25/9/16(火) 「泣き寝入り」を制度で止める。韓国国内人権機関の実例から、日本の設計図を描く
2019年、韓国で日本人の障害当事者が民間施設から入場拒否。
国家人権委員会へ申し立てた結果、是正措置と再発防止手順が確立。
こうした“今を止める”対応を可能にするのが、日本に未設置の国内人権機関(NHRI)です。
■国内人権機関の必要性を特に障害者分野から見る
一般社団法人ふぇみ・ゼミ&カフェが開催した全5回【フェミニズムのためのベーシック講座2025】の第3回 「国内人権機関って何? 日本になくて韓国にはある理由を考える」が2025年9月16日(火)に開催されました。
録画は2025年9月30日まで。『独立性/調査権/勧告の実効性』の“使える論点”が2時間で整理できます。
講師は崔栄繁さん(NPO法人DPI日本会議議長補佐)。
障害者権利条約策定のための国連の特別委員会に、8回中7回日本障害フォーラム(JDF)のスタッフとして参加した方です。
■国内人権機関(NHRI)とは(3機能=独立/調査/勧告)
まず崔さんから国内人権機関の説明がありました。
☆NHRI 3つの機能
・独立:政府から自立した組織運営
・調査:職権調査・実地検証で“今”を止める
・勧告:実効性ある是正と再発防止を促す
☆よくある誤解☆
Q. 行政の人権窓口と何が違う?
A. 独立性/職権調査/勧告の実効性が核。行政内窓口とは権限設計が異なる。
参考:一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪) 国内人権機関
■日本:国連勧告10回超/未設置の現状
日本は国連の複数条約機関から10回超の設置勧告を受けています。
しかし未設置??独立性・職権調査・勧告の実効性を備えた“別枠の救済窓口”が欠落しています。
■韓国:設立の経緯と「誰が申し立てられるか」(外国人も可)
韓国も、国連自由権規約委員会などから国内人権機関の設置を勧告されていました。
1997年、当時の金大中大統領候補が国内人権機関の設立を公約として発表。
その後紆余曲折あって2001年に、政府から独立した「国家人権委員会」が発足しました。
申立てができる人は、韓国国民と、韓国領域内にいる外国人。
崔さんは実際に韓国「国家人権委員会」を訪問し、ヒアリングした際の報告がありました。
■事例詳細(入場拒否・手話通訳申立)
2019年、崔さんの友人の日本人障害当事者が、韓国の民間施設で差別的対応を受けました。
崔さんが友人に「国家人権委員会に申し立ててみたら」とアドバイスし、その後の結果が報告されました。
韓国では、外国人の申立ても受理され、機関連携で是正されます。
このケースは、外国人も実効ある申立てが可能で、事業者の運用が具体的に変わることを示しました。
また、韓国のテレビニュースに手話通訳がないことを申立てた結果も報告されました。
◆日本でどう作るか(市民ネットワーク×超党派)
質疑の中で、どうすれば日本に国内人権機関ができるかが議論になりました。
崔さんは「市民側では、分野横断の市民ネットワーク形成は必須。
政治側でも与野党横断の議員連盟など国会内の推進勢力づくりが鍵。
環境整備としては、事実に基づかない批判や過剰反応(メディア言説含む)に対し、エビデンスにもとづく議論と、健全な政権交代が可能な政治土壌の重要性」が指摘されました。
◇日本の人権状況を向上させるには国内人権機関設立が必須!
行政内窓口では止まらない“場面”(例:合理的配慮の不提供、放送アクセシビリティ不足)を、独立・調査・勧告で是正する“別枠”がNHRI。
今回、韓国の障害者分野で、具体的に国内人権機関を利用して、人権状況が改善した例を知りました。
日本には、数多くの人権侵害があります。
国内人権機関があれば、あんなことも、こんなこともできる。具体的イメージがわく大変良いオンライン講座でした。
被害の今を止める??日本にNHRIを。
まずは30秒の投稿と40字×3のメモから。
【あなたの一歩(30秒 / 2時間 / 5分)】
・今すぐ30秒:冒頭3行をコピペ→X投稿(指定ハッシュタグ2つ)
・今週2時間:録画(〜2025年9月30日まで)を視聴し、メモ3点「独立性/調査権/勧告の実効性」を各40字で下書き
視聴後、そのまま40字×3でパブコメ下書きが完成します
・来月5分:パブコメ(10月予定)にコピペ投稿??“被害の今を止める”仕組みづくりに参加
25/9/13(土) 早い・安い・うまい「国内人権機関」をつくろう! ??“今”の被害を止める独立機関を、神戸から全国へ。
きのう・きょうのタイムラインでも傷つく人がいる。待っても救われないなら??動くのは私たちです。
SNS誹謗中傷、入管、人権訴訟の長期化??“今”進む被害に、待つだけの仕組みは機能しません。必要なのは、早く・安く・うまく止める独立機関=国内人権機関(NHRI)。
2025年9月13日、兵庫県立のじぎく会館で開かれた市民集会には約120人。
神戸から全国へ、制度化の声を束ねます。
要約:@被害は“今”進行形/A既存制度は遅く高コストで限界/B独立した国内人権機関が解決の入口。神戸から全国へ声を束ねよう。
「国内人権機関をつくろう!市民集会in KOBE」に名古屋市民オンブズマンメンバーが神戸にJR快速に乗って参加した様子をレポートします。
事前に取材依頼がない人は録画・撮影はお断りでした。(許可を得て撮影しました)
【NHRIとは:独立性/調査権/勧告の実効性】】
国内人権機関(NHRI)は、政府から独立して調査・勧告・教育を担い、被害の“今”を止めるために機能する救済窓口です(詳細は配布資料リンク)。
・一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪) 国内人権機関
【藤原弁護士 「裁判と法務局では届かない“いま”に、NHRIが要る」】
はじめに、日弁連国内人権機関実現委員会副委員長の藤原精吾弁護士から、「国内人権機関について知ろう」という講演がありました。
結論は明快です。被害を“いま”止めるには、@迅速A低コストB実効的調停??この三拍子を満たす独立機関が必要。裁判は秩序維持という別の役割も担い、法務局は公権力への監視に限界があるからです。
以下まとめました。
神戸をはじめ、全国には様々な人権問題があるが、人権侵害された際はどう回復すべきなのか?法律や権力によって人権侵害されたらどうすればよいのか?
