22/3/31(木)名古屋城跡全体整備検討会議 文化庁指摘事項への追加回答 概ね了承
22/3/31に特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議(第48回)が開催されました。
録音・録画は今回も禁止されました。
・22/3/31 特別史跡名古屋城跡全体整備検討会議(第48回)配付資料
・名古屋市民オンブズマンによるメモ
今回、2021年5月に、名古屋市が提出した「現天守閣解体申請に対する文化庁からの指摘事項への回答」で、2021年度中に調査・検討を実施予定とした各項目について、調査・検討結果を報告しました。
1)天守台石垣の保存方針(案)
2)御深井丸側内堀石垣の保存対策
3)小天守西側石垣の修復した石垣における遺構の保存
それぞれ詳細に報告があり、概ね了承されました。
3)小天守西側石垣の修復した石垣における遺構の保存ですが、石垣部会から「石垣を近世以前に戻すのが妥当だ。明治以降の石垣をどうするのか、全体整備検討会議で検討してほしい。江戸時代の姿がわかった。このまま進めても史実に忠実にならない。江戸時代の本来の姿に戻すのがよいのではないか。それには大規模発掘が必要。」という意見が出たことが紹介されましたが、特に意見は出ませんでした。
2)御深井丸側内堀石垣の保存対策について、麓和善・名古屋工業大学名誉教授は「御深井丸側内堀石垣の修復は、仮設物設置前に行うとのこと。
私が他城郭の石材・石垣修理に関わってきた経験を踏まえて述べると、あまり神経質にならない方がいい。
・亀裂があったらどういう場合でも樹脂を使って修復する
・剥離 大きさにかかわらずなんでもする
ではなく、ある程度の大きさなら補修するという方針がいい。仮設物を作る前にやるなら、それほど時間もないと思う。 拙速に修理をしないようにしてほしい。樹脂を使うか使わないか 慎重に考えてほしい」としました。
また、赤羽一郎・元愛知淑徳大学非常勤講師は「石垣の過去修復ラインが本当なのか。また、石垣等遺構の上を重機が通るのに『レーダーで確認出来たから安全です』と言い切れるのか不安だ。石垣そのものの履歴を調べる必要がある。」と述べました。
麓教授は「今回の目的は『天守復元に向けての仮設計画で、石垣に対して損傷を与えない工法を選択するためにどうすればいいか』というもの。赤羽委員指摘の調査は、時間をかけて名古屋城全体でやった方がいい」と述べました。
小濱芳朗・名古屋市立大学名誉教授は「非接触工法は、上下の梁の支点に圧力が集中する。本来3次元モデルでないとだめ。石垣に悪さをしないため、圧力を分散させる方法を検討してほしい。」としました。
また、「天端のモニタリング設備等、なにか変状があったらわかるよう、常に監視ができるようにしてはどうか。」と述べ、名古屋城総合事務所は今後検討したいとしました。
1)天守台石垣の保存方針(案)は、2段階に分けて考えるとし、
@天守閣整備に関係なく現状、保存考える
A天守閣整備事業にあわせた保全の方針
の@の案を提案しました。
最後に、オブザーバーの平澤毅・文化庁文化財第二課主任文化財調査官は「名古屋市は現天守解体、復元の検討をこれからやると思うが、内容のみならず、実施上のプロセスの中で点検事項はたくさんある。検討を深めて、全体会議でも精緻な議論をしていただけたら」と述べました。
議題は上記で終わり、その後報告事項として、木造天守復元の全体計画策定に係る令和4年度の想定スケジュール、また名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募について報告があり、特に意見は出ませんでした。
最後に佐治独歩・名古屋城総合事務所所長から所長退任の挨拶がありました。
「この3年間で、解体に対する文化庁への現状変更許可申請を出し、それに対する文化庁への指摘事項の回答にめどがたちほっとしている。
『振り出しに戻った印象』もあるかもしれないが、現天守解体時に設置する仮設物の遺構への影響の分析もした。
今後の想定スケジュールにそって、着実に計画をまとめたい。
