25/6/27(金)手書きメモ、資料は回覧、ネット中継なし…これが2025年の愛知県議会委員会?
「えっ、今どきネット中継なし?」
あなたの県議会、DX化から取り残されていませんか?──
愛知県議会では、今も委員会のネット中継は一切ナシ。
2025年にこんな実態が残っていること、ご存じでしたか?
▲地方議会では重要なことが審議される
地方議会では、首長(知事・市長)が提案した予算、条例などを審議し、可決しないと予算執行されませんし、条例も公布できません。
2025年度愛知県当初予算(一般会計)は2兆9413億円にも及びます。それらを審議しているのが愛知県議会なのです。
地方議会は「委員会」制度をとっており、それぞれの委員会(経済労働、総務企画 など)で審議されます。
その他、住民からの請願、議員提案の政策条例なども審議される重要な場です。
ほとんどの地方議会は平日昼間に行われます。
本稿では、名古屋市民オンブズマンの傍聴体験を通じて、愛知県議会委員会の「非公開体質」や時代遅れの運営実態をレポートします。
▲【問題提起】DX時代に取り残された愛知県議会
本会議は公開が義務付けられています(地方自治法115条)。
委員会も傍聴は規則で可能となっていますが、愛知県議会はまだオンライン配信は行っていません。
傍聴定員は10名です。
▲【比較】名古屋市議会はここまで進んでいる
隣の名古屋市議会は、本会議と委員会をオンライン配信しています(議会運営委員会を除く)。
録画中継の配信は、本会議・委員会のあった日の2日後(土曜・日曜・祝日除く)から1年間行われます。
いつでもだれでもオンライン配信・録画を見ることができます。
▲【DX】議会オンライン配信の活用方法
平日昼間に役所で行われる本会議・委員会は、いくら重要なことが審議されるといっても毎回現地で傍聴するのは大変困難です。
しかも、委員会は数時間行われることが多く、ずっと拘束されるのは大変です。
行政のチェックを行う名古屋市民オンブズマンは、特に名古屋市議会の本会議・委員会は、オンライン配信をパソコンで見てデスクトップ録画を行い、スマホで自動文字起こしを行っています。
必要な部分があるかどうかを文字起こしで判別し、必要な部分だけ録画と照らし合わせて文字起こしを完成させます。
このように行えば、圧倒的に時間を節約できるだけでなく、複数の委員会も「傍聴」可能となります。
▲【現場レポート】傍聴してわかった驚愕の実態
愛知県議会の委員会を傍聴しようとする人は、開始30分前までに県議会議事課に集合して受付を行います。
定員10名を超える場合は抽選になります。
他の委員会傍聴者も同時に集合し、全部で十数名が控室にいました。
愛知県議会委員会の重要性を認識し、熱心に傍聴する人はいるのです。
▲【謎】どの委員会でどの条例案がいつ審議がされるのか?
愛知県議会で審議される予算案、条例案の名称はわかっています。条例案がどの委員会で審議されるかもわかっています。
しかしながら、委員会は複数日開かれ、どの条例案がいつ審議されるかはホームページを見るだけではわかりません。
今回、経済労働委員会を傍聴することにしました。
傍聴希望者は2名。無事傍聴が可能となりました。
▲【手書きメモのみ】いまどき傍聴者はパソコン使用を認めず
傍聴者には「傍聴人心得」なる書類が配布されます。委員会では写真・録画・録音は禁止。パソコンの使用も認められていません。
飲食も不可。原則いったん退出したら再入室は認められないとのこと。
傍聴者は「手書き」で審議内容をメモすることになります。
▲【閲覧のみ】傍聴定員10名に資料は3つ!しかも持ち帰り不可
県議会職員が「傍聴人心得」を読み上げたのち、「傍聴定員は10名ですが、資料は3つしかないので、傍聴者間でご協力ください。また、資料は回収するので持ち帰らず机においてください」と述べました。
私はびっくりし、県議会職員に「傍聴者資料についてはどこに書面で書いてありますか」と聞きました。
県議会職員は色々調べ、『委員会における傍聴者用資料の充実について』という書類だということが判明しましたが、情報公開請求してほしいとのこと。
なお、名古屋市議会は傍聴者用の資料は、傍聴者に人数分配布してあり、持ち帰りも可能です。
名古屋市議会・愛知県議会とも、議案資料は情報公開窓口で閲覧可能で、コピーもできますが、愛知県議会はあまりにも不親切です。
なお、一部議会では、委員会配布資料もネットで公開しているところがあります。
・2025年6月27日(金) 愛知県議会経済労働委員会 傍聴者配布資料(持ち帰り可のもの)
▲【健康被害】傍聴者「委員会で水が飲めないから脳梗塞で倒れた」
委員会開催を待っている間、別の傍聴者と話をしました。
「半年前に自宅近くで倒れた。脳梗塞だった。今もあまり大丈夫ではない。愛知県議会委員会を傍聴する際は水も飲めない。だから脳梗塞になったのではないかと思っている」とのこと。
ネット中継がないことは命にかかわります。
▲【個人情報】氏名・住所が書かれた傍聴者申込書を県議に回覧?!