・裁判 2011年福島原発事故は14年たってもまだ裁判が続いている。
裁判は「人権を守るだけ」ではなく、国の秩序を守るのも役割だ。
・法務局人権擁護課 法務局や国の人権侵害に対してきちんとモノがいえるのか。
政府にモノを言える国内人権機関には以下3つが必要だ。
1)早い 助けて!と言えば動いてくれる
2)安い 費用がかからない
3)うまい 侵害者に話して調停してくれる
賠償の支払いだけではなく、今後侵害を止めることを考える
制度や慣行を改めるように低減できる、人権教育をする
実際に韓国には国内人権機関があり、電話すればかけつけて話を聞いてくれる。
国際的な人権基準で人権を守るには、政府から独立して自ら調査し、意見を述べ、勧告、提案ができる仕組みが必要だ。
1993年12月20日に国連総会が決議した「パリ原則」にすべて書いてある。
国連から何度も国内人権機関の設立を勧告されており、日本政府は了承したと伝えているが、国内には「なかなか難しい」と二枚舌を使っている。
日本の政党で、国内人権機関の設立を政策に掲げている政党が多い。
自民・参政は反対しているが、市民の運動で打ち破ることができればできる。市民運動を盛り上げて、政党を動かして国会を動かそう。
裁判は“事後の救済”、NHRIは“今の止血”??役割が補完関係にある。
【「ヘイトスピーチ分科会」既存制度の限界と“三拍子”の要件】
その後、「ジェンダー」「外国人」「障害者」「公権力」「子ども」「原発」「ヘイトスピーチ」「国内人権機関全般」の各分科会に分かれ、国内人権機関が必要とされる現状を話し合いました。
そのうち「ヘイトスピーチ」分科会についてまとめました。極めて深刻な状況が共有されました。
丸尾まき兵庫県議も参加されました。
・症状:国際会合での撮影・SNS拡散等により人格攻撃が波及。
穴:法務局は「人権侵犯」認定の一部にとどまり、どの行為が侵害かの特定・是正が不十分。
処方:NHRIの調査権/是正勧告で、再発防止・教育措置まで含めた対応を早期に実行。
・症状:公職者への虚偽情報拡散。開示・削除は多数申立でも長期化・高コスト。
穴:プラットフォーム依存で裁判前に手当できない空白。
処方:NHRIが緊急勧告・合意仲介で迅速な削除・訂正を促し、二次被害を抑制。
・症状:被差別部落や研究・出版を狙った個人攻撃の拡散。
穴:被害申立の個人負担が重く、教育・啓発の体系化に接続しない。
処方:NHRIが事案の構造把握→教育指針化まで担い、自治体・学校に実装を勧告。
・症状:在日コリアンへのヘイトスピーチが継続的に拡散。
穴:開示・削除はプラットフォーム依存で、被害の即時止血に至らない。
処方:NHRIの調査権/是正勧告/教育で、迅速な是正・再発防止策を公的に提示。
・症状:街宣告知への付きまとい、会場・施設への執拗な妨害。
穴:施設管理や治安対応が個別判断に委ねられ、統一基準がない。
処方:NHRIが基準整備を勧告し、自治体・施設に運用指針(安全確保・表現の自由の両立)を実装。
【現場の声:症状→穴→処方】
その後、各分科会での報告を共有しました。
・子ども いじめ、虐待、障害児 いろんな課題が今の相談機関では解決できない
・障害者 精神科病院虐待に対し、国連から勧告が出たが知られていない
・外国人 入管の胸先三寸で強制退去になる
・ヘイトスピーチ 法務局は受け付けたが「人権侵犯にあたる 啓発した」で終了
・公権力 弁護士会は調査権限が限られる
・原発 国内避難民に関する国連特別報告者ダマリ―さん勧告が出ても政府は無視
・ジェンダー 現状をだれも調査していない
・国内人権機関全般 裁判で勝っても解決しない
【ビジネスと人権:パブコメが勝負所】
上記報告を受け、菅原絵美・大阪経済法科大学教授は以下述べました。
ジャニーズ問題以降、日本の企業社会は自分たちの責任が問われ、国内人権機関のニーズが出てきた。
1社でジャニーズ事務所と対峙は大変。外部に信頼できるところがあればよい。
国内人権機関で一番重要なのは「国にモノを申す」ことだが、「企業にモノを申す」こともできる。
今年2月26日、9月11日に日弁連主催の学習会が開かれた。政府は及び腰だが、経団連と連合が一緒になり、投資家も国内人権機関を求めはじめてきた。
よりよい社会を作るための投資がなされなければ、利益の面でもプラスにならない。
ビジネスと人権国別行動計画の改定が今年10月にもパブコメが予定されている。
〈締切が近い〉10月予定のパブコメは、制度設計に市民の声を刻み込む最短ルートだ。
提出ポイントは@独立性(予算・人事の政治的独立)A調査権(強力な資料提出要求・立入)B勧告の実効性(公表・フォローアップ)の3点だ。
参考:日弁連 政府から独立した人権機関実現委員会ニュースNo.13
「ビジネスと人権の観点から『政府から独立した人権機関』の意義を考える〜ステークホルダー勉強会」のご報告
【神戸から全国へ:ネットワークとロビー】
藤原弁護士は「今日の集会は講演を聞くだけではなく、自分で考え、発言して全体として共有できた非常に画期的な集会だ。
国内人権機関を作るための大きなモデル、大きな一歩だ。『自分の問題として人権機関が必要』と神戸から発信していきたい。」と述べました。
最後に、主催者から「今回の集会実行委員会を母体にネットワーク結成を準備する。
『国内人権機関(NHRI)設立推進NGOネットワーク』と連携して、国会議員などへのロビー活動を行いたい」と宣言がありました。