在任中、特別史跡を毀損する事故が発生したが、職員一同遺構を守る意識を持った。
今後も有識者の皆様には厳しくも温かい指摘をいただきたい」
--------
2022年度は、バリアフリー新技術の公募開始、木造天守復元を踏まえた石垣保存方針決定、基礎構造の方針決定、「解体と復元を一体とした全体計画」策定など、これまでの矛盾を何らかの方法で解決することが求められてきます。
はたして矛盾は解決するのでしょうか。
年度内に全体計画がまとまらず先送りになるのでしょうか。
矛盾はさらに広がり、収拾が付かなくなるのでしょうか。
なんらかの解決策が見つかり、文化庁復元検討委員会にかけられたとして、現天守解体と復元の現状変更許可が認められるのはいつになるのでしょうか。
また、解体のための仮設物設置をするために内堀を埋める前に、石垣・石材の補修が必要となりますが、それにどの程度時間がかかるのでしょうか。
莫大な労力と税金を投入してきた名古屋城木造復元事業。
2022年度も目が離せませんが、市民の関心は一層薄まっています。
一体誰の何のための事業なのか。市民の理解無くして事業は成功しません。
-----------
22/3/29(火)名古屋城跡バリアフリー検討会議委員「『大天守のより上層階まで上がれること』は平等の観点から最も重視されるべき」
22/3/29に、特別史跡名古屋城跡バリアフリー検討会議(第4回)が約2年半ぶりにWEBで開催されました。
録音・録画は今回も禁止されました。
22/3/29 特別史跡名古屋城跡バリアフリー検討会議(第4回) 配付資料
メモは後日アップします。
今回は、名古屋城木造天守の昇降技術に関する公募についてが議題となりました。
まず、これまでのバリアフリー関連の経緯を振り返りました。
名古屋城総合事務所は「本検討会議は、前回の開催後に『次回は公募開始の見通しを示して開催する』とした。前回から約2年半経過したが、この間、公募開始を見合わせていた。令和2年5月にバリアフリー法が改正され、歴史的建造物の復元に際してのバリアフリー整備のあり方における高齢者障害者等の参画などの社会的要請や、令和3年6月の文化庁からの指導による木造復元天守を実現するために必要な手続きへの対応による公募スキームの見直しを行ってきた」としました。
委員からは特に意見はありませんでした。
続いて公募についてスケジュール、目的、概要、今後の進め方を市が説明しました。
主な条件として、「大天守の柱・梁を傷めない」「少なくとも大天守1階に昇降できることとし、可能な限り上層階まで昇ることができること」としました。
また、新年度早々に公募開始、8月ごろ提案書を締め切り、提案書再提出後12月頃審査を行い、最優秀者選定予定(公募開始から約9ヶ月)としました。
また、「加点要求水準」として8項目挙げ、一定の基準を満たさないと最優秀者として選定しないとしました。
それぞれ構成員が意見を言い、名古屋城総合事務所が回答する形式になりました。
野々垣篤・愛知工業大学准教授は「『加点要求水準』8項目の重み付けは違うのか」と質問しました。
名古屋城総合事務所は「重み付けは、フラットの採点にしている」としました。
野々垣准教授は「バリアフリーの項目の評価によっては最優秀者云々がなんとなくクリアではない。しっかり応募する側の立場に立ったときの平等性が担保されていればいいと思う」としました。
三浦正幸・広島大学名誉教授は「建築士の立場から言えば、柱や梁を変更されると木造建築として成り立たないので問題は無い。加点要求水準は、『可能な限り木造天守の外観や内観を損なわない工夫がなされていること』『木造天守に使用されている木材を保護すること』これだけで十分。」としました。
磯部知彦・中部大学教授は「応募者によって、いいところと悪いところがある場合どうするのか。また、ステップなごやを作ったのなら、応募者に実験してもらいたい」としました。
