤ヶ丘−八草間が970円と試算され、利用する側としては非常に高額であることがわかった。
また、需要予測に基づく運輸収入が損益収支計算書に載っているが、需要予測を下回る運輸収入の場合の損益収支計算書を、想定料金はそのままで独自に試算してみた【別紙9】。利用客見込が20%乃至30%程度の狂いが生じただけで、106億円乃至159億円もの巨額な資金不足が生じてしまうのである。一般に民間企業であれば、かかる巨大な資金不足が生ずる事業の継続は、事実上困難と解される。本事業継続に当たっては、この資金不足問題を現実的かつ具体的にどう対応していくべきかが、早急に検討されなくてはならない。

以上

別紙1−9(一括)
http://nagoya.ombudsman.jp/data/HSST-1-9.pdf
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