ja4hr@gmail.com
多くの市民が「国内人権機関が必要」と訴えることで、はじめて法律ができます。ぜひ声を広げましょう。
【あなたの一歩(30秒 / 7分 / 90秒)】
@広げる(30秒):冒頭3行をコピペしてX投稿+#国内人権機関をつくろう #NHRI
A深める(7分):資料に目を通し、一言メモで「独立性/調査権/勧告実効性」を各40字以内で作成=そのままパブコメ下書きに。
〈更新欄〉パブコメ締切:公表後に日付追記/意見テンプレ配布予定
B支える(90秒):名古屋市民オンブズマンに定額寄付で「2026年に灯を消さない」基金へ。ページ内で毎月/単発を選択。
--------
名古屋市民オンブズマン 人権条例ページ
※これまでの要望書・回答書、経過まとめを掲載(検索しやすい目次付き)
25/8/26(火) 名古屋市のネット差別対策、週1時間の“見回り”で検出年1件――“321/323達成”の盲点はどこか
名古屋市のネット差別監視は週1時間、昨年度の把握は1件。
これは“問題が少ない”のではなく、見えていない可能性が高い。
実効性ある監視と説明責任が欠けています。
2025年8月26日に名古屋市が開催した「名古屋市人権施策の推進にかかる有識者懇談会」を名古屋市民オンブズマンが傍聴したレポートを報告します。
☆公開性:傍聴は報道0/市民2、録音・録画は禁止
名古屋市の人権施策は“達成率”中心の自己評価に偏り、ネット差別の実態把握と迅速対応が著しく不十分。県並みのモニタリング体制と外部評価を至急導入すべきです。
☆名古屋市と愛知県の現状(要点3行)
・監視体制:市=手作業・週1h・対象掲示板限定/県=委託・継続監視・多媒体対応
・年間把握:市=1件/県=519件(2024年度)
・公開:市=開催記録中心/県=年次レポート+削除要請実績
・25/8/26 第2回名古屋市人権施策の推進にかかる有識者懇談会 配布資料
・名古屋市民オンブズマンによるメモ
☆人権部長「人権条例を検討中」と述べるだけで議題にせず
はじめに児玉人権部長はあいさつの中で「先日人権施策推進会議を行った。名古屋市人権条例に関する検討会を行った」と触れるだけで、特に議題には挙げませんでした。
☆事実@:321/323達成と庁内連絡会未開催
名古屋市は毎年、「名古屋人権施策基本方針」における事業実績を有識者懇談会で報告しています。
「概ね8割以上達成」と名古屋市が評価したのが323事業中321事業。
わずか2事業(障害者への合理的配慮の提供への助成、ヘイトスピーチの抑止に向けた取り組み」のみ「概ね5割未満」。
名古屋市は「ヘイトスピーチについて、平成28年度に庁内連絡会設置し、令和3年度までは複数回開催していた。
令和元年にあったあいちトリエンナーレの問題が落ち着いたため、令和4年度以降開催していない。今年度開催を検討している」と述べました。
【参考】なごや人権施策基本方針 令和6年度実施計画・事業実績
☆事実A:ネット差別検出1件/週1時間+市の説明
続いて、昨年度名古屋市の各局室区から報告があった差別事象及び人権監理者への相談記録の集計結果が報告されました。
差別事象として1件、インターネットの個人ブログにおいて『市内某地域が被差別部落である』(引用)を職員が確認し、法務局へ削除要請依頼を実施したとのこと。
また、市民の声で外国人に対する差別があった、資源収集作業職員が市民と口論となって不適切な発言をしたとのこと。
☆小林直三教授「選挙期間中のヘイトスピーチは許されない」
小林直三・大阪経済大学教授は以下述べました。
1)選挙期間中のネットでのヘイトスピーチ対策を検討してほしい。
2)教員による盗撮問題、いじめ提訴、相対評価か絶対評価かなども問題。
3)1件しかネット差別事象を発見しないとは。もっとあるのではないか
愛知県によるネットモニタリングでは誹謗中傷が多数出ている
☆名古屋市「ネット差別事案はたまたま発見した。モニタリングは毎週1回1時間」
名古屋市は「今回のネット差別事案は、通常業務していてたまたま発見した。モニタリングは毎週1回、文化センターで特定の5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)、爆サイ.comなどの掲示板を1時間ほど差別書き込みがないかチェックしている」と説明しました。
☆愛知県 インターネットモニタリング事業を業者に委託 報告件数は年間519件
会議終了後、小林教授が紹介していた愛知県によるネットモニタリングを調べてみました。
業者に委託して年間519件もの差別事案が報告されていました。
・愛知県 インターネットモニタリング事業を実施しています
報告件数(2024年度)
新型コロナウィルス 2件
部落差別 203件
外国人 271件
障害者 23件
性的少数者 20件
合計 519件
令和7年度愛知県「予算に関する説明書」によれば、インターネットモニタリング事業費は742万5000円です。(118ページ)
☆比較:愛知県の年間519件/削除要請119件/年次レポート
2025年3月12日令和7年愛知県議会県民環境委員会の高木ひろし委員の質疑によれば、2021年8月から2025年2月末までに2440件の差別的書き込みを把握し、悪質で違法性の高い213件について愛知県が名古屋法務局に削除要請を行い、そのうち119件の削除を確認しているとのこと。