名古屋城総合事務所は「最優秀の一社は決めたい。上層階まで行けるのなら組み合わせて昇ることも考えたい。障害者団体から、いろんな技術が入ると使いにくいのではないかということもあるので、なるべく技術の数を増やすことなくやっていきたいが、臨機応変に決めることも必要と考えている。階段体験館は、メーカーが使いたいと言うことなら使っていただきたい」としました。
高橋儀平・東洋大学名誉教授は「『加点要求水準』は網羅的に記述していただいたことは悪いことではないが、バリアフリー化するために何が最も重要かということはある。『大天守のより上層階まで上がれること』は平等の観点から最も重視されるべきだと思う。他と同等に評価するのは、評価基準としてはあまりにも漠然としているのではないか。優先順位を設けるべきではないか。
また、評価委員はバリアフリーの技術を評価できる人なのか。既に決まっているというが、どう評価するのか懸念や疑問を持つ。インバウンドの人がどう関与するのか。
さらに、バリアフリー法2020年改正で、文化財を復元するときの当事者参画、高齢者障害者等の参画の話がある。検討の場を設けることになったが、今日の会議には当事者が構成員に入っていないのは大問題ではないか。
評価委員の構成メンバーにも1名は代表者として当事者を入れる必要があるのではないか。利用者は事務局を介して意見する形だが、これを参画と呼んでいいのか。
また、評価委員の中には、バリアフリー検討会議の議論に参加していただいた方が加わる必要があるのではないか。」としました。
名古屋城総合事務所は「『加点要求水準』の優先順位は優劣を付けるのは難しい。何を重要視することは加味したい。評価委員の先生は、6名のうち障害者が2人は入っている。構成員の先生が評価委員になってはということだが、
名古屋城全体のバリアフリーについて。大天守の審査であるし、検討会議で意見を頂くので、別枠で先生を準備した。
技術相談員でバリアフリー検討会議の先生の中で一部協力いただくところもある。」と述べました。
高橋名誉教授は「『団体から意見が出てきたから優劣を付けられない』というのはちょっと無責任。何を重視するのかのは重要な要素。上層階まで上がれないことと、怖い思いをしないことが同列でいいのか。
外に公開し、市民のかたにどう受け止められるのか。評価委員に市民の人はいるのか。全くないのなら市民・権利者・納税者の人からすると少し違うと思う。いなければ加えるべきだ。ワークショップは公開か。」としました。
名古屋城総合事務所は「『加点要求水準』は評価委員の先生と相談して決めたい。評価委員に市民がいるかということかということだが、専門の有識者なので、一般の市民が評価するのは非常に難しい面があるのではないか。開発段階で市民から意見を頂く場は設けたい。ワークショップは非公開を考えている。最優秀者になるまでは秘匿をしたいというメーカーもある。技術の概要は公開できるところは公開していく。」
高橋名誉教授は「ワークショップが非公開なら、利用者はその場にはいないということか。いて非公開の議論が行えるのか。市内の障害者団体がどう関与できるのか。明確に公表しておく必要がある」としました。
名古屋城総合事務所は「障害者団体から参加していただき、事務局で技術をまとめて意見を交換すると考えている。」としました。
矢野和雄弁護士は「高橋先生の意見と重なるが、『加点要求水準』がフラットなのは理解できない。障害者団体と、どこを一番重視しているか突っ込んだ意見交換をしたのか。できるだけ上まで上がりたいというところは基本的なところとして強くあるのではないか。
また、『大天守の1階まで』が最低基準でいいのか。基準を設けた理由を教えて。
さらに、『参画』を実質化する仕組みにしてほしい。」としました。
堀越哲美・愛知産業大学学長は「『加点要求水準』の軽重は他でも事例がある。」としました。
名古屋城総合事務所は「ワークショップ等で高齢者障害者からの意見をどうフィードバックするかは、必要なことは場を設けて意見交換していきたい。1階までは、現状は外部エレベーターが1階まで来ている。そこで内部を見ていただける。内部は江戸期に復元する。大きな柱や梁の内部空間を実体験していただく。まずは1階まで昇降できることを少なくともということで最低要求水準とした。目標は5階までを求めていきたい。