県議会職員に連れられて委員会室に入ったところ、定刻通りに委員長が開催を宣言しました。
まず、「傍聴希望者が2名いるので許可することとし、傍聴者申込書を委員に回覧します」と述べました。
私が受付で氏名・住所を書いた傍聴申込書が委員(県議)に回覧されました。特に事前に話も聞いていませんでした。
▲【学芸会】県議13人、県職員約70人の『朗読会』
愛知県議会経済労働委員会は2025年6月27日(金)午後1時から行われました。
前に県議の委員が13名半円形テーブルに座ります。対面に局長級、部長級、課長級の順番で7列で座ります。県職員は9割ほどが男性でした。
審議は、県議が書類を読んで発言し、県職員も書類を読んで回答します。再度県議が書類を読んで発言し、県職員も書類を読みます。
片山善博・元鳥取県知事は、「原稿を読み合う『学芸会』」と言って多くの地方議会の在り方を批判しましたが、まさに愛知県議会の委員会もそうでした。
私は『学芸会』というより『朗読会』ではないかという感想を持ちました。
読んでいる文書の内容はそれなりにしっかりしているので、傍聴2人だけが聞いているのはあまりにももったいないと思いました。
マスコミ席もあり、2名が傍聴していたようです。
▲【かすかな希望】「委員外質問」と「原稿なしのやり取り」
いつまで『朗読会』が続くのだろう、、、そんな感想を破る出来事が2つありました。
「委員外質問」として井上しんや県議(減税日本)が許可され、カスハラ条例について書類を読んで質問していました。「委員外質問」をするだけあって、熱心に聞こえました。
議案に限らない「一般質問」に入り、直江弘文県議(自民)は「日本は生成AIを活用しないとアルゼンチン化する。プロンプトエンジニアを養成しないと」と熱弁をふるい、経済産業局長、労働局長が(多分原稿なしで)自分の言葉で話していました。
これらがあると、委員会が活性化すると思います。
なお、午後1時からはじまった経済労働委員会は10分休憩をはさみ、午後4時05分に終了しました。
補正予算案、議案はすべて可決されました。
資料(100ページ以上の冊子)は持ち帰りは不可でした。
▲【議事録】議事録は数か月後にしか公開されず、しかも要約
委員会の議事録は数か月後にしか愛知県議会のホームページで公開されません。しかも「要約」なので、議員の生の発言が見えてきません。
現在、AIを用いた文字起こしは安価にすぐできるので、全文を即掲載することも技術的には可能です。改善を求めます。
▲【変化なし】委員会傍聴のありかたは24年間変わらず
愛知県議会委員会の傍聴は、2001年までほぼ認められませんでした。
全国市民オンブズマン連絡会議が1998年8月22日に発表した「98年度議会情報閉鎖度ランキング」で愛知県議会の点数は大変低いものでした。
2001年2月14日の愛知県議会議会運営委員会で「委員会の一般傍聴については、委員会条例に基づき、委員長判断により原則として認める扱い」とすると決めました。
(この日は特別に傍聴が許可され、私も傍聴した記憶があります)
あれから24年。愛知県議会は全く変わっていませんでした。
▲【改善の兆し】「動画配信を求める請願」登場
愛知県議会で審議される条例案、請願一覧を見ていたところ、「愛知県議会委員会の動画の配信、当日資料の改善を求める」請願が出されていたことが判明しました。
請願書自体は、愛知県自治センター2階の情報コーナーに閲覧されており、コピーが可能です。
請願者の住所・氏名もそのまま載っています。(氏名・住所は消してアップします)
県議会事務局に聞いたところ、「7月4日(金)11時半からの議会運営委員会で審査予定」と教えてくれました。
▲【あなたにできること】
このような愛知県議会のあり方は、24年間変わっていません。
たまに愛知県議会委員会の傍聴に行きますが、こんなに詳細に委員会の様子を書いたのは初めてです。
県民・市民の重要事項が、このような議会で審議されていいのでしょうか。
こんな議会のあり方、変えていけるのは「外から声を上げる私たち」だけです。
何か一つでも、あなたにできることから始めてみませんか?
あなたに出来ることをあげます。
・まずこの文書をSNSなどで拡散してみませんか
・地元の県議に、どうなっているか問い合わせのメールをしてみませんか。
・他県議会・他市議会の状況を調べてみませんか
・友人と上記について話してみませんか
・2025年7月4日愛知県議会運営委員会に注目してみませんか
・一度県議会委員会に傍聴しに来ませんか
・今後どうすればよいか、一緒に考えてみませんか。
☆愛知県議会
◆名古屋市民オンブズマンにカンパを
名古屋市民オンブズマンの活動はすべて、市民の皆さんのカンパで支えられています。
これまでも、情報公開請求によって議論の可視化に貢献してきました。今後も制度改善を県議会訴えていきます。
国も自治体も、企業も支援してくれません。だからこそ、あなたの一歩がこの運動を前に進めます。
皆様方のカンパが頼りです。以下リンクからカンパのご協力をお願いいたします。
なお、このままですと、来年以降、現在の事務局職員体制を維持することは困難となります
伏してご協力をお願いいたします。
-------
・名古屋市民オンブズマン 議会改革
・市民オンブズマン事務局日誌 議会改革
名古屋市民オンブズマン代表の新海聡弁護士は「名古屋市議会には政治倫理条例がないため、議員の『たが』が緩んでおり、しかも選挙が終わって『みそぎが済んだ』となっている。