愛知県では、「あいち人権推進プラン」に基づき「あいち人権施策年次レポート」を出していたことも判明しました。
名古屋市と比べて自画自賛が少なく、<愛知県人権施策推進審議会による評価> までついていました。
☆処方箋:委託監視・年次報告・削除要請プロトコル・外部評価・録画公開結論:県並みの委託型モニタリングと外部評価を、条例に明記して直ちに導入。
名古屋市が把握しているネット上の差別件数が少ない=問題が小さい、とは限りません。
検知できていない可能性は、県の把握519件(2024年度)との落差が示唆します。
現在、名古屋市は実行性のある人権条例を作ろうとしています。
しかしながら、ネット上の差別的書き込みに関してはこれまで非常に手薄だったことが明らかになりました。
現在の人権条例の検討でもあまり議論されていません。
少なくとも、民間に委託したネットモニタリング事業を、名古屋市はすぐにでも行うべきです。
条例に入れるべき5点
・委託型モニタリング(多言語・多媒体)
・年次レポート公開(検出件数・削除要請・削除確認率・平均対応時間)
・名古屋法務局等との削除要請プロトコルの明文化
・外部有識者評価(年1回)
・会議の録画公開と傍聴枠拡充
☆“いますぐできる”市への要請メール
・超短文テンプレ(コピー可/約150字)
a2580@sportsshimin.city.nagoya.lg.jp
件名:ネット差別対策の強化要請(委託監視・年次報告・録画公開)
本文:現状、検出1件・週1時間体制・庁内連絡会未開催が続いています。県のような民間委託モニタリングの導入、年次レポートの公開、会議の録画公開を次回会合の議題として検討・実施してください。
☆あなたにできること
名古屋市民オンブズマンの財政がひっ迫しており、このままでは2026年には市民による監視の灯が消えます。
@ 広げる:この記事をXにシェア(30秒)→「録画公開」への世論を可視化
A 深める:愛知県と名古屋市の人権施策ページを読み比べ
B 支える:参加・寄付(継続)→行政チェック体制を継続
☆国内人権機関をつくろう!市民集会 in KOBE
なお、現在日本にはない「国内人権機関」を作ろうとする市民集会が2025年9月13日(土)13時〜16時45分神戸市のじぎく会館で行われます。
よろしければご参加ください。
-------
・名古屋市民オンブズマンブログ 人権問題
25/8/9(土) レポート:勧告→命令→刑事告発 で止める ー 愛知県弁護士会が示した人種差別撤廃条例の骨格と課題
放火は“前触れなく”やって来る。
被害者の言葉が示すのは、ヘイトが「言論」ではなく暴力だという現実。
愛知県弁護士会は、勧告→命令→刑事告発へと段階的に止める3段階モデルを提案しました。
次の被害者は“あなたの隣人かもしれない”。だから制度で止める。
いま名古屋が作る条例に「3段階措置+ネット/施設対策」を実装し、再犯時に実効性を担保すべきです。
本稿は、その骨格と課題を要約します。
2025年8月9日、愛知県弁護士会が主催となりシンポジウム「つくろう!人種差別撤廃条例
〜愛知におけるヘイトスピーチ/ヘイトクライムの実情を踏まえて〜」が開かれました。
現在、名古屋市で包括的な人権条例制定が議論されています。
名古屋の人権条例には、再犯時に実効性を担保する“3段階措置(勧告→命令→刑事告発)とオンライン対策・施設利用制限を入れるべきです。
その大変参考になる充実したシンポジウムでした。
1.なぜ今か(事件・被害の声/名古屋の検討状況)
■川合会長「当然、人権は外国人にも及ぶ。象徴がヘイトスピーチ/ヘイトクライムだ」
はじめに、川合伸子・愛知県弁護士会会長があいさつしました。
戦争の結果、内外に甚大な人権侵害を及ぼした反省のもと、日本国憲法を制定した。
「国民」とあるが、当然、国籍の有無にかかわらず、権利の性質上適用可能な人権規定は全ての人に及ぶ。
守られていない人権課題の一つが外国人の方々の人権問題、その象徴がヘイトスピーチ/ヘイトクライムだ。
本日の企画では、人種等を理由とする差別に対して国の法律はどう対応してきたか、地方公共団体はどう条例で対応すべきかを検討する。
2.提案の中身 ?? 3段階+ネット/施設対策がコア、川崎市は先行例
■愛知県弁護士会 人種差別撤廃条例案「3回違反があれば公表+刑事告発を」
続いて、郭勇祐弁護士による基調報告「愛知県内の地方公共団体において人種差別撤廃条例の制定を求める意見書について」がなされました。
2016年に「ヘイトスピーチ解消法」ができたが、明確にはヘイトスピーチを禁止していない。
また、地方公共団体に対しても努力義務を課すのみにとどまっている。
https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_00108.html
@ ヘイトは“言論”ではなく暴力である
愛知県内では、複数のヘイトスピーチだけでなく、
1997年に日系ブラジル人の少年が死亡した傷害致死事件、
2002年に朝鮮学校生徒に対する暴言、嫌がらせ等、
2017年、朝鮮系金融機関の店舗に火のついた布と灯油容器を投げ込んだ事件、
2021年に民団愛知県本部及び名古屋韓国学校に火をつけられた事件(後述)などのヘイトクライムが起きている。
「ヘイト暴力のピラミッド」と説明されるが、ヘイトスピーチがヘイトクライム、ジェノサイドを招く。