柱や梁を取ると、文化庁の示す復元の基準もあるので、守りつつバリアフリーとするのは非常に高度な技術を有すると考える。」
矢野弁護士は「5階までということは、募集では示されない。『加点要求水準』でも全くわからない。公募の中にどうやって反映できるのか。協議会の場だけの発言に終わるのではないか。また、『バリアフリーと史実に忠実な調和を求める』はよく聞こえるが、回答を聞くとどこに調和を求めるのかは難しい。いろんな考えがある。バランスが取れているのか、正直なところ思うところがある。技術的に難しければ、上を断念するのかどうかは、価値判断となる。」としました。
渡辺崇史・日本福祉大学教授は「『加点要求水準』が同じ評価基準でいいのか。アクセシビリティーと、ユーザビリティが混在している。一番重要なのは『移動を保証していこう』というところ。優先すべきはアクセシブルなもの。基準をつけた方がいい。使い勝手がよくてもだれもアクセス出来ないのは意味が無い。ただ、アクティビティアクセシビリティという観点からいくと、移動はできるが楽しめないということがあると思う。
障害のある人の排除につながる場面もある。教育が入っていない。特別支援学校の見学、地域の学校で車椅子利用とか、行ったはいいができないとなると、排除につながることが考えられる。
史実に忠実は大事な論点だが、利用者の排除につながることはなってはいけない。どんな人がどのようにどんなタイミングで利用するかという観点から検討してほしい。
当事者団体はもちろんだが、教育などの人からも意見を聴いたほうがいい」としました。
名古屋城総合事務所は「『加点要求水準』について、多くの先生が言っているので検討したい。特別支援学校など意見を聴くことは大事。使いやすいもの、排除されないようにを頭に置きながら意見を集めたい」としました。
中嶋秀朗・和歌山大学教授は「全体という視点でみたとき、昇降技術、独立した別の技術として求めているように感じる。
最優秀者1社選定という書き方が、天守を建築する人が入っていない。
移動技術は、鉄道、ローラーコースターにしても、設備と車両で一つなので、天守を作る人とその上を走らせる人、全体像、お互い設備と両方から歩み寄ることで技術が楽になると思う。
天守の作りと一体、一体になって推奨していいのか公募動画を作るときにかいてあるので、公開する必要がある。
技術対話とか、天守を作る人とどういうタイミングで組んで開発するスキームなのか。やるべきなのか。組んでやらないと課題が難しくなる。
また、開発者が1回選ばれると、その中だけで進んでいくことが多い。バリアフリー検討会議が1社選定される過程、選定後にからんで意見を反映できる場所があってもよいと思う」としました。
名古屋城総合事務所は「建物と昇降技術が歩み寄るという指摘は、昇降技術だけでは建物の中に入れるのは難しい。公募期間中でも竹中と情報共有し検討していく。建物側との取り合いは非常に大事な部分となる。手を組んでやっていくのは話している。
開発の中で新しくなったり使いやすくなったりするものは取り入れていくべき。検討会議でも意見を頂きたい。」としました。
中嶋教授は「実際作る側が公募段階で明確に出しているのか、求められたらOKかは大きく違う。公募する側は、そっちまで触れないのではないかと思う。一緒にやる、問題ないということをはじめにオープンにすることが大事。」としました。
名古屋城総合事務所は「建物側の制約で昇降技術がいい物があっても入れられないのは避けたい。いいものなら建物側のやりとりは最初の段階からやっていきたい。パッシブではなくアクティブにやっていきたい」としました。
山田陽滋・名古屋大学大学院教授は「障害者はそもそも今の段階で納得しているのか」としました。
名古屋城総合事務所は「障害者団体からは最上階まで行きたいと求められている。柱や梁を傷めずにどこまでやれるのかというところも出てくると思う。なるべく使いやすい技術を説明して、より上層階まで求めていきたいと説明している」としました。
山田教授は「スパッと言い切れたらいいが、そういうわけではない。障害者の意見をわかった上でしているという理解でいいか。
ワークショップの時期は早めてほしい。公募の期限の前の技術相談の時期にしてほしい。ステートオブジアートだと言って納得させるのもロジックとしてはあると思うが、テクノロジーアセスメントをきちんと情報共有して、これ以上できないというアカウンタビリティーをあげるため、我々すらもわかっていない状況で出てきたものについて後でワークショップを開くのはおそらくガス抜きだろうと思われちゃう。提案の前にないとダメ。4階まではいけるが5階はだめという技術と、5階までは数人ならいけるかもという技術があった場合、皆さんで納得してじゃあどうするか、そこではじめて情報共有の価値が出る。
やらずに4階までという提案で止めて、後でワークショップやったらよろしくない。
我々も含めて技術のギリギリのところは関心が高い。ソリューションを与えるかは事前に考えてほしい。
専門家が提案するとしても、障害者のニーズをちゃんと取り入れて考えているかは、尋ねる障害者によっても変わる。」としました。
また、「階段体験館は最上階が模擬されているか」と質問し、名古屋城総合事務所は「1階から2階の階段を再現している」としました。
山田教授は「4階から5階も階段体験館で推し量れるのか」と質問し、名古屋城総合事務所は「階段の幅が変わっている。もう少し検証がいる」としました。
山田教授は「今から追加で作ってくれというわけにはいかないんですよね。技術相談は、Q&A集を集めて開示していってほしい。最優秀者を選定しないという話があると思うが、他の技術提案を入れることも考えているのか」としました。
名古屋城総合事務所は「組み合わせてできるなら、公募参加者同士の連携も出てくるので、可能ならばそういう提案でも大丈夫と思っている」としました。
山田教授は「そのときの予算は。くっつけると最優秀の方の予算が削られるとできなくなる場合は話は別」と質問し、名古屋城総合事務所は「予算は考えたい。1回今の予算でやっていく。」としました。
小野徹郎・名古屋工業大学名誉教授は「落としどころをどう考えるのかは難しい。全体計画を文化庁へ出すスケジュールとバリアフリーが並行しているのは、前から名古屋市には言っているが技術がある程度出てこないと上の計画が立たない。時期が重なるというのは、上を考えるのに引っかかって、関わるところは、柱梁などの主架構を変更しないというのが入っているだけで、応募者がきちっと新しい技術を提案できるのかが非常に不安に考えている。9ヶ月は短く、新しい技術を木造天守との兼ね合いで提案できるのか非常に心配している。『調和を求める』というのはいい言い方だが、どの辺に落としどころがあるのかという話しと、1階まで、最上階という話しまで出ていて、技術公募の中でどの程度応募者に内容が伝わるのか非常に心配。技術応募自体がいわゆるガス抜きの結果にならないかと心配している。」としました。
名古屋城総合事務所は「バリアフリーがクリティカルパスというか決まらないとという意見だが、9ヶ月、いろんな意見を伺いながら決めたい。意見交換しながら選定してきたい。何とかこうできればいい。ガス抜きと思われてはいけない。意見聴取・発信したい」としました。
川地正数・川地建築設計室主宰は「3点質問したい。
1)3つ項目で公募を受けるが、『地上から大天守地階までのバリアフリーは木造天守復元の設計・施工者にて別途対応予定』とあるが疑問。後出しじゃんけんにならないように公開すべき。
2)審査評価基準は曖昧・漠然としている。安全性と輸送能力に尽きると思う。
1日2万人と想定している。2016年実測調査では3割の車椅子を含む歩行困難者が1.1%いた。1日220人となる。時間帯によっては2%から4%。1時間7-80人の歩行困難者が来られる。相当混雑が予想される。2016年は75歳以上の高齢者が全体人口の13%くらいだが、2030年には20%ちかくになる。昇降設備の利用者が格段に増えると考えないといけない。一気通貫の昇降設備1台ではとても対応出来ない。何台か設置することでスムーズに対応できるシミュレーションを義務づけないと審査できないのではないか。