愛知県内には、愛知県、津島市、大府市に条例は存在するが、より実効的な取り組みが必要だ。
日弁連では2023年にヘイトスピーチ禁止法の制定を求める意見書を出し、愛知県弁護士会でも2025年2月に県内自治体に人種差別撤廃条例の制定を求める意見書を出した。
・2023年4月14日 日本弁護士連合会
人種等を理由とする差別的言動を禁止する法律の制定を求める意見書
https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2023/230414.html
・2025年2月18日 愛知県弁護士会
愛知県内の地方公共団体において人種差別撤廃条例の制定を求める意見書
https://www.aiben.jp/opinion-statement/news/2025/03/post-122.html
「愛知県内の地方公共団体において人種差別撤廃条例の制定を求める意見書」サマリー
https://www.aiben.jp/opinion-statement/news/2025/03/post-128.html
A 3段階措置+ネット/施設対策が実効性のコア
条例の具体的内容は以下だ。
・Step1(初回):審査会→勧告+公表
・Step2(再犯):審査会→禁止命令+公表
・Step3(三犯):審査会→公表/公表+刑事告発(罰金50万円)
・オンライン:削除要請・モニタリング
・公共施設:利用制限
※先行例:川崎市条例
https://www.city.kawasaki.jp/shisei/category/60-1-10-0-0-0-0-0-0-0.html
マイノリティがおびえながら生活されることを余儀なくされてはいけない。
B 名古屋の条例に具体的に組み込むべき
現在、名古屋市で人権条例が検討されている。
上記をぜひ組み込むべきだし、最終的には法律としてきちんとやっていくべき。
3.専門家の視点(北村=“対抗言論の限界”、安田=“ヘイトはただの暴力”)
■北村聡子弁護士「ヘイトスピーチは魂の殺人”だ」
続いて、東京弁護士会の北村聡子弁護士が話しました。
日本弁護士連合会 国際人権問題委員会 副委員長、元日弁連ヘイトスピーチPT 副座長、元東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例に基づく審査会委員を務められています。
日弁連では2023年にヘイトスピーチ禁止法を求める意見書を出した(先述)。
https://www.nichibenren.or.jp/document/opinion/year/2023/230414.html
ヘイトスピーチを受けた人の被害は魂の殺人”と言える。
法律で表現の自由を規制しようとしているが、マイノリティにヘイトスピーチを行う以上、「対等ではない関係での対抗言論の法理」は通用しない。
わずか100年前に関東大震災直後に在日コリアンの人々を大虐殺した。
独立した専門機関がヘイトスピーチを認定し、公表や禁止命令、削除命令、過料を課すべきだ。
■民団愛知県本部・名古屋韓国学校放火事件「何の前触れもなくヘイトクライムの被害が」
続いて、在日本大韓民国民団愛知県地方本部 副団長の趙鐵男氏が、多数の市民の前ではじめて心情をかたりました。
途中、こみ上げるものがあり、一部中断しながら述べました。
私は在日韓国人3世。在日集住地区に生まれ育ったわけではなく、日本名を名乗り日本の公立学校に通っていたため、民族教育を受けてこず、劣等感を持っていた。
20歳を過ぎたころ、在日韓国人の学生らが集まる学生会に参加し、祖父母が日本にわたってきた歴史を知って、劣等感が払しょくされ、民族名を名乗り出した。
自分の子どもには劣等感を持ってもらいたくなく、名古屋韓国学校に通わせていた。
2021年7月24日、何の前触れもなく民団愛知県本部と名古屋韓国学校に放火されるというヘイトクライムの被害を受けた。
被害にあった建物は新しく、あまり燃え広がらなかったが、古い支部会館に火をつけられたらと想像し、不安な日々を送った。
防犯カメラに映っていた容疑者はごく普通のサラリーマンのようで、身構えようがない。
すれ違いざまにいきなり襲われるのではないかと恐怖が続いた。
子どもにアイデンティティをはぐくんでもらおうと韓国学校に通わせたのに、それが原因で被害にあったら、、、
その後容疑者は京都府宇治市のウトロ地区に放火し、7棟が全焼した。
容疑者は逮捕されたが、全く反省していない。むしろ「自分のような日本人はまだ出てくる」と犯行予告までした。
容疑者は裁判の中で「あいちトリエンナーレ2019『表現の不自由展・その後』が開催されたから愛知県をターゲットにした」と述べた。
子どもたちに「日本人のふりをして生きなさい」と言わなければいいのかと苦悩したのを覚えている。
■安田浩一氏「ヘイトスピーチは『ただの暴力』だ」
続いて、ノンフィクションライターの安田浩一氏が「深刻化する在日クルド人ヘイトの現場〜取材を通して見えてきたもの」を話しました。
ヘイトスピーチは「言葉の暴力」と言われるが、「ただの暴力」だ。
私たちの社会でヘイトスピーチを食い止めなければならない。
表現の自由は大事で、私も表現で飯を食っているが、今最も言葉を奪われているのは差別されている当事者だ。
「ヘイトの自由」だけ述べるのはムカついている。差別と偏見の向こう側には、殺戮と戦争がある。