3)審査の柔軟性。2025年大阪万博でドローンタクシーが飛ぶかも知れないと言われている。発展のモビリティ技術が進化していく。令和4年度できるのではなく、その後の技術に対して対応出来る審査にしていく必要がある」としました。
名古屋城総合事務所は「1)はそのとおりなので、必要に応じて決まった段階でオープンにしたい。
2)輸送能力について、まずは技術がどのようなものが提案されるか見てみて、対応出来るか決めたい。その後どれくらいの能力があるか、管理計画で待ち時間が長くなるようではいけない。
3)は竣工までにバリアフリー環境を向上できるなら導入できればしたい。」としました。
小浜芳朗・名古屋市立大学名誉教授は「安全基準をどう考えているのか。特に緊急時の対応策が考えられていないと、移動手段としては問題がある。
最低限の要求で『史実に忠実』は柱や梁を変更しない、取り外して元の状態に戻すとあるが、最低限の制約が出てくる。応募者に明確にしないと、これはできなかったということになる。重量が一定程度以下でないと補強が必要となる。柱梁の配置による設備の大きさなど、専門的な知識が必要じゃないかと思う。福祉施設の設計とか、福祉機械の設備では難しい。公募にあたってどう応募者に伝達されるのか。せっかく応募しても『こんなはずじゃなかった』ということにならないように」としました。
名古屋城総合事務所は「緊急時の安全性は、評価の項目になっている。地震、災害時にフェイルセイフの提案もしていただく。評価はこれから許可認可を取っていく技術もあると思う。安全性が担保できるように、一緒になって許認可も対応していきたい。認証機関のアプローチもはじめている。応募者が理解できるかということは、どういう構造かは理解できないと優れた提案が出てこないと思う。希望される人には守秘義務を結んだ上で設計図の図面を渡すことを考えている」としました。
小浜名誉教授は「開発者がイメージできるような図面、構造的な条件、重量的な問題が大きいと思う。公募時に伝えてほしい」としました。
小松義典・名古屋工業大学大学院准教授は「『可能な限り健常者の移動と同じような時間で移動』と『多人数による反復した利用が可能』がうまく飲み込めなかった。時間当たりの輸送人数を確保するという意味と、障害者が待ちたくないことと重なって書かれている。
提案する方からすれば、1時間当たり200人輸送しないといけないという基準が示されている方が明確。基準と書いているが項目。どういう基準で評価するかは書かれていない。地下階まではエレベーターが想定されているのか。現状だと外にエレベーターが別途付いている。今回は許容するのか。ああいう形はないと示すのか。主架構は変更しないとしても、外壁は穴開けてもいいのか。ちゃんと言った方がいい。
現状のエレベーターエスカレーターは10年くらいしか持たない。更新するわけで、外壁を壊さないと更新できないものでもいいのか。火災等非常時にどう機能できるかは性能条件」としました。
名古屋城総合事務所は「『加点要求水準』の『移動時間』は『健常者と一緒になって移動できる』も入ってくる。総合的に見ながら搬送能力も見ながら相対評価になる。地上から1階までのバリアフリーは、今は大天守1階までつながっている。設計施工者で別途対応は大天守地下1階まで。地上から小天守に入り、橋台で渡って地下1階にはいる。そこまでのバリアフリーは木造復元の設計施工者が対応するということ。
エレベーターは外部あるが、大天守1階につながっているので今回は対象外。
緊急時安全基準は大事なのでしっかりと出てきた技術に対応したい。
維持管理も、費用面について概算を公募の段階でいただく。もちろん検討項目にいれる。
大がかりな工事をしないとリニューアルができないというのはダメと考えている。」としました。
西形達明・関西大学名誉教授は「『大天守の柱梁は傷めない』『可能な限り上層まで登れる』の2つで応募者に意図が伝わるのか。要求水準が10項目ある。安全性・輸送能力というキーワードがある。ある程度応募者に示さないと、十分な条件をそろえた者が集まるのか。