東京では、クルド人の業者によって行われている解体作業現場のビニールシートにいたずら書きされたり鋭利な刃物で切られている。
日本にいるクルド人のほとんどは埼玉県に住んでいる。次は愛知県。
2025年7月参議院選挙中、いろんな政党の人が「クルド人出ていけ」と主張した。選挙期間中、クルド人の人みんな口をそろえて「怖い」と言っていた。
埼玉では「パトロール隊」「自警団」と称して差別運動が起こっているが、もともと川崎市で在日コリアン排斥運動をやっていた人間。
川崎は条例ができたので激しいデモができなくなった。
学生にクルド人の印象をアンケート調査したら、「怖い」「川口」「治安が悪い」など、ネットで仕入れた知識をそのまま書いてきたが、実際にクルド人と交流した人は1人もいなかった。
3歳から埼玉県川口市に住んでいたクルド人が、18歳になってトルコに旅行気分でいったん帰国した瞬間に「過激派」だとして逮捕された。
トルコ語もほとんど話せないが、パスポートを取り上げられてトルコから出ることができない。
あたかも凶悪な民族だとする連中が多いが、解体業などで一生懸命暮らしている。
「クルド人の4歳の女の子がスーパーで万引きした」という動画が1000万回くらい再生された。家族は即警察に行き、本人と中学2年の姉が刑事に説明した。
最終的にスーパーの防犯カメラで、万引きしていないことがはっきりした。
中学2年の姉は「クルド人が何を言われているか、毎日SNSをチェックしているから、妹の動画を発見できた」と述べた。
これが彼女の日常だ。差別と偏見を放置することで、必ず殺戮と戦争が目の前に近づいて来る。
そうしない世の中のためになにができるか。
■安田氏「在日クルド人は2023年入管法改正で『発見』された」
その後、パネルディスカッションが行われました。
「どうしてこれほどの在日クルド人ヘイトが行われるようになったか」質問がありました。
安田氏は「在日クルド人は30年前から日本に住んでいるが、この2-3年で急にヘイトが増えた。
理由ははっきりしている。在日クルド人は2023年入管法改正で『発見』された。報道で、『難民申請したが認められない』事例としてクルド人が取り上げられた。
今の日本で、権利を主張したり獲得したいと訴えると叩かれる。女性や障害者もそうだ。
日本に住み続けたい、合法的に在留許可を欲しいと訴えたクルド人がバッシングの対象になった。
クルド人がちょっとした犯罪を犯すだけで大きなニュースとなった。
川口市は20年間で外国人住民が4倍になったが、刑法犯認知件数は3分の1に減った。インチキ、ウソに踊らされてネット上で虚像が作られた」と述べました。
■安田氏「在日朝鮮系金融機関に火をつけた容疑者は元まじめな会社員」
2017年在日朝鮮系金融機関の店舗に火をつけられた件を取材された安田氏は
「裁判の中で、容疑者は『従軍慰安婦の問題を韓国が騒ぎ立てている。韓国日本大使館前に少女像を建てた。それに抗議するため金融機関に火をつけようとした』と述べている。
当該金融機関は韓国政府となんのつながりもなく、彼の誤りだが、ネット情報に依存して、『朝鮮半島出身者は日本を恨んでいる』と思い込んだ。
容疑者は30年以上会社に勤めて永年勤続表彰を受けている。定年退職後やることがなくなり、ネットを見るようになり、ガセ情報に踊らされていく。
憎悪を募らせ、ネット社会から一歩抜け出して犯罪行為に走った。
実効性のある条例、法整備ができるかが、クリアしていなければならない大きな問題」と述べました。
■北村弁護士「東京都の条例は事案公表と拡散防止措置までで氏名公表がないのが限界」
北村弁護士は、昨年まで6年間ヘイトスピーチ条例の審査会委員を務められていました。
「東京都の条例は事案公表と拡散防止措置までで、氏名公表がないのが限界だ。実際悪意あるヘイトスピーチをしている人は、サークル活動みたいなノリで街宣し、終わった後ビールを飲みに行くみたいな軽いノリ。楽しそうに差別をしている。
そういうひとにいくら啓発活動やっても意味がない。罰則しかない。
また、差別に対してカウンターを行っている人は尊敬する。悪意ある差別者は何も感じなくても、通りすがりの人は何か感じるかもしれない」と述べました。
■「マイノリティがマジョリティにヘイトスピーチなんてできない」
会場から「日本人のヘイトスピーチを容認するのはおかしい」と反論があることに対し、北村弁護士は「仮にマイノリティがマジョリティにヘイトスピーチしても害悪は小さい。
あと、実際そんな人はいるのか?在日コリアンやクルド人が日本人に対してヘイトデモは怖くできない。本当にリンチを受けるかもしれない」と述べました。
安田氏は「日本人ヘイトとか日本人差別というのは、言葉の用法や概念としても徹底的に間違っている。社会的な力関係の問題だ。
南アフリカでは圧倒的多数の黒人に対してレイシズムが発動されていた。」と述べました。
■安田氏「反差別も学んでいける」
安田氏は「25年間、海外にルーツを持つ人の取材を続けてきており、怒り狂っている。人は差別も学ぶが、反差別も学んでいく。
反差別のために何をすべきか。今日のシンポや条例・法整備、昔だったら見過ごされてきたことを指摘する人が増えてきた。
パワハラ、セクハラなど、昔許されてきたが今は許されないことがたくさんある。私たちは少しずつ何かを獲得している。