開発費用、導入費用についてわかりやすく説明して。開発費用8000万円が上がっている。試作機作成は最優秀者が決まってから。どの程度の案の提示で評価できるのか。文書だけで評価するのか、担保されているのか。」としました。
名古屋城総合事務所は「安全性、実現性も審査項目に入っている。実現可能性で選びたい。図面は提供しつつ、変なものにならないようにしたい。質問回答の期間は2ヶ月設けている。開発契約と導入契約は、8000万円上限で試作機を作っていただく。実機と導入費用として上限2億円。5階までいけるかどうかというところはあるが、それを想定したもの。」としました。
堀越学長は「公募は進める方向でいいのではないか」としました。
川地主宰は「小野先生が『ガス抜きにならないように』と発言したのが非常に気になった。
公募は普通にやると最優秀な応募者が出てこない可能性が十分にある。個人的には史実に忠実で、可能な昇降設備はあると思っている。
ただ国の許認可が大変厳しいので、審査の柔軟性も含めて、アンフェアにならない範囲で、市側がメーカーにプッシュしながらできるだけ応募をしていただく。」としました。
高橋名誉教授は「なかなかこういう場を持つことができなかった。当事者の参画の仕方は再考すべき。バリアフリー法の改正の附帯決議でも言われているが、今のやり方が参画のあり方なのか。市は『市民は有識者ではない、素人なんだ』という意識の持ち方はよくない。障害を持つ市民が一番知っている。評価委員がどこまで見識を持っているのかもう一度再考すべき。
もう一つ、火災等緊急時、上層階にいる障害者をどう下まで下ろすのかを含めた垂直移動施設であるべき。
最後に、当初計画で河村市長がエレベーターを付けないという判断があったが、今回の公募でどういう位置づけか」としました。
名古屋城総合事務所は「エレベーターを付けないと平成30年に方針を出した際、既存の今ある実用化されてるエレベーターは柱や梁を取らずにというのは非常に厳しいと思っている。エレベーターの技術を使って工夫することによって、名古屋城仕様になるかも知れないが、昇降技術として導入できる可能性があるものは公募で応募していただくのは全然構わない。」としました。
堀越学長は「今日の意見を踏まえて、検討して次の段階にむけて準備していただく方向で」としました。
名古屋城総合事務所は「『加点要求水準』のメリハリ、利用者の参画を深く考え、公募に織り込めるものほあ織り込みたい。
今後昇降技術の公募をはじめて、天守閣全体のバリアフリーの方針を決めていきたい。」としました。
--------
今回判明した条件は以下です。
・1時間200人
・可能な限り5階まで登れる
・火災時も安全に下まで降りれる
・柱や梁を傷めない
・柱や梁にあまり荷重をかけすぎない
・設備更新の際、大規模に建物を壊さない
・技術開発に8000万円、実機導入に2億円
・日本の厳しい安全基準をクリアする
・障害当事者の意見を事前に聞く
・技術評価者はインバウンドの専門家など
各委員が「最優秀が無いのではないか」「ガス抜きになるのではないか」と心配するのも当然です。
そもそも障害者団体は、「現状(7階建ての5階までのエレベーター)」より後退することを全く認めていません。
こんな状態でどうして無理に国際公募しようとするのか全く理解ができません。
22/3/25(金)名古屋市障害者施策推進協議会で、斎藤縣三・わっぱの会理事長は「文化庁から『バリアフリーをやれ』といわれて無理矢理国際コンペをしようとしているとしか思えない。国際コンペを行い、海外企業を選んでから『実現しませんでした』では無責任であり、日本の信用にも関わる」と発言していますが、今回名古屋市は一言も述べていませんし、経緯にものせていません。
---------
なお、名古屋市はこれまできちんと関係者と調整もせず、見切り発車で基本設計・実施設計・木材を調達してしまい、2020年度末までで約70億円かけています。木材保管料は今後毎年1億円かかります。
-----------