国が、行政が、そして最も差別を受けていない人間である『日本人の男』が身体を張ってでも社会を守ることが必要。」と述べました。
■安田氏「女性参政権、1日8時間労働、週休2日、最低限の人権も『騒いだ人』がいたから獲得できた」
安田氏は「今も差別と偏見の炎がちらちら燃え続けている。外国人おかしいとみんなで言っていこう。
少数者が声をあげたり、こぶしを振り上げたことで日本や世界の歴史が変わってきた。
女性参政権、1日8時間労働、週休2日、最低限の人権も『騒いだ人』がいたから獲得できた」と述べました。
4.表現の自由との整合(国連見解/誤解の整理)
■国連「ヘイトスピーチ対処は言論の自由を制限または禁止を意味しない」
最後に、愛知県弁護士会人権擁護委員会委員長の古澤仁之弁護士が閉会の挨拶を行いました。
ヘイトスピーチについて、国連のホームページに2019年当時のグテーレス事務総長の言葉が紹介されている。
「ヘイトスピーチに対処することは、言論の自由を制限または禁止することを意味するのではありません。それは、ヘイトスピーチがより危険なもの、特に国際法が禁じる差別、敵意、暴力の扇動へとエスカレートしないようにするということを意味します」
ヘイトという問題を我々が生み出した問題だとすれば、議論を封殺するのでなく、極端な排外主義に流されるのでもなく、被害を見て見ぬふりをするのでもなく、言葉を尽くし、言葉を紡いで、条例の制定といった公の場で堂々と議論することで問題を乗り越えていきたい。
●シンポジウムまとめ
・ヘイトは言論の自由の問題ではなく、被害の現実。
・3段階措置+ネット/施設対策が実効性のコア。
・名古屋の条例に“実装”できるかが勝負。
※当日の録音・録画は禁止されました。また、資料は参加者には配布・ダウンロード可能でした。資料のうちすでにネットで公開されているもののみリンクを貼っています。
5.あなたにできること
? 9/29(月)14:00「名古屋市人権条例検討会」を傍聴する
? 記事をシェア+感想を語る
? SNS共有(感情訴求)
「勧告→命令→刑事告発の3段階でヘイトを止める。名古屋の条例づくりに ネット/施設対策も。#名古屋 #人権条例」
「放火は前触れなく来る。 ヘイトは“言論”じゃない??暴力だ。 名古屋の条例に実効性を。#差別を止めるのは制度」
--------
・2025年8月10日(日) 09:00 神奈川新聞
差別禁止法を求めて 時代の正体 差別撤廃条例作ろう シンポで呼びかけ
-------
・名古屋市民オンブズマン 人権条例ページ
・名古屋市民オンブズマンブログ 人権問題
25/7/14(月) 【現場レポート】「子ども権利擁護」を起点に──名古屋市「人権条例」第2回検討会を傍聴して
差別発言をきっかけに動き出した「名古屋市人権条例」づくり。その現場では、今、“子どもの声”が制度を変える力になろうとしています。
2025年7月14日、名古屋市で「第2回 名古屋市人権に関する条例(仮称)検討会」が開催されました。
今回のテーマは、「条例骨子案」に関する意見交換。特に注目されたのは、「子どもの人権」や「差別の定義」、そして「相談・救済の仕組み」をめぐる議論です。
・配布資料(名古屋市ページ)
・名古屋市民オンブズマンによるメモ
◆名古屋城市民討論会差別発言をきっかけに人権条例検討へ
本件は、2023年6月3日に名古屋市が開催したバリアフリー市民討論会における参加者による差別発言ならびにその後の対応の不手際を踏まえ、第三者委員会による検証で「包括的で実行性がある人権条例」制定を提言されて議論が開始されました。
今、名古屋市が子どもの人権保護で築いた制度が、差別全般に対応する“人権条例”へと発展しようとしています。
◆「子どもが声を上げられる社会」の実現に向けて
冒頭、名古屋市が設置する「子どもの権利擁護委員(なごもっか)」の間宮静香弁護士から報告がありました。
子どもの権利を守るには、「個別救済」「モニタリング+意見表明、助言、勧告」「広報啓発機能」の三本柱が必要。
実際に体育館の窓ガラス落下や、不当な出席認定に関するルールといった事案に対し、制度の「発意」などで改善が図られた実績が紹介されました。
「子どもが『つらい』と声をあげたとき、その声を拾い、制度を動かす仕組みが必要です。」(間宮委員)
市が条例を定める上でも、「名古屋モデル」としてのなごもっかの経験が活用されるべき、特に条例検討の際に必要なのは以下だ。
・独立性の具体的な確保(委員の選任・事務局)
・相談モニタリング結果の公表と対応
・普及啓発
・申立てがなくても勧告、意見提出
・協力義務の明記
・重なる部分の調整
との提言がありました。
参考:2024(令和6)年度なごもっか活動報告書
◆「差別」の定義はどこまで広げるか
会議では、「差別」をどう定義し、どのように対応するかも議論されました。
部落差別やアウティング(本人の同意なく性的指向等を暴露)も例示しつつ、条例で包括的に差別を禁止する必要性が語られました。
視覚障害の当事者からは、「社会のあちこちで“見えない差別”がある」として、点字や音声対応の不備を指摘する声も。
「“障害者も健常者も生きやすい社会”を語るなら、まず制度がその前提を作らなければならない」
「不当な差別」を禁止するだけでなく、差別の“解消”に向けた市の責務を明記すべきという意見も出されました。
◆ヘイトスピーチ、公の場での差別行為はどうする?
議論の後半では、インターネットや街頭での差別的言動(ヘイトスピーチ)への対応も話題に。
特に、選挙期間中に差別的発言を繰り返した候補者が議席を得たことに、委員から危機感が。
これに対し、「公共施設の使用不許可」や「ネット上の削除要請・声明発出」などを条例に盛り込むべきという提案がなされました。
しかし、名古屋市の担当者は「基本的にヘイトスピーチは許されないが、選挙は公職選挙法で規制されており、どこまで条例でできるか、難しい」と述べました。
現時点の草案では「公表」や「利用制限」などが検討されています。
また、今回の人権条例に「罰則」を設けるかについては賛否が分かれましたが、最低限「公表」による実効性の確保が重要との認識が共有されました。
◆相談窓口は「制度の入口」──機能する仕組みを
次に議論されたのは、相談体制のあり方です。
単なる「電話相談」だけでなく、「声を上げられない人の代弁」や「調査・公表」などを担う窓口が必要とされました。
相談員に求められるのは、当事者の声に寄り添い、制度と社会をつなぐ“専門性”。
「相談窓口は、“差別を解消する宝の山”。専門職としての育成と処遇改善が不可欠です」(間宮委員)
「なごもっか」では、15名の調査相談員が専門的に対応しており、これは全国でも突出した体制とのこと。
今回の議論で何より浮かび上がったのは、「声を拾い、制度を動かす仕組み」がいかに重要かということでした。
◆まとめ──予防・救済・啓発の3本柱をどう組み込むか
今回の検討会では、「差別をしない」だけでなく、
差別を**“見える化”し、救済につなげる**
差別を未然に防ぐ教育・啓発を重視する
声をあげられない人に代弁・調査・提言を行う機関を制度化する
といった、包括的な条例設計の方向性が明確にされました。
◆子どもの権利擁護機関の運営は年間約1億5000万円
検討会終了後、子どもの権利擁護機関の運営費用を調べてみたところ、令和7年度予算の概要(草案)では1億4802万3000円でした。
今回の委員の分野をピックアップするだけで以下あります。
女性・子ども・老人・身体障害者・精神障害者・部落・多文化・ホームレス・LGBTQ
人権をきちんと守るために、名古屋市としてどのような体制をとるか、どれぐらいの費用をかけるのか。名古屋市の覚悟が試されます。
なお、検討会終了後、委員が「なごもっかの制度は全然知らなかった。
大変良い制度で、別分野の差別解消制度でも取り入れいれたかった」と雑談をしていたのが印象的でした。
どうしても他分野の制度までは追いかけられていないようです。
これを機に、名古屋市の人権状況のレベルアップを望みます。
次回第3回検討会は2025年9月29日(月)午後2時からの予定です。
ぜひご参加ください。
また、2025年8月9日(土)午後1時半から、愛知県弁護士会がシンポジウム「つくろう!人種差別撤廃条例 〜愛知におけるヘイトスピーチ/ヘイトクライムの実情を踏まえて〜」を行います。
そちらもご参加ください。
25/4/14(月) 第1回名古屋市人権に関する条例(仮称)検討会 座長「作る以上は実行性のあるものであるべき」
25/4/14に名古屋市は第1回名古屋市人権に関する条例(仮称)検討会を開催しました。
座長に選任された小林直三・大阪経済大学教授は、検討会終了後「人権条例を作る以上は実行性のあるものであるべき」と述べました。
・名古屋市スポーツ市民局人権施策推進部 人権施策推進課人権企画担当
第1回名古屋市人権に関する条例(仮称)検討会(令和7年4月14日開催)
・名古屋市民オンブズマンによるメモ
本件は、23/6/3に名古屋市が開催したバリアフリー市民討論会における参加者による差別発言ならびにその後の対応の不手際を踏まえ、第三者委員会による検証で「包括的で実行性がある人権条例」制定を提言されました。
・24/9/18 「名古屋城バリアフリーに関する市民討論会」における差別事案に係る検証について(最終報告)
今後、2025年7月〜12月に検討会を3回開き、2026年2〜3月に条例骨子を検討し、2026年4月以降、パブリックコメントを踏まえて条例案を決定するスケジュールが示されました。
委員からは「憲法だけで無く、各種条約を踏まえた条例にしてほしい」という意見が相次ぎました。
宮前髟カ弁護士は「2025年2月に愛知県弁護士会が人種差別撤廃条例を求める意見書を各自治体に出したので参考にしてほしい」と述べました。
・2025年(令和7年)2月18日 愛知県弁護士会 会長 伊藤倫文
愛知県内の地方公共団体において人種差別撤廃条例の制定を求める意見書
間宮静香弁護士(名古屋市子どもの権利擁護委員)は「名古屋市子どもの権利相談室『なごもっか』は全国的に見ても先進的だ。
上記の仕組みを人権全般に広げてはどうかと思う」と述べました。
・名古屋市子どもの権利相談室「なごもっか」
土井佳彦・特定非営利活動法人多文化共生リソースセンター東海 代表理事は「条例では言及できないが、そもそも国の法律や憲法がおいついていない。 国に提言しメッセージを発信してはどうか」と提案しました。
橋井正喜・名古屋市身体障害者福祉連合会 会長は「障害当事者は私くらい。やっかいなのは大人。どんな条例ができようが、障害者はどこかで我慢するしかないのが現状」と述べました。
次回は25/7/14(月)とのこと。
--------
広沢市長は25/4/14(月)午前に行われた記者会見で、人権条例の制定について記者から問われ「人権条例制定に向けた動きとともに、名古屋城も再び動き出すというふうに考えています。」と述べました。
------
以下感想
包括的な人権条例は各地で制定されつつあります。
・一般財団法人 地方自治研究機構
人権の尊重と差別の解消に関する条例
一方、相模原市では人権施策審議会の「答申」が骨抜きになって24/3/19に市議会で可決・成立しました。
・2023年12月22日 19時00分 弁護士ドットコムニュース
津久井やまゆり園事件が起きた相模原市、骨抜き「人権条例案」に批判の声
25/4/1施行の名古屋市障害者差別解消推進条例改正は、パブコメ終了後、「勧告を行うことを原則としながら、勧告を行わない場合にはその理由を公表する」と骨抜きになりました。
また、国際人権基準の専門家の藤田早苗・英エセックス大学人権センターフェローは「国連人権高等弁務官事務所は『生まれてきた人間すべてに対して、その人が能力・可能性を発揮できるように、政府はそれを助ける義務がある。その助けを要求する権利が人権。人権は誰にでもある』と述べている」としています。
・国連広報センター (UNIC Tokyo)
人権とは? (OHCHR: 国連人権高等弁務官事務所)
今後、検討会の議論に注目するとともに、「骨抜き」にならないよう注視していきたいと思います。
-------
・名古屋市民オンブズマン 名古屋城問題ページ
・名古屋市民オンブズマン 人権条例ページ
・名古屋市民オンブズマンブログ 名古屋城問題
・名古屋市民オンブズマンブログ 人